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狂いのない作戦に向けて

 俺、エレインはリビングでリーリアの夕食を待っていた。俺の横ではルクラリズとミリシアが座っている。アレクは小瓶を保管するために地下部屋へと向かっていった。どうやら夕食もそこでカインと食べるそうだ。

 俺とミリシアは向こうで手に入れた情報をアレイシアたちに話さないといけないためリビングで彼女の帰りを待つことにした。

 それにしても、リーリアが俺の横の席を開けるようミリシアに支持する表情がどこか必死だったな。まぁその様子を見て平和を感じることができた。やはり家というのは平穏を取り戻す重要な役割を持っているのだろう。


「……リーリア、あそこまで言わなくてもいいのに」


 そう言ってミリシアが頬を少し膨らませて頬杖を机についた。


「俺の横にいたいと思うのは当然だと思うがな」

「もしかして私が魔族だから?」


 すると、少し離れた場所に座っていたルクラリズが問いかけてきた。別に彼女も魔族だからといってあのように必死になったわけではないだろう。あれは単なる彼女のわがままのようなものだ。


「いや、そうではないな」

「乙女の戦いなのよ」

「……まだ私にはわからない話のようね」


 とはいっても俺もよくは理解していないのだがな。いわゆる恋敵というものは俺も理解ができていない。魔族としてずっと生活していた彼女からすれば俺以上に理解が追いつかないのも当然だろう。

 そんなことを話していると玄関の扉が開いた。


「……あっ、エレイン帰ってきてるの?」


 そうすぐに声が聞こえた。

 アレイシアの声だ。


「アレイシア様、慌てなくても大丈夫ですよ」

「本当に無事に帰ってきたのか確認しないとっ」


 少し慌てた様子でリビングの方へと歩いてくる音が聞こえた。

 そして、リビングの扉を開くとすぐに俺の顔を見て彼女はホッと胸を撫で下ろした。いつも冷静な彼女が取り乱しそうになるほどに心配してくれていたのだと思うと、嬉しいと思う反面、申し訳なさも込み上げてきた。


「エレイン、大丈夫? 怪我とかしてない?」

「今は大丈夫だ」


 エルラトラムに戻る直前までは肩の痛みが酷かったものの、魔剣の力を借りて治癒能力を引き上げたために今は無傷同然だ。


「向こうでどんな事になっていたのかは説明しないのね……」


 そんな俺をミリシアがそう小声でつぶやき、ジト目で見つめてくる。

 まぁこれ以上心配されても困るからな。ここは彼女を落ち着かせるためにもこう言った方がいいだろう。


「ご無事なようでなによりです。お夕食の方は……」

「私が今ご用意させていただいております」


 そういって奥の厨房の方からリーリアが顔を出した。


「わかりました。私もお手伝いします」


 そういってユレイナはアレイシアを椅子へと座らせるとすぐに厨房の方へと向かった。

 そして、彼女の横に護衛のように座るのはレイだ。彼には議長を守るという重要な役割を持っているからな。それに議会の危機を事前に阻止するということも併せている重役でもある。


「へっ、向こうの様子はどうだったんだ?」

「上位の魔族が多くいると思っていたのだが、もぬけの殻だったな」

「なんだ、つまんねぇな」

「だが、情報はいろいろと得ることができた」


 それから俺たちは魔族の街について詳しく話すことにした。

 俺が気付いたこと、ミリシアが気付いたことにルクラリズが補足するようにして話が進む。


「……ってことは、上位種の魔族ってのは下位の奴らと比べて数が少ねぇってことか?」

「そうなるな」

「でも、数字で見れば多いわ。下位種が数千万、上位種は十数万程度よ。この数が一気に攻め込んできたらエルラトラムはすぐに陥落するわ」


 それもそうだろう。俺とてその数を一度に相手するのは不可能なことだ。

 ただ、上位種の魔族全てが突撃してくることはないに等しい。なぜなら魔族がすべて兵士というわけでもないからだ。

 ルクラリズは兵士として戦う素質を持っているものの、上位魔族の中には死に恐れ戦わない選択をしているものも多いらしい。ただ、下位種にいたっては命令通りに動くため数千万もの数が攻めてくる可能性はまったくないとも言えない。


「上位種の中にも戦いに特化した能力を持った魔族もいるわ。上位種が数体下位の軍勢に混ざっているだけでも厄介よ」

「へっ、いくら数が増えたところで雑魚には変わりねぇだろ」

「あなたがどれほど強いのかは知らないけれど、警戒するに越したことはないわ」


 ルクラリズは俺たち人間のためにいろいろと考えてくれている。決して楽観的なことは言わず、事実を基に客観的に判断しているようだ。魔族の事をよく知る彼女がこうして話に加わってくれることで俺たちはより強固な作戦を組むことができるだろう。

 魔族を知るには直接魔族に接する他に効率の良いものはないからな。


 すると、リーリアとユレイナが料理を持ってきてくれた。彼女たちがリビングへと歩いてくると同時に香ばしい匂いが漂ってくる。肉と野菜がバランス良く調理されており、栄養満点の料理と言える。

 野菜は素材の味を失わないよう丁寧に調理されている。野菜の栄養は水に溶け出してしまうため、ただ茹でるだけでなく蒸すなど工夫されて温野菜を作っているのがよくわかる。


「エレイン様、失った体力を癒やすためにいろいろと頑張りました。いかがでしょうか」

「香りだけでもよく工夫されているとわかる。ありがとう」

「これもメイドの努めです。では……」


 そういってリーリアは俺の右横へ座るとフォークで蒸した人参を取り、粗熱を冷ますと俺の口へと運んでくる。

 それを見ていたミリシアとアレイシアはもの言いたげな目で俺を見つめてきた。


「……もしかして、人参が苦手でしたでしょうか」

「いや、そういうわけではなくてな」

「あ? 怪我でもしてんのか?」

「それとも違ってだな……」

「あの、リーリア?」

「はい」


 すると、アレイシアがリーリアを真っ直ぐ見つめる。その表情は怒っているというよりも少し恥ずかしいそうにしていた。


「その服はわざと着崩しているのかしら?」


 そう彼女の言葉にリーリアはフォークを置いて自分の身なりを確認する。


「……はぁうっ」


 小さく声にならない声を上げた彼女はすぐに胸元を隠した。

 俺が戸惑った理由、そしてアレイシアとミリシアが妙な目で見つめてきた理由がそれだ。彼女の胸元は大胆にも(はだ)けており、下着が若干ながら覗かせていたのであった。


「す、すみません。蒸し料理を作っていた際にボタンを外しておりましたっ」


 確かに蒸し料理をこんなにも作っていた厨房はかなり暑くなっていたことだろう。ボタンを外して涼もうとするのは当然と言える。


「……意図的じゃなくてよかったわ」

「意図的だったら策士ね」


 アレイシアとミリシアがなぜか安堵の声を上げた。そして、その様子を見てユレイナは楽しそうに笑っていた。

 仮に意図的だったとしたらどういう事になっていたのか俺はなんとなく察しが付いたが、ルクラリズとレイはなんのことだかわからないようでただただ首を傾げていた。

 俺もアレイシアやセシルと付き合っていくことである程度はそういったことは理解できるようになってきた。しかし、一度風呂場で裸を見たのだ。今更慌てて隠す必要もないように思える。

 まぁそれに関しても今後少しずつ理解してくることだろう。

 それからリーリアはまだ顔を赤くしたままではあったが、身だしなみを整え俺たちと一緒に食事をすることにした。

こんにちは、結坂有です。


先日はお休みとなりました。

本日は今回ともう一本更新する予定ですので、お楽しみに……



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