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勢力の動向

 俺、エレインは魔族の街を調べた後、エルラトラムへと戻ることにした。日は沈み始め、空がオレンジに染まる。


「エレイン、今日の調査はかなり重要になってくると思うわ」

「ああ、そうだろうな」


 確かに魔族の街を調べたことは今後の作戦を立てるのに役に立つことだろう。とはいっても、今からでもここを攻め落とそうと思えばできるはずだ。聖騎士団などを総動員することで可能なはずだ。

 ただ、ここを無理に攻め落とす利点は今のところないからな。それに下位の魔族とはいっても強いのには変わりない。下手をすれば犠牲者が多く出てしまうことだってあるはずだ。


「……私の情報、信じてくれたかしら?」

「今のところは嘘をついている様子もない。それに、相手からも敵対されているのも確認できたからな」

「ええ、マジアトーデもルクラリズに対して嫌悪感を示していたわね」

「信用してくれて嬉しいわ」


 そう言って彼女は微笑を浮かべた。

 あの強い嫌悪の表情は見たことがない。彼ももともと人間の体をしているためすぐに彼の感情がわかった。

 まぁルクラリズに関しては信頼しても問題はないだろうと思っていたからな。


「それにしても、あの下位の魔族はいつもあの場所に居座っているのかしら」


 すると、ミリシアは後ろにある先ほど抜けた平原の方を指差した。


「そうね。あの場所でずっと上位種の盾になってくれているわ。けれど、たまに街の方へ呼び出されることだってあるの」

「呼び出し?」

「うん。簡単な作戦を聞かせたりとか、少ないけれど食糧を配給したりするときにね」


 まぁこの場所でずっと居座っていたところで食べ物が得られるというわけではないだろうからな。そう餌となるものが都合よくここを通り過ぎるはずがないか。

 そんなことを踏まえて考えていくと少し疑問に思うことが出てくる。


「下位の魔族はその体制に満足しているのか?」

「うーん、満足はしていないだろうね。でも、反対しようにも力で負けてしまうから」

「やむなしってこと?」

「そんなところだと思うわ」


 ルクラリズは下位の魔族というわけではないために推測の域を出ないが、彼女いわくそこまで満足はしていないようだ。確かに食糧も乏しく、こうして危険な場所に立たされるというのはどう考えても反感を買ってしまうことだろう。

 つまりは、そういった下位種を扱き使うことができるほどの力が上位種には持っているということでもある。


「まぁ下位の連中を使って反乱を起こすのは難しいんだな」

「難しいと思うわ」

「……とんでもないこと考えるわね」

「敵同士、争ってくれた方が俺らとしても楽だからな」


 こちらとしては多くのリソースを使わなくても済む。直接戦わなくとも相手に損害を出すことができればそれこそ楽と言えるだろう。ルクラリズの話を聞くとそれができないということは間違いないようだがな。反乱ができないほどに力の差がはっきりしているらしい。


「ゼイガイアも似たようなこと考えていたわね。人間同士で戦いを誘発させて相手の勢力を疲労させるってね」

「そういえば、魔族と協力しようとした人がいたね」


 どうやら魔族に協力していた聖騎士団員や議会の連中はそのゼイガイアという奴に利用されていたようだ。確かに交渉ができるということはある程度知能があるということだ。上位種の力と自分たちの利益を考えると魔族を信用したくなるのだろう。


「まぁいろいろと頑張ったみたいだけど、そこまで効果はなかったみたいだけどね。それってエレインたちが?」

「いや、俺たちだけではない。聖騎士団の人も頑張ってくれた」


 実際は聖騎士団の人やセシルたちも協力してくれたからな。俺や小さき盾だけではもう少し被害が大きかったことはずだ。


「そう、なのね」

「お互い協力することが重要だからね」

「まぁそういうことだ」

「上位種って自分勝手だし、複数で協力し合うなんてあまり考えないわ」


 作戦を考えるものも中にはいるようだが、多くは自分勝手に動き回るのだろう。

 それから俺たちは丘を越えて、エルラトラムの防壁へと向かう。

 そして、門番の人に合図を出して中に入れてもらうことにした。エルラトラムの中は特に事件が起きた様子もなくいつも通り平和な日常が広がっていた。

 敵対勢力の領域に侵入していたこともあり、徐々に自分の中の緊張が解けていくのが感じた。無意識の内ではあったが、今後も敵領地に出向くことも多くなることだろう。そのときに毎回緊張していてはミスが起きてしまう。そうならないようある程度は対策するしかないか。


「エレイン、大丈夫?」


 すると、ミリシアが話しかけてきた。


「どうかしたか」

「ちょっと難しい顔してたから」

「少し考え事だ」

「……何を考えてたの?」


 まぁミリシアにも関係のある話だからな。話したほうがいいのかもしれないな。


「魔族領に向かう時、どうしても体が緊張してしまうからな。その改善策を考えていたところだ」

「そう、よね。すごく緊張するけれど、私は大丈夫だったかな」


 彼女はそこまでの緊張を感じることはなかったそうだ。

 理由はわからないが、今後の参考になるかもしれない。聞いてみたほうがいいか。


「そうなのか?」

「うん。だって……」


 すると、彼女は頬を少しだけ赤らめて言葉を詰まらせた。

 そんなに秘密にしたいことなのだろうか。まぁ彼女は戦略家でもあるからな。自分の手の内をすぐに晒すのは抵抗があるか。


「話せないのなら仕方ないな」

「……は、話せないわけじゃないけれど」

「エレインっ、ミリシアっ」


 彼女が話そうとした途端、少し離れた場所からアレクが呼びかけてきた。


「え? アレク? どうかしたの?」


 予想外だったのか動揺をみせる彼女ではあったが、すぐに表情を戻した。

 それにしてもこんなところで鉢合わせるのは珍しい。


「ああ、僕たちもいろいろと調査していたからね。それですぐにでも話しておかないと思って」

「重要なこと?」

「そうだね。歩きながら話そうか」


 確かにここで立ち話をしては誰かに見られてしまうからな。重要なことなのだとしたらあまり外部には漏らしたくないものだ。周囲を警戒しつつ、俺たちはアレクの話を歩きながら聞くことにした。


「それで、重要なことっていうのは?」

「現物は見せれないけれど、とある薬品を上流に仕掛けようとしていた組織がいてね」

「……あの慈善団体のフリをしてた?」

「うん。僕とミリシアとで調べてた組織だね。その組織の隠れ家を調べてみたら、妙な薬品が出てきてね。人を洗脳するためのものらしいんだ」


 つまりは何らかの洗脳をしようとしていたということなのだろう。確かにそれは事前に阻止した方がいいか。それにしても、どうしてそのような洗脳をしようとしていたかが気になるな。


「どうしてそのようなことを?」

「多分だけど、魔族の活動を優位に進めるためだと思うよ」

「理由はよくわからないが、危険な状況だったのには変わりないな」

「ああ、それに聖騎士団の中でも怪しい動きがあるみたいだね。そのあたりも僕とレイとで調べていくよ」


 まぁその辺りは彼らに任せても大丈夫だろう。俺とミリシア、ルクラリズでセシルをどうにかして取り戻すことができればいいのだがな。そんな順調に物事が進まないのだろうな。


「アレクたちに任せるわ」

「頑張ってみるよ。それより、エレインたちの方はなにか情報は得れたのかい?」


 それから俺たちは魔族の街のことについて彼に話しながら家に帰ることにした。

こんにちは、結坂有です。


裏で進む魔族の計画……危険な匂いがしますね。

これからどのようなことが起きるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに……



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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