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事の本質

 俺、エレインは家でカインからセシルたちが連れ去られた詳しい情報を聞いていた。

 彼女はいつものようにこの家の訓練場にいたところ、彼女の父である聖騎士団副団長が急に現れた。そして、強力な彼によってセシルとカインは倒されてしまった。

 カインが起きたときにはすでにセシルは連れ去られてしまっていたようで、その後の消息については不明のままだ。

 さらに、そのセシルの父はブラドも連れ去っていると後でわかったらしく、今エルラトラムが解決しなければいけない問題の一つとなっているようだ。もちろん、人間の魔族化に関しては一部の聖騎士団で知られていた。

 しかし、調べていくと大きな問題が浮き出てきた。

 それが聖騎士団と魔族との交渉だ。


「……エルラトラムでも大きな問題はあるのね」


 すると、その話を聞いていたラクアがそうつぶやいた。

 確かに彼女の言うようにこの国では問題が尽きない。事実、それは俺がこの国に入る前から続いていたことのようではある。それが俺が来たこと、小さき盾が活躍し始めたことで問題が浮き彫りになったようだ。

 以前の議会が問題を起こしていたように、聖騎士団もまた問題を起こしていたようだ。ただ、ブラドはそれらの問題に気付いており、裏でなんとか解決しようと頑張っていたようだ。彼は副団長とは意見が食い違っていたなどと言っていたために何かがあったことは間違いないだろう。


「まぁ他国からすれば完璧そうな国に見えるかのしれないけれど、本当は完璧なんてどこにもないの」


 すると、カインが今までのことを思い出しながらそう言った。

 彼女は四大氏族と深く関わっていたこともあって政府の裏側だったり、裏のことに関してはいろいろ見てきたことだろう。彼女がセシルやミーナと同い年とは思えないほどに大人びている理由でもあるのかもしれないな。


「はい。議会ですら不正を働いていたこともいくつかありましたから。議員の全員が正しいことを考えているわけではありませんので仕方のないことです」

「確かにそうだな。完璧な人間がいないのと同じだろう」

「そうね。集団で生きている以上、問題は尽きないわ」


 カインはそう言った。

 今までいろんな事件を見てきたのだろう。それは重くつぶやくように吐き出されたその言葉からよく伝わってくる。


「……私もエルラトラムに入国したわけだし、協力できることは協力するわ」

「ああ、レイから体術について指導を受けてから小さき盾として、この問題を解決してくれると助かる」


 ラクアは憑依型の精霊を使役している。

 まだ完璧に使いこなせているわけではなさそうだが、それでも即戦力にはなるのは間違いない。それは彼女とともに旅をしていてよくわかっているからな。

 彼女の身体能力に関しては十分だ。


「まぁエレインと対等になれるとは思えないけれど、頑張ってみるわ」


 そう言って彼女は俺の目を見つめた。その真っ直ぐに見つめる瞳には強い意志が宿っているようにも見える。


「俺もそこまで強いわけではないが……」

「「え?」」


 すると、俺以外の全員がなぜか首を傾げてそう声を漏らした。


「……仮に俺が強かったとして、一人でどうこうできる問題ではなさそうだからな。結局はみんなの協力が必要だろうな」

「そうですね。いくらエレイン様でも一人なのには変わりないですからね」

「ああ、俺が向かうことができるのは一つだけだからな」


 ブラドの分身という能力を持った魔剣があれば話は変わってくるのかもしれないが、それはないものねだりと言ったところだ。今は自分ができることを最大限に発揮することだけ考えるべきだろう。


「そんな事を話していたら、すぐにでもセシルを助けに行きたいわ」

「どこにいるのかさえ、把握できれば良いのだがな。そうでなければ今は少し様子を見た方がいいだろう」

「……それはミリシアから言われてるしわかってるけれど、感情はどうしても抑えられないわよ」


 確かにカインの言いたいことはわかる。

 しかし、このままセシルたちの捜索に出たとして、他の対策が蔑ろになってしまっては意味がないからな。

 今は土台を固めるべきだろう。


「そうですね。助けたい気持ちもわかります。エレイン様、単独での活動は良いのではないでしょうか」

「いや、相手の実力がどれほどのものなのかわからない。単独で行動するのは危険だと思うが……」

「そこは私とエレイン様でです。それなら、いいのではないでしょうか。小さき盾の人たちも揃っていることですし、議会は安泰だと思います」


 確かに俺やリーリアだけで動くのも問題はないだろうと思うが、俺はそれ以外にも気になっている事がある。


「魔族との交渉と言っていたな。それを今も行っている連中がいるのだとすれば、まずその人たちをどうにかするべきだ」

「……確かにそうですね」

「まぁミリシアのことだ。もうある程度は目星をつけていることだろうがな」


 小さき盾のミリシアとアレクの調査能力に関しては俺がよく知っている。彼女たちはとても賢い人だからな。俺やレイはどちらかといえば現場で動くタイプだろう。


「それもそうですね。救出するには根本原因を解決しないといけませんからね」

「しばらくの間は情報を集めることだろうな。この国だけでなく、魔族側のことに関しても調べる必要がある」

「はい。その方が良いと思います」


 ただ、そのためにはカインやラクアの協力が必要なことだろう。そのことに関してはまたその時に言うとするか。

 今はリーリアの体力を回復させる必要がある。それに、ラクアの実力も上げる必要もある。段階を踏んでからセシルやブラドを助け出すとしようか。


   ◆◆◆


 私、アレイシアはマナを議会の特別な部屋へと連れて行った。その場所は諜報部隊の本部にもなっている地下部屋だ。マナの面倒は当面の間、フィレスが見てくれるそうだ。彼女ならしっかりと面倒を見てくれることだろう。

 そして、私はマナを彼女に預けた後すぐに議長室へと向かった。


「……さっきの話の続きだけど、魔族と交渉している組織は調べてあるの?」

「ちょうど、そのことを調べてた最中なの。でも、かなり古い資料を探してるわけだからなかなか見つからないのよね」

「まだまだ時間がかかりそうってところかしら」

「そうだね。問題の内容的にも他の人たちに任せることができないからね」


 確かに魔族と交渉していたなんて資料は外部に漏れることはいけないことだろう。それにこの議会の中にもまだ裏切り者がいる場合だってある。その人たちに私たちの調査が見つかったりすればすぐにでも妨害工作が始まるはずだ。


「仕方ないわね」

「でも、ある程度はわかってきてはいるの。当時の副団長に関わっていた人間が怪しいってことはね」


 ある程度目星が付いているのならそれをどうにかして炙り出す必要があるだろう。場合によっては議長権限で拘束、尋問することもあるはずだ。

 とりあえずは、私たちとしてはやらなければいけないことは問題を精査し、解決までの策を考えることだ。

こんにちは、結坂有です。


この回にてこの章は終わりとなります。

激しい戦闘シーンがあったり、とんでもない問題が浮き彫りになったりといろいろありましたね。


それでは次章も楽しみにしていただけると嬉しいです。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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