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破滅への警鐘

 私、セシルはフラドレッド一族の分家の屋敷、つまりはエレインの家にいるわけなのだけど、基本的にこの家は私とカインしかいない状況だ。この家は非常に広く地下空間もあるというわけだが、ほとんどの人が仕事のため家にいることはない。ミリシアやアレクはどのような任務をしているのかわからないけれど、二日も帰ってこない日もほとんどだった。

 昨日、久しぶりに帰ってきたと思ったら今日夕食を食べてすぐに外に出ていってしまった。一体どのようなことをしているのか、私たちには全く教えてくれない。

 それで、私たちは毎日なにをしているのかというとナリアと一緒に訓練をしているのだ。彼女の棒術はかなり洗練されているもので私はその動きに追い付くのに必死だ。

 カインはというとそんな私たちの訓練を監督してくれている。事実、そのおかげもあってか私の悪い癖を矯正するのを手伝ってくれたりしている。

 学院生のころ、私とエレインがパートナーとして日々訓練していたときとは比べ物にならないぐらい私は強くなっていると思う。ただ、それが私の勘違いだということはあるのかもしれない。

 私の実力なんてエレインと比べたら赤子のようなものに違いないからだ。


「はぁナリアは寝ちゃったし、毎日なんか退屈よね」


 すると、カインがそうリビングの机に突っ伏した。


「私は訓練とかしてるから特に退屈とは思わないわね……」

「……私のやってることはただ二人の動きを観察してるだけよ? まぁ簡単な訓練なら私も一緒にやってるわけだけどね」

「仕方ないと思うけどね。魔族が攻め込んでくることなんてないわけだし、大きな事件も起きる気配はないからね」


 最近大量の魔族がエルラトラムへと攻め込んできた事があった。ミリシアの分析によるとあれ程の規模の魔族がまた近いうちに攻め込んでくる可能性はかなり低いそうだ。攻撃があったとしても数百体ほどだろうと予測している。

 その詳しい理由に関しても彼女から聞いて私も納得している。私自身もその話を聞いてまた魔族の大侵攻が起きるとは考えていない。


「そう言われたらそうだと思うけれど……」


 そんな事を話していたら、ドンッと玄関の扉が開いた。


「え?」


 扉が開いて誰かが勢いよくこちらへと走ってきている。私たちはそれに気構えていたのだが、リビングへの扉が開いた途端に警戒を解いた。


「ユウナ? どうしたの?」

「はぁはぁ……。議長代理のユレイナさんがあなたたちに議会に来てほしいそうです」

「こんな時間に?」

「はい。急ぎの用なのです」


 どういった理由なのかはわからないのだけれど、議長代理のユレイナが言うのならそうなのだろう。

 それから内容はわからないまま私たちは装備を整えて議会へと向かった。

 時刻はすでに九時半を過ぎており、商店街の活気もなく市民たちが睡眠に入ろうとしている時間帯だ。そんな中を私たちは走って議会へと向かっている。

 夜の街を走るのは何回かあるのだが、どこか新鮮で気分がよくなってくる。いつもと違う環境というだけでもかなり感覚は変わってくるのだろう。

 そして、議会へとたどり着きユウナの案内で議長室へと向かう。


「ユレイナさん、セシルさんたちを連れてきました」


 そういって扉を開いたユウナは議長代理である彼女に報告した。


「はい。お疲れさまでした。早速ですが、セシルさんには学院生の寮へと向かって人を集めてほしいのです。その理由として、あちらで燃えている建物が見えますか?」


 すると、彼女は窓の外を指差した。

 よく目を凝らしてみると遠くの方に薄っすらとだが建物が燃えているのが見える。


「時間が経ってしまいよくわからないと思いますが、あの場所はちょうどパベリとの交易を行うための関所がありました。その場所が燃えているということは関所に何者かが攻撃を加えたことになります」


 確かに言われてみればあの場所はパベリから来る特産品などを主体として商店街が形成されていた気がする。その場所にある関所が何者かに攻撃を受けて炎上しているということのようだ。

 それなら今すぐにでも聖騎士団や自衛の軍を……しかし、そう考えてみたのだが、聖騎士団はともかく自衛に使うための議会が管轄する軍隊が今ないということを思い出した。


「……そのために学院生を使うというの?」

「はい。もし魔族があの場所にいるのだとすればそれは非常事態となります。非常時には議長代理である私が指令を出すことができます」


 確かにユレイナは議長代理ということで高い権力を持っているのは事実だ。もし魔族が攻め込んできたとすれば非常事態であるのは間違いない。


「聖騎士団には中隊規模の人員を関所付近に向かわせています。ですので、学院生の方たちには市街地での防衛を主体として戦ってほしいのです」


 あくまで本隊として学院生が関所へと向かうことはなく、市街地の防衛として使うようだ。それなら魔族の数も少ない上に危険性もかなり低いと言える。


「ならすぐに学院寮へと向かうわ」

「それと無理に募集をしているわけではございません。志願する人だけで十分です」

「……以前とは規模が違うのかもしれないけれど、国難の状況よ。そんな状況で参加をしない人なんてほとんどいないと思うわ」

「そうですか。わかりました。ですが、無理強いだけはしないでください」

「ええ、わかってるわ」


 もちろん、私も学院生の人たちに無理に志願させる予定ではない。でも、こんな状況を知って国の防衛のために志願しない人なんているのだろうか。

 とりあえず、私とカインは学院寮へと向かうことにした。


   ◆◆◆


 私、ミリシアは急いで議会の方へと戻ろうとしていた。当然ながら、あの火事を議会の警備が気づかないわけがない。


「ミリシア、待ってくれないか?」

「どうかしたの?」

「妙な気配がしてね」


 今はまだ関所から少し離れた交易などで特産品などを売っている店が多く並んでいる商店街に私たちがいる。

 ここに来たのは確か、私たちが調査をしようとしていた元公正騎士だ。その人を追ってここに来たのだが、誰もいないということで関所まで進んだ。そしてそこで大量の魔族を発見した。

 つまり、その元公正騎士なる人物と出会っていないのだ。うまく気配を隠していたとしても流石に魔族が来ているとなれば自分の身を守ろうとするはず。


「……関所を燃やして議会に事態を報告するなんて考えたものだ」

「っ!」


 そういって暗闇から薄っすらと現れたのは私たちが探していた元公正騎士の人だった。彼の名前はレイガスという人物だ。

 リーリアから情報だけは聞いていたが、その持っている魔剣の能力に関しての情報は全く聞いていない。いや、リーリアですら詳しくは知らないといった状況らしい。もちろん、敵対している人というわけではないため精神分析をしたこともないだろう。


「関所があんな状況になっていたのはあなたのせい、だったりするのかしら?」


 そう私が問いかけてみる。


「ああ、そうだ。それで君たちは俺のことを探していたんだろう?」

「つまりは僕たちがここに来ることを予想していたってことかな」

「予想もなにも、少し調べれば怪しい動きをしていると気付くと思っていた」

「それなのにどうして姿を現したのかな? ずっと隠れてやり過ごすこともできたんじゃないかな」


 当然ながら、私は彼の気配に直前まで気づくことはなかった。

 私自身もそれなりに警戒していたつもりなのだが、私たちが気付かれていないということは彼自身も知っていた。それなのにここで姿を現す理由がないのだ。


「私たちがどこまで強いのか、知っていてもおかしくはないわよね」

「……君たちの強さはよく知っている。だが、この俺には勝てない」

「それってどういう……」

「ぅがっ!」


 すると、アレクの腹部が斬り裂かれた。

 目の前の彼が剣を引き抜いた様子もない。一体どうやってアレクに攻撃をしたのだろうか。


「アレクっ!」

「君たちには俺の攻撃を避けることも、見ることもできない」

「……どういったトリックなのかはわからないけれど、僕には弱いもののように見えるけどね」


 私にはまだ理解できていないが、攻撃を受けたアレクからすればなにかわかったのだろうか。いや、彼の場合ははったりということだってありえる。

 どちらにしろ、彼の動きには細心の注意を払う必要があるだろう。

 私たちが相手をしているのは聖剣使いではない。特異な能力を意のままに使うことができる魔剣使いだ。

 当然だが、一筋縄で倒せるとは到底思っていない。ただ、彼が余裕ぶっていられる時間が長いのか短いのか、それだけが気になった。

こんにちは、結坂有です。


先日は予定通りの更新ができず申し訳ございません。

数時間後にもう一本更新する予定です。


突如現れた元公正騎士でしたが、どういった能力を使ってくる人物なのでしょうか。

すでに勘の鋭いアレクは彼の能力に気がついているようですね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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