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力量の差

 俺、レイは議会の資料室でアレクとともにリストを探していた。

 もちろん、資料室の中は整理されており、どこに何があるのかすぐに分かるようになっている。しかし、それでもいろんな資料と見比べる必要があるようだ。

 元議会軍の管理を行っていた職員やその他の部署に移動していたりしたことのある人も候補に入れているため、いろんな資料を見る必要があるのだ。まぁそれに関しては別に大した苦労でもないのだがな。

 気になるのはさっきから資料室の前を出たり入ったりしている奴だ。相手は俺たちが気付いているとはまるで思っていないようであまりにも堂々とし過ぎている。なんとも警戒心のない奴だ。


「……アレク、そろそろうざってぇんだが」


 俺はコソコソと動き回っている奴の方を指差しながら言ってみることにした。


「そうだね。気が散ってしまうよね」


 すると、彼は棚にファイルを戻すと出入り口の方から俺たちの方を覗いている奴へと視線を向ける。


「っ!」


 当然ながら、その視線に気付いた相手は一気に逃げようと走り出す。

 それを見たアレクは一気に駆け出して相手を追いかける。


「くっ……」


 アレクの方が速度的に勝っており、距離をすぐに詰めることが出来た。その途端、相手は隠し持っていたであろう少し大きめのダガーを振りかざした。


「ふっ」


 天井近くにまでアレクが飛び上がり、相手へと攻撃を始めた。もちろん、急な攻撃だったために抵抗することも出来ず、相手はダガーを落とした。

 武器の持っていない無力な相手を拘束するのは簡単だ。無防備となった相手の足を引っ掛けることで態勢を崩し、それからアレクは素早い動作で相手の動きを封じた。


「なぁっ!」


 俺は相手のフードを取り払って顔を確認する。どうやら女性のようだった。制服からしておそらくは警備員の一員なのだろう。


「コソコソと俺らのこと見て何のようだ?」

「それに見られて逃げるって言うことは悪いことでも考えていたんじゃないかな?」


 俺とアレクとでその捕まえた女性を問いただすことにした。

 彼女はふんっと俺たちの視線からそらすようにそっぽを向いた。まるで俺たちの質問に答えたくないようだ。


「その制服、警備員だろ。少しぐらい手荒なやり方でやった方がいいんじゃねぇか?」

「この人が自白しないのならそうするしかないね」


 優しい表情の彼ではあるが、それとは裏腹にまったく優しくなく冷たく重たい声色でそう離した。それを聞いた彼女は次第に顔が青ざめていく。これからとんでもない拷問にかけられるのではないかとかなり動揺していることだろう。

 まぁそうなるのも無理はねぇか。


「……」

「じゃどうすんだ?」

「そうだね。まずは手足から……」

「ちょっと待ってくれッス!」


 アレクがそう冷たく言うと彼女は両手を上げた。

 どういうわけか彼女は降参をするようだ。


「あ?」

「手足がなくなるのは嫌ッス!」

「それなら知っている情報を教えてくれないかな」

「そ、それは出来ないッス」


 誰に指示されているのかと言った情報を話す気はないということなのだろうか。つまりは命乞いというようにも聞こえるが、今回に限ってはそれは通用しない。それに悪意を持って俺たちを付け回している時点でかなり怪しい。何か裏があると思うのが普通だろう。


「都合のいいこと言ってんじゃねぇよ」

「とりあえず、ここだと目立ってしまうからね。場所を変えるとしようか」

「おうよ」


 俺はそっぽを向いた彼女を抱き上げて場所を移動することにした。


「わぁっ! 何しやがるッスか! 離しやがれッス」


 そう言って名前の知らない彼女は俺の肩の上で暴れ出した。

 力負けしているわけではないが、暴れられるのはただただ痛いだけなのでここは少し脅しておとなしくさせるほうがいいか。


「暴れるんじゃね。殺されてぇのかっ」

「ひぃいっ!」


 少し圧を込めていうと彼女は悲鳴を上げて暴れるのをやめた。


 それから資料室のある地下から出て、備品庫の奥へとやってきた。

 そこの小さな椅子に俺たちを付け回してきた彼女を縛り付けることにした。


「……な、なにしやがるッスかっ」

「あ? それはこっちのセリフだ。武装してまで俺たちを付け回してる奴が何言ってんだ?」


 当然ながら、彼女は大きめのダガーを持っていた。議会の中を警備している人としては不相応な武器で、明らかに俺たちに攻撃の意志があったのは間違いない。とはいってもすぐに真実を吐き出すとは考えられないがな。

 少し手荒な真似をする必要もあるのだろう。場合によってはリーリアを呼んできて無理やり聞き出すことも候補としては考えるべきだな。


「それは護身用ッス」

「ふざけてんのかっ」

「ひぃい!」

「……誰かに脅されてこんなことをしているのかな?」


 すると、アレクは優しい表情で、かつ柔らかい声色でそう彼女に聞いた。先ほどの冷酷なものとは違い、今回のは話しやすい雰囲気を出している。


「お、脅されてなんて……」


 発言の途中で言葉が詰まる。つまりは嘘だということだ。

 まぁ今までの彼女の言動からして誰かに脅されでもしたら仕方なく従うようではあるみたいだ。

 本当に俺たちを殺したいと思っているのなら多少脅された程度で無抵抗となるわけがない。


「僕たちなら助けになれるよ」

「む、無理なんッスよ」

「あ? 誰もお前の裁量で判断しろとは言ってねぇだろ」

「無理なんッスっ!」


 俺がそう言ってみたものの、彼女はさらに強くそう言い放った。


「おいら、知ってるッス。小さき盾がどれほど強いのかはユウナとナリアを見てれば分かるッス」

「そんな強い僕たちでも無理な相手なのかな?」

「そうッス。アイツらはとんでもねぇヤツらなんッス」


 そこまで言うということはまぁとんでもない奴らなんだろうな。だが、どんなに強い奴だったとしてもそいつは人間か魔族かのどちらしかない。

 幸いにも俺たち小さき盾は人間にも魔族にも対応できる部隊だ。俺たちは議会の秩序を保つ最後の盾、強い権限と実力を持っているからな。


「へっ、無理な相手なんているわけねぇだろ」

「だけど……」

「君の安全は僕たち小さき盾が保障するよ。だから安心してほしい」

「……」

「俺たちのこと、強いと思ってんだろ?」


 確かに彼女は小さき盾がどれほど強いのかは知っている。それなのに無理だと言っているのだ。


「ヤツら、魔族なんッスよ。それも上位種ッス」

「幸いにも僕たちが探している対象がそうなんだ。もっと詳しく話を聞かせてくれるかな?」

「……上位種ってのは魔族の頂点にいるような連中ッス。そんなのが一〇体もいるんッスよっ」

「一〇体だろうが、二〇体だろうが全く関係ないことだぜ?」


 俺がそう言って彼女の目をじっくりと見つめる。

 彼女は今にも泣きそうな目で俺を見返してくる。きっと恐ろしい脅迫でも受けていたのだろうな。従わなければ命を奪うなんて言われてるのかもしれない。それとも誰かを人質に取られているかだな。

 まぁあんまり悠長にやっていると関係のない人にまで被害が及ぶことになる。ここは素早く片付ける方がいいだろう。


「信用、してもいいんッスか?」

「当然だ」

「う、嬉しいッス……」


 俺がそう言うと彼女の頬に一粒の涙が流れた。

 安心しているのだろうな。今まで助けてほしいと言いたかったもののずっと言えなかったはずだからな。辛い状況に立たされていたのは間違いない。


「それで、君の名前は?」

「おいら、一年前までは議会内の警備をしていたルーリャって名前ッス」

「なら、ルーリャ。一度死んでもらうことにしようか」

「……え?」


 そう言ってアレクは聖剣を素早く引き抜いたのであった。

こんにちは、結坂有です。


議会内でもいろいろと起きているようですね。

果たして、エルラトラムに侵入している一〇体ほどの上位魔族は何を企んでいるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに……



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