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破壊者の進軍

 私、ミリシアは通信装置の受話器を取った。しかし、何度試してみても動かない。電源が切られているのだろうか。


「ミリシア、ケーブルが……」

「まさか、切られてるの?」

「そうみたいだね。ここの通信装置では議会に連絡することができないみたいだね」


 となれば、別の手段で異常を伝えるべきなのだが、それにしてもどうしてパベリの方角から魔族が来ているのだろうか。その違和感がどうしても拭えない。

 考えられるのは三つある。一つはパベリが魔族によって陥落し、エルラトラムへと進軍してきた場合、二つ目はパベリは崩壊せず、エルラトラムを優先して攻撃してきたか、三つ目はパベリの連中が魔族を使って私たちを攻撃してきたかだ。

 まぁ他にも考えられるが、パベリの方角から魔族が来ているというのが気がかりだ。パベリとエルラトラムの間は一キロも離れていない。となれば、防御の堅いであろうエルラトラムを攻撃するよりもパベリを攻撃するのが普通だろう。しかし、彼ら魔族はそういったことをしていないのだ。


「あまり長く考えている暇はなさそうだね」

「……アレク、何をしているの」


 彼は棚に保管されている大量の書類を取り出して、燃料となる油をその書類の山にかける。


「狼煙だよ。門は石でできているから燃え移ることはない。でもこの建物は大きな木造の建物だ」

「……ここなら議会からでも観測できるわね」

「ああ、少し手伝ってくれるか?」

「うん」


 それから私も燃料となる油をこの建物が効率よく燃え上がるように撒き散らすとアレクがすぐに火を放った。

 油の質がいいのか一気に燃え広がり、火柱が立つ。


「これなら議会からでも見えるね」

「門には燃え移っていないみたいだし、僕たちは避難しよう」

「ええ」


 少なくとも百体以上の大型魔族がいるということは確認している。それも暗闇の中だ。見えない遠くの方にいる魔族を含めれば数百は存在することになる。当然ながら、私たち二人だけでではそれらの魔族を完全に防ぐことができるかと言われれば不可能だろう。

 最低でも聖騎士団の小隊が駆けつけてこない限りは私たちとしても戦うのは避けたいところだ。


   ◆◆◆


 私、ユウナは議長代理をしているユレイナの護衛をしていた。

 護衛と言っても彼女の横に立っているだけだ。それに今私たちがいるこの議長室は警備に警備を重ねているために安全な場所と言える。それに以前、警備の死角を利用されて一度侵入されてしまったことがある。今ではそれらの問題も改善されおり、侵入するのは容易ではなくなっている。


「こっちの書類は処理しなくていいのですか?」


 そうふと思った疑問をユレイナに聞いた。

 議長卓には二つの書類の山が作られており、もう片方の山を彼女は全く手を付けていない。


「こちらの書類はアレイシア様本人の署名が必要なのです。私も議長代理という役職ではあるのですが、あくまで代理です。本人のように強い権限を持っていませんので」

「本人でないとだめなのですか?」

「ええ、これらの書類はすべてエルラトラムでの強力な実行力を持つものとなっています。それをアレイシア様が知らないまま処理してしまっては大問題ですから」


 確かに権限を持っているのはアレイシア一人、あくまでユレイナはその議長の代理なのだ。そんなアレイシア議長の許可無く勝手に彼女が行動することはできないということは当然のことだろう。


「そうなのですね」

「はい。ですので、こちらの書類はまたアレイシア様が戻られたときに処理される予定です」


 それにしてももう時刻も九時を過ぎている。お腹が空いてきたのは口に出さないでおこう。ユレイナも頑張っていることだし、ここで私が弱音を吐いている場合ではないのだ。

 そんなことを思いながら、私は窓の外を見た。

 夜も更け、外は真っ暗に……あれ、あの光はなんだろう。


「ユレイナさん、あれはなんでしょうか……」


 そんな私の問いに彼女は書類処理の手を止めて窓の外を見た。


「っ! 火事、みたいですね。あの辺りは確かパベリの方に向かう関所があったはずです」


 すると、扉が強くノックされる。


「入ってください」

「失礼しますっ」


 そういって入ってきたのは警備隊の一人だ。彼は議会の展望台から遠くを監視している人だ。当然ながら、あの火事のことを報告してきたのだろう。


「パベリ方面の関所にて火災が発生しているようです」

「ええ、私もそこの窓で確認しました。何か連絡がありましたか?」

「いいえ、何も報告は入っていません。こちらからも通信してみたのですが、返事はありませんでした」


 議会と関所とはケーブルが繋がれており、音声で随時報告を入れることができるのだが、どうして連絡が取れないのだろうか。あれほどの大火事であれば誰かが連絡してきてもおかしくはないはずなのだが……


「わかりました。火事が起きた理由はわかりませんが、警戒態勢を取ることにしましょう。それと聖騎士団から一中隊派遣するよう要請できますか?」

「中隊規模の聖騎士を、ですか?」

「はい。魔族の侵攻という可能性もありますので」

「はっ、直ちに……」


 そういって彼は議長室をあとにした。

 魔族が侵攻してきているという可能性は低いものの、まったくないということはない。それはミリシアたちも言っていたことだ。ただ、兵力や物資などともに衰弱している今の私たちに以前のような魔族侵攻が起きればどうなることだろうか。

 私の尊敬できるエレイン様もここにはいないことだ。もしかすると本当にこの国が崩壊してしまうのかもしれないという恐怖が私の心に突き刺さる。


「ユウナさん、一つ頼み事があるのですがいいですか?」

「なんでしょうか」

「セシルさんとカインさんを呼んできてくれますか?」

「……どうしてですか」

「彼女たちにも手伝ってほしいのです。私たち議会には以前のように軍隊がいるわけではありません。全ては聖騎士団の管轄となってしまいました」


 それは議会の軍がとんでもないことを企んでいたために解体ということになった。当時の流れからすれば当然といえば当然だが、自衛する際に自由に使える軍隊がいないというのは色々と不都合だ。

 そのことに関してはアレイシアも理解していて、すぐにでもそういった軍隊を作りたいと考えていた。


「ですが、どうしてセシルさんなのですか?」

「彼女は高度剣術学院で一位だった人物です。学院の生徒を臨時の軍隊として起用したいのです」

「……学生を軍に引き入れるということですか」

「今は臨時の軍隊です。いずれは正式な部隊となってもらいますが、今は非常事態なのです」


 もし魔族が侵攻してきたとなれば非常事態と言える。

 それにセシルと話したことがあるが、彼女もいずれは国の安全を守る騎士になりたいと夢見ていた。それならここに呼んできてもいいということだ。


「わかりました。すぐに呼んできます」

「お願いします」


 そういってユレイナが小さく頭を下げた。

 少なくとも今の私は彼女の護衛で召使いのようなもの、頭を下げる必要はないはず。しかし、頭を下げてまで私に頼み込んでいるということはそれほど重要だということの表れでもある。


 それから重役を引き受けた私は議長室を出て夜の中を走った。

こんにちは、結坂有です。


先日は更新できず、申し訳ございませんでした。


エルラトラムに近づく魔族の軍勢は一体何なのでしょうか。

そして、それらの魔族はどこから来たのでしょうか。気になることが多いですね。


それでは次回も楽しみに。



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