恋に彷徨う
予告していたタイトルと違います……
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ちなみに物語の進行には影響ありません。
Twitter→@YuisakaYu
夕食を食べ終え、風呂も入った俺はそのまま部屋へと戻ることにした。
すると、後ろからリーリアが話しかけてきた。
「あの、エレイン様」
「どうした」
「こんなメイドですが、これからもよろしくお願いします」
そう言って深く頭を下げるリーリア。
「気にするな。誰でも一人で権力には抗えないからな」
「そうかもしれませんね。それで、一つわがままを言っていいですか?」
「ああ」
「今夜、一緒に寝てもいいですか?」
あざとい上目遣いでリーリアは問いかけてきた。
すると、腰後方にあるアンドレイアが震えるのを感じた。
『ダメじゃ! ダメじゃよ!』
「まぁいい。それでリーリアの気が晴れるのならな」
シングルベッドではあるのだが、二人寝ても問題ない。
リーリアはアンドレイアほど小さくはないが、少し密着すれば寝れないこともない。
『なっ……わしがいる前でそのようなことを……』
「では、寝間着に着替えて部屋に向かいます」
一礼をして自分の部屋に戻ったリーリアは少し嬉しそうであった。
やはり、あの時に見た魔剣の色はそう言ったことなのだろうな。
俺の部屋に入るとすぐにアンドレイアが飛び出してきた。
「なぜじゃ。こんな美少女がおるというのになぜあの小娘を迎え入れるのじゃ!」
「お前は人間ではないだろう。精霊だ」
「人間の、肉体がいいというのかの? わしにもあるぞ。ここに!」
そう言って小さい胸を寄せてみるが、豊満ではないためほとんど意味がなかった。
「リーリアには程遠い」
「わしじゃて成長するんじゃぞ。これからなのじゃ!」
「まぁ期待はしないでおく」
「これじゃからお主は……」
「失礼します」
すると、リーリアが扉をノックした。
ノックの音と同時にアンドレイアは剣の中へと戻っていた。
それにしても着替えるのが早いな。
「ああ」
そう言って扉を開けたのはしっかりと寝間着のネグリジェに着替えたリーリアであった。
そして手元には枕もある。
「着替えるの早かったんだな」
「ええ、メイド服ではないのですぐですよ」
まぁユレイナと違っていつも着替えるのが早いのはそのせいか。
リーリアはそういうと俺の部屋に入ってくる。
「ここがエレイン様の部屋ですか」
「別に変わったところはない」
「いいえ、ここにはエレイン様の匂いでいっぱいですよ」
深呼吸するように、そして何かを味わうように息を吸っている。
こうして目に見えて嗅がれると恥ずかしいものだな。
「俺も服を着替える」
「あ、はい」
俺は上着を脱ぎ、クローゼットへと服を掛ける。
「何か珍しいものでもあるのか」
先ほどから背後からじろじろと見られている視線が気になった。
「い、いえ。なんでも……」
「先ほどから視線を感じるんだが」
「エレイン様の背筋は美しいと思って……」
「筋肉が好きなのか」
女性は筋肉が好きだと聞いたことがある。
確かアレイシアもそう言った反応をしていたな。
服の採寸をした時であったが「私はエレインのお義姉さんなのよ」と言って同伴したことを覚えている。
彼女もどうやら俺の筋肉を見て美しいと言っていたな。
「いいえ、筋肉の付き方が美しいだけですよ。別に好きというわけではないです」
「そんなに綺麗なのか」
「はい。無駄のない付き方をしています」
自分で自分の体を見たことはあまりないが、どうやらリーリアがいうには無駄のない筋肉を持っているようだ。
と言われてもそれがどう美しいのかはわからないのだがな。
そんな舐めるような視線を感じながらも俺は着替えた。
「では、もう寝るとするか」
「もう、ですか」
「何かあるのか」
「……特に何も考えていませんけど」
そう言ってあざとい上目遣いをしてくるが、一体何を考えているのだろうか。
まぁ何も考えていないのなら、寝るとしようか。
俺はそのままベッドへと入った。
それを見たリーリアも一緒にベッドへと潜ってくる。
「エレイン様、もう少しくっついてもいいですか」
「ああ」
「では、もう少しだけ」
そう言って俺の腕を抱き寄せる。
「近付くだけではないのか」
「いや、ですか」
「……そうしたいならそうしてもいい」
いきなりこういうことをしてくるのは裏があるのだろうか。それとも別の思惑があるのか。
とは言ってもベッドでできることなど何もないわけで、俺とリーリアはそのまま寝ることにしたのであった。
翌朝、リーリアが起き出したのをきっかけに俺も起きることにした。
「あ、おはようございます。エレイン様。起こしてしまいましたか」
「いや、気にするな。いつもこの時間に起きているのか」
時刻はまだ四時半と寝ていてもいい時間帯だ。
「今日は少し早めに起きて、エレイン様に色々とご奉仕をしたいと思っていましたので」
「ご奉仕?」
「例えば……こういうのとかです」
そういうと俺の服のボタンをゆっくりと外していき、細くも暖かい指先が俺の胸の辺りに入り込んでくる。
そして、色気を含んだリーリアの火照った顔が俺の下半身へと向かっていく。
ガジャリン!
イレイラとアンドレイアの剣が同時に倒れた。
「はっすみません! 私、なんてことを……」
「気にするな」
「精神的な訓練は人よりもしてきたつもりなのですが、こう言ったことは、その……慣れていなくて」
リーリアはあの魔剣スレイルを手に入れるために精神的な訓練を多くしてきたと言っていたな。
当然魔剣スレイルに飲み込まれないような精神力があるとはいえ、こういった欲求に対してはまた別の精神力が問われる。
「慣れの問題ではない気がするがな。朝食の準備があるのだろう。少し早いが何かしていれば気は紛れる」
「そう、ですね。メイドとして恥ずかしいことをしてしまいました」
そういうとこの部屋から逃げるようにリーリアは自分の部屋へと戻っていった。
すると、アンドレイアが現れる。
「やはり危険じゃ。スレイルを持っていない時点で怪しかったのじゃ」
「どうしてだ」
「精神強化とは名ばかりじゃ。スレイルは精神を支配する魔剣、そうして抑え込まれた欲求や感情はスレイルという枷がなくなった途端に暴走する」
「なるほど、スレイルにはそう言った欠点があるのだな」
「そうじゃ、戦闘においては感情などが抑えられて理性的で的確な判断ができるのじゃが、こうした私生活では弊害でしかないの」
そう言ってアンドレイアは腕を組んで深く考え込む。
「一体何を考えている?」
「あの小娘の処遇じゃ」
「……別に気にすることはないだろう。あの様子からするとおそらく俺に対して好意を持っているようだからな」
俺がそういうとアンドレイアは顔を赤くして俺に飛びかかってくる。
俺の頭を揺らすように激しく動く彼女は怒っているようだ。
「お主に好意を向けるなど、わしぐらい生きてから言って欲しいものじゃ!」
「そういうお前は何歳なんだ」
「お? レディに歳を聞くか?」
アンドレイアがジトっとした目で俺を見つめてくる。
なんだ、こいつはそんなことなど気にしないのではないか。
「とてもじゃないがレディには見えない。ただの子供だ」
「なんじゃと!」
そう激昂する彼女を尻目に俺は制服に着替え始めた。
これからはミーナと訓練に集中しなければいけないからな。一週間で学院二位に勝てるほどの実力までには引き上げる必要があるからな。
当然、俺とて気合が入るというものだ。
◆◆◆
エレイン様の部屋から逃げるように飛び出した私は自分の部屋で私服に着替えて、そのまま厨房の掃除を始めていた。
これで少しは気が紛れるかと思っていたのだが、どうもそれは甘い考えだったようだ。
エレイン様から離れたせいで余計に思考が不安定になる。
「今は魔剣で抑制することはできないし……困ったものね」
太腿に装備している魔剣スレイルは私の記憶を覗いて、ある人の分析を開始している。
そのため、今はいつもの精神強化が使えない状況だ。
「この気持ち、アレイシアには内緒にしないと……」
「私に内緒?」
「っ!!」
アレイシアが厨房の入り口でそう声をかけた。
思考が全てエレイン様のことばかりで掃除していること以外何も注意できていなかったみたいだ。
いつもなら人の気配などすぐに気付くのだが、どうもいつもの私ではないようだ。
「エレインのこと、好きなんでしょ」
「なんで、そう思うのですか」
「昨日、エレインの部屋に入っていくところを見たから」
早く一緒にいたいからと急いだ。それが凶とでたのか。
「そうなのですね……」
「別に怒っているわけじゃないの。エレインのことを好きになる人がいずれ現れるって思っていたから」
そこでアレイシアは一拍置いて言葉を続けた。
「怒ってないけど、複雑な気持ち。恋敵が出来るってこういうことなのね」
「私はメイドですから、ご主人様にご迷惑ではないか心配で」
「エレインはそんなこと気にしてないよ。お互い、頑張ろ?」
そう言って彼女は優しく微笑みかけてくれた。
その言葉で私は少しずつ落ち着きを取り戻すのであった。
こんにちは、結坂有です。
リーリアの秘められた想いはアレイシアに見抜かれてしまったようです。
そして、これからミーナとの訓練はさらに激化していくみたいですね。
果たして訓練に耐えられるのでしょうか。
それでは次回もお楽しみに。




