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英雄の帰国

 俺、エレインはアレイシアたちとともにエルラトラムへと帰国することができた。

 帰国へは円滑に進み、俺たちはすぐに自分の家へと戻ることにした。ヴェルガーへとまた近いうちに向かうことになりそうだが、今はゆっくりと休憩することにしよう。

 アレイシアとレイは保護下に置かれることになるマナを議会へと連れて行くためにすぐに家に帰ることができないが、俺とリーリア、ラクアは家へと寄り道をせず家に戻ることにした。


「エレイン様、片付けが終わりましたらすぐに昼食の準備をいたしますね」

「ああ」


 そう言って彼女は荷物を持って自分の部屋へと向かった。


「……ここがエレインの住む家なのね。思ってたとおり豪邸ね」


 すると、ラクアが家の中を見渡してそうつぶやいた。確かに一般の家と比べればかなり広い場所になる。それに訓練施設なる場所も存在していることだしな。

 ただ、彼女が住むことになるのはこの地上階というわけではなく、地下の部屋と言ったところになる。地下牢のような劣悪な環境ではないが、地上階ほど広く自由はない。


「豪邸なのは確かだが、ラクアの住む場所はこの地下になる」

「地下?」

「まぁそこまで酷な環境ではないがな」

「それなら大丈夫よ。一般的な生活ができれば問題ないわ」


 そう言って彼女は自分の荷物を床に置いた。

 彼女の荷物は着替えがいくつか入っただけで、私物のようなものは一切持ってきていない。というものの、彼女は軍の施設で住んでいたこともあってかそういったものは持っていなかったようだ。


「俺はこれから荷物を部屋に持っていくが……」

「少しだけエレインの部屋を覗いてもいいかしら?」

「大丈夫だ」

「そう、よかった」


 彼女はなぜか頬を赤らめてつぶやくようにそう言った。

 それにしてもどうして彼女は俺の部屋を覗きたいと思ったのだろうか。理由は気になるのだが、それを聞くのは野暮なのかもしれないな。

 俺の部屋へと向かい、俺は自分の荷物を片付け始めた。とはいってもいくつかある服をタンスにしまうだけなのだがな。


「ここでいつも生活してるの?」

「ああ、なにか面白い物があるわけではないがな」

「……それでも来てよかったわ」

「そうなのか?」

「き、気にしないで」


 そう言って彼女はなぜか顔を背けた。


 それから荷物を片付け、リビングの方へと向かうとリーリアが昼食の準備を始めていた。

 貯蓄していた食料が少ないのか料理の幅は少ないものの、小腹の空いた俺たちにとってはそれだけでも十分なことだろう。


「エレイン様、食材が少し足りないようでしたので今はこれぐらいしか作れませんが……」

「十分だ。ありがとう」


 主食のパンに残っていた食材をふんだんに使ったスープだ。これだけでも栄養はかなりあることだろう。野菜から味が滲み出ており、複雑な香りが漂っている。


「はぁ疲れた……」


 すると、女声が聞こえてきた。この声はカインの声だ。


「あ、エレイン。帰ってきてたんだ」


 扉を開けた彼女は俺を見るなりすぐにそう声を上げた。


「久しぶりだな」

「そ、そうね」

「なにかあったのか?」


 少しだけ複雑な表情をしていたことから俺はそう質問してみることにした。しかし、彼女はすぐに答えることはなく、うつむいて考え込んだ。


「……なにもなかったわけじゃないのだけど、今のエレインは疲れてるでしょ? 今は体を休めたほうが良いわ」

「そうかも知れないが、話を聞くぐらいならできる」


 確かに心落ち着く場所で体を休めることは重要だ。それでも何かあったのなら話を聞くのは当然のことだと言える。

 すぐに解決できるのならそうした方が良いだろうしな。

 すると、彼女は小さく息を吐いて心を落ち着けるとゆっくりと口を開いた。


「言いにくいのだけど、セシルが何者かに連れ去られたの。エレインがいてない間にね」

「連れ去られた?」

「うん。本当はミリシアからあまり言わないようにって言われてたんだけど……」

「なるほどな。ここでも問題が起きていたってことか」


 何も考えていなかったわけではないが、俺がいない間に何かが起きるとは俺も想定していた。とはいえ、俺の予想と反してセシルが連れ去られてしまったのか。

 俺の予想では魔族の攻撃があるかと思っていたのだがな。


「そうね。魔族の奇襲もあったわけだしね」

「……その奇襲でセシルが連れ去られたのか?」

「あ、そうじゃないの。ただ、それと関係しているのかなって話をしててね」


 具体的に何が起きたのかはまだ不明だが、それでもあまり悠長に休憩している場合ではないのは確かなようだ。

 まぁそこまで体が疲れているかと言われればそうではないがな。

 とはいえ、ミリシアやアレクが想定できなかった事態が起きたのは事実なようだ。


「とりあえず、昼食を食べながら詳しい話を聞こう」

「うん……ところで、その子は?」


 それからはラクアの紹介をして、セシルが連れ去られたという話を詳しく聞くことにした。


   ◆◆◆


 私、アレイシアはレイとマナと一緒に議会へと向かった。

 議会は私がヴェルガーに向かったときよりも警備が厳重になっており、私たちがいない間に何かがあったことを意味しているようだ。


「アレイシア……議長」


 そんな私たちを見かけたナリアが私の方へと近づいてきた。


「気にしなくていいわよ。何かあったの?」

「アレイシアがヴェルガーに向かってから魔族の奇襲があったの。それで議会はいろいろと対策に追われてるって感じ」

「魔族の奇襲?」

「あ、でも小さき盾がほとんど被害を出さずに制圧したから大きな問題にはならなかったのだけど……」

「アレイシア様」


 すると、奥からユレイナがゆっくりと歩きながら私の方へと歩いてきた。


「ナリアさん。詳しいことは議長室でお話しますので、警備の方をよろしくお願いします」

「……ええ、わかったわ」


 それから私たちは議長室へと向かった。

 議長室の中はすでに大量の資料に覆われており、それらをミリシアとアレクが目を通していた。


「アレイシアさん?」

「ただいま。それで、何をしてるの?」

「あ、今怪しい組織の動きがないか調べているわ」


 私たちがヴェルガーへと向かってからこの国もいろいろと問題が起きたようだ。魔族の奇襲であったり、その他のことであったり。

 どちらにしろ、私が戻ってからもしばらくは休むことができなさそうだ。


「へっ、ミリシアとアレクが資料に囲まれてるのはもう見慣れたって感じだな」

「……仕方ないでしょ? 調べないとわからないことがあるんだから」

「アレイシア様、今私たちの国で一番の問題があるのですが……」


 すると、ユレイナがそう言って私の表情を伺うように聞いてきた。


「気にせず話して」

「……諜報部隊隊長のブラド、それに学院生のセシルが何者かに連れ去られたのです」

「え?」

「相手は魔族であると推測されますが、今までとは異なる性質を持っているようです」


 ブラドとセシルが連れ去られた。

 私たちが離れたのは一ヶ月も経っていないはずだ。それなのに魔族の奇襲が起き、ましてや高い戦力となる二人を連れ去られた。それは私たちにとって大きな打撃となることだろう。


「ちょっと待って、それってどういうこと?」

「詳しく話す前に一つだけいいかしら」「ええ」


 そう言ってミリシアがゆっくりと立ち上がると、一つの資料を取り出して私に見せてくれた。


「これって……」

「人間の魔族化、エルラトラムでもこれについて研究していたのは知っていたわよね」

「ええ、もちろんよ」

「じゃ、これは知ってたの?」


 そう渡された資料にはとんでもないことが書かれていた。


「魔族との交渉……」

「聖騎士団旧本部の奥深くに隠されていたのを掘り出してきたの」


 私はその話を聞きながら、資料に目を通していく。

 そして、そこに書かれていたある人物の名前に私の目が止まった。


「聖騎士団副団長……」

こんにちは、結坂有です。


いろいろと謎が出てきましたね。

そして、次回にてこの章の最終回となります。


それでは次回もお楽しみに……



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