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隠された施設

 俺、レイはアレイシアとともに商業地にて聞き取り調査を始めていた。もちろん、聞き取りだけでなく、歩いていける場所は自分の足で調べていた。

 しかし、宿を出てすぐに俺たちを監視していた連中に関しては今のところ問題はないように思える。まぁよくわからないそいつらを気にしているよりかは明確な敵に対して警戒を向けるべきだろう。


「それにしても、ここまで暑いと流石にしんどくなるわね」

「そうか? 俺はまだ平気だけどな」

「荷物は最小限にしてるけれど、この蒸し暑さには抗えないわ」


 確かに宿に多くの荷物を置いてきたとしてもこの猛暑と言える暑さは俺たちの体力を蝕んでくる。少なくとも俺はまだ耐えることはできるが、杖を突いて歩いている彼女には酷な環境ではあるな。


「しんどいようなら背負ってやらんでもないが……」

「わ、私は大人よ? 年下にそんなことはさせられないわ」

「年上とか関係ないだろ。しんどいときは遠慮なく言ってくれ」

「……わかった。限界が来たら言うわ」


 そう言って彼女は頬を若干赤くしながらそう答えた。

 恥ずかしいという感情があるのは俺にもわかる。とはいえ、アレイシアと俺とでは底まで年が離れているわけではないからな。別に気にする必要もないだろうと思うが、彼女にとっては少し違うのだろう。

 そのあたりのことに関してはどうやら俺は鈍感なようだ。ミリシアからもユウナからも言われたことがあるのを思い出した。


「あれ?」


 そんな猛暑の中、俺たちはゆっくりと歩いていくと地図に書かれていない大きな建物を見つけた。

 ここは商業地の一番端でめったに人のこないような場所となっているが、それでも人の多い商店通りからはそこまで離れていない。


「よくわからねぇ建物だな」

「そうね。それに地図にも書かれていないわけだし」


 俺たちが持っている地図はベイラから渡されたものだ。もちろん、政府が発行しているもので発行された時期は今から二ヶ月ほど前で最新の地図と言えるだろう。


「……一見しただけだと全貌がわからねぇな。中に入ってみる以外は調べる方法がないってことか」

「ええ、それに地図にはここはただの森とし書かれていないわ。二ヶ月でここまでの建物を建てることができるとは思えないし、政府がなにか隠しているのは間違いなさそうね」

「そうかもな。ここまでの施設を隠す必要は何もねぇってことだからな」


 刑務所のようなものかとも思ったが、そもそも商業地や住宅地に近いこんなところに建てるわけがない。それは村といえど同じことだ。もし受刑者が脱走でもした場合、ここだとすぐに隠れられてしまったり、また被害が出てしまうことだってあるからだ。

 普通は人里から離れた山奥などに建てるはずで、こんな場所にあるのは不自然だ。


「聞き取り調査でもここのことは誰も話していなかったわね。さすがにここまで大きい施設だと誰かが知っていそうなものだけど……」

「ああ、その点もおかしな点だな」

「とりあえずは場所だけ確認して今日は帰りましょうか」

「あ? せっかくここまで来たのにか?」


 この門をくぐればすぐに施設に入ることができる。幸いにも警備員の姿は見当たらないし、監視カメラも見たところなさそうだ。侵入するのは容易いことだろう。


「そうよ。無理に入ろうとするのは危険かもしれないからね」

「確かに危険なのかもしれねぇが……」

「ここに何のようですかね?」


 そんな事を話していると後ろから何者かが話しかけてきた。


「っ!」

「驚かせてしまいましたか……。それは申し訳ございませんね」


 意識していなかったとはいえ、明らかに相手は気配を隠して俺たちの背後から現れてきた。それもかなりの手練ではある。


「道に迷っただけよ。気にしないで」

「ほう……道に迷っただけ、ですか」


 そう言った目の前の男は俺たちを探るかのような視線で見つめてくる。

 俺はミリシアやアレクのように相手の真意を読み取ることは得意ではないからな。この男が一体何を考えているのかはさっぱりわからない。だが、少なくとも俺たちに対して警戒しているのは間違いないだろう。


「それだけよ。では、行きましょう」


 そういってアレイシアは俺の腕を引っ張ってゆっくりと歩いていく。

 その直後、彼は俺の携えている剣へと視線を落として一歩だけ後ずさり、警戒態勢に入った。


「……なんだよ」

「あなた方は一体何者ですかね? 一見したところ、この国の人間ではない……それもこの国の調査をしているような……」

「何が言いてぇんだ?」

「正直に言いましょう。この施設を見てしまった得体の知れないあなた方をここで見逃すわけにはいきません」


 俺たちがこの施設を見てしまった以上は、そう簡単に帰らせてくれないようだ。まぁ俺もそうだとは思っていたがな。

 アレイシアもそれは覚悟していたようだ。


「私たちはエルラトラム議会の人間よ。別にこの国の内情について深く関わるつもりもないわ」

「それならなおさら見逃すわけにはいきませんね」

「なんだ、この施設のこと知ってんのか?」

「ええ、もちろんですとも。私はこの施設の管理人でもありますからね」


 どうやらこの男がこの大きな施設の管理者のようだ。まぁ好都合、とまでは言えないだろうな。簡単にこの施設の正体を教えてくれるわけではなさそうだ。

 それにしてもこの男、年はかなりとっているようではあるが、それでもかなりの実力者ではあるようだ。事実、俺は彼の気配を全く感じなかったからな。


「……レイ、どうしよう」

「あ? 逃げるか戦うかのどっちかだろ」

「その二択で迷っているのよ……」


 二択しかないのならもう迷っている場合ではない。どちらに転んでもたいして変わりはないはずだ。


「この私とて少しは武術の心得がありますからね。そう簡単に逃しはしませんよっ」


 そんな事を話していると男が急に俺の方へと走ってきた。


「なっ」


 隠し持っていたのかダガーで男は攻撃してきた。当然ながら、俺は魔剣を使ってそれを防いだのだが、今まで感じたことのないような衝撃が俺の全身に走った。


「どうしたんですか? まさか、その程度で護衛が務まるとでも?」

「……黙ってろよ」


 俺は魔剣の力を少しだけ借りて男を突き放した。


「ほう、見かけによらずかなりの力をお持ちで……」


 ”超過”という力を利用してみたのだが、それでも彼はうまく受け身を取り態勢を持ち直した。その時点でかなりの実力者、いや、もはや普通ではない。彼もなんらかの魔剣を持っているのかもしれない。


「レイっ!」

「近づくんじゃねぇ。こいつ、かなり強いみてぇだからな」

「え?」

「もう薄々気づいているでしょう。私はそこらの人間とは違うのですから」

「くっ……」


 自分は人間ではないということ、つまりは魔族の力を自らに宿しているということでもある。それに議会にいた長官だったり、人間の皮をかぶった魔族とは違う。今俺達の目の前にいる男は武術を心得ているというわけだ。

 当然、彼は体の動かし方や技としての訓練をして心身ともに鍛錬をしてきたことだろう。


「あなた方はこのまま逃しませんよっ」


 すると、男は急に加速して俺の方へと走ってきた。この動きはエレインやアレクの動きにとても近いものを感じる。ただ、彼らと違うのは脚力だけで移動してきているという点だ。エレインやアレクは重心移動などを使って無駄のない動きでいて、素早い動きを可能にしている。

 しかし、目の前の男は力だけでそれを実現している様子だ。


「へっ、悪いがその動きは似てるんだよな」

「何のことです?」

「昔の俺になっ」


 それから俺は剣を低く構えて、男の正面に立った。

 俺がするべきことはただ一つ、かつての俺に似た目の前の男を倒すことだけだ。

こんにちは、結坂有です。


今のレイは力だけではなく、アレクやエレイン、ミリシアの影響から技術をも持っているようです。

もちろん、本人以上に活用できるわけではないかも知れませんが、十分に強い存在になっていますね。


それでは次回もお楽しみに……



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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