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聞こえてくる破壊者の音

 俺、ブラドは聖騎士団の団長室にいた。

 現在の団長はアドリスという人間で彼は非常に強力な聖剣を持っている。もちろん、実力も団長としては申し分ないぐらい高く、統率力も高い。

 俺が団長だった頃は遠征部隊の隊長を任せていた。まぁ今となっては俺よりも地位の高い立場にいるのだがな。


「それで、あいつらはどうするつもりなのかな?」


 彼が俺に対して問いかけてくる。

 なんのことかというと、かつて連絡通路として使われていた場所にいる魔族のことについてだ。以前、俺と彼とでその場所へと調査したのだが、結局の所前に進むことができず、撤退したがな。地下空間と狭い場所で無数の魔族がいたのだ。二人で同行できるものではなかったのだ。


「ああ、議長の代理をしているユレイナにも話したのだが、今のところは様子を見るしかできない」

「通路を破壊するにしても手がかりがなくなってしまうからね」


 もちろんだが、通路をすべて破壊して封鎖することも考えたのだが、それだとどうしてあの場所に無数の魔族がいたのか説明ができない。俺としてもその謎に関しては解き明かしておきたいからな。証拠となるものを失うわけにはいかない。


「そうだ」

「本来であれば小さき盾の人たちを使って一掃するなんてこともできないのかな?」

「小さき盾は今二人しかいない。それに彼らにはまた別の任務を行っているところだ」

「確か、エルラトラム国内に潜入しているかもしれないスパイを探しているんだね」


 エルラトラムに潜入してきた大騎士の二人は敵対国であるヴェルガーの奴らだった。あの国にはあとも一人大騎士がいるため、もう一人潜入しているのではないかと調査を始めている。当然ながら、大騎士に対抗できるのは同じ強力な大聖剣を持っている四大氏族の連中か、小さき盾しかいない。正直、俺も一対一でどこまで戦えるかはわからないからな。


「だが、それは名目上だと思うがな。本当はもっと先のことまでアレクやミリシアはやっているだろうな」

「もっと先のこと?」

「例えば、議員の裏の活動まで調べようとしているのかもな」

「……それは諜報部隊のすることではないのかな?」


 本来ならそうなのだがな。ただ、彼らは俺たち諜報部隊という議会から調査に関する権力を得ていないにもかかわらず自分たちで調査を始めることができるだろう。それに彼らを止めるにしても権力があったところで意味はない。

 牢屋に閉じ込めたとしてもかんたんに脱獄されることだろう。それにエルラトラムの切り札でもある人物を殺すわけにも行かないからな。

 アレイシア議長やユレイナ議長代理と言った信頼できる権力者でなければ彼らを止めることはできないのだ。


「確かにそうかも知れないが、俺たちがやるよりも彼らがやった方が逆に効率がいい」

「ということは諜報部隊としてブラドは彼らの活動を黙認しているってことかい?」

「まぁそういうことだな」

「それならそれでいいんだけどね。僕からすれば近くに魔族の巣窟があるというのはどうも安心できないからね」


 それもそれで大問題だがな。

 しかし、わざわざ小さき盾を引き出すほどの事態になっているかと言われればそれもそれで疑問が残る。

 できるところまで俺たちでやってみるしかないだろうな。


「そのことに関しては俺も協力する。諜報活動に関しては小さき盾に任せることにしよう」

「それでいいのかい?」

「ああ、今は俺たちでどうにかするべきだ」

「……まぁそうかもしれないね」


 それから俺たちはあの場所にいる無数の魔族に対しての作戦を考えることにした。


   ◆◆◆


 私、ミリシアはアレクと一緒にとある場所へと向かっていた。

 もちろん、私たちを尾行してくる人もいるのだが、その人はフィレスという人でブラドの諜報部隊の一員だ。別に私たちの活動を妨害してくることもなく、大きな目で見れば味方ということでそのまま尾行させている。

 それで、私たちが今回調査しているのは公正騎士の一人だ。エレインのメイドであるリーリアからだいぶ前に聞いたことがあるのだが、公正騎士は聖剣に対抗するために魔剣を持っている。数少ないとはいえ、隠れた実力者であるのは確かなようだ。

 本来そういった公正騎士は聖騎士団団長だったブラドが取り仕切っていたようだが、その力関係が崩壊してしまった今、公正騎士の人たちがどうなったのかは不明だ。ただ、その中の一人、リーリアはエレインのメイドとして忠誠を誓っている。正直言うと、私が彼のメイドとして……いや、今はその事は考えないでおこう。


「ミリシア、なにか感じるか?」

「いいえ、気配すら感じないわね」

「……僕の気のせいではないということだね」

「でも、妙だわ。こんなところに来たのにどうして誰もいないのかしら」


 そう、私とアレクがいる場所はパベリという国と繋がる関所付近だ。このあたりはパベリからいろいろな物品等が入ってくるため商店街としても発展している場所でもある。しかし、人の気配が全くしない。商店街にも人がいないように思える。

 今は夜で買い物客も全くいない時間帯ではあるとはいえ、それでも一人もいないということはないはずだ。


「そうだね。僕たちを尾行している人以外は全くいないね」

「……関所の方にもいないのかしら」

「流石に警備をしている人がいると思うけれど、行ってみるかい?」

「なにか知ってるかもしれないしね」


 商店街を抜け、関所の方へと向かっていく。

 この感覚、嫌な予感を感じならがも私はアレクと一緒に前へ進んでいく。


「ここって関所よね。普通、警備の人とかいるはずだけど……」

「この様子だといないみたいだね」


 明かりすらついていない関所がそこにはあった。関所の中へと入ってみるが、人が誰もいないのが気がかりだ。ただ、門は閉まっているようで自由に出入りできないようにはなっている。


「誰かが侵入してきた、って可能性は?」

「わからないね。でも、暗殺されたようにも思えないし」


 死体が転がっているわけでもない。ということはなにかの命令があって人がいないということだろうか。

 そもそも、私たちがここに来た理由は公正騎士だった一人がパベリを通じて怪しい動きをしていたからであった。そのことで直接調査に乗り込もうとここに来たのだが、案の定このようなことが起きていた。


「……関所の外はどうなってるの?」

「窓の外を開けてみるよ」


 そう言ってアレクが封鎖されていた窓の一つを開ける。


「っ!」

「どうしたの?」

「魔族だ」

「え?」


 人の気配もそうなのだが、魔の気配すら感じていなかった。

 それなのにどうして魔族がいるのだろうか。弱い魔族だから? 弱かろうが強かろうが全く関係ない。ここで食い止める必要があるのは確かなようだ。


「数は?」

「見たところ百はいると思うね」

「百体も……気配が全くしないのはおかしいと思わない?」

「この前にもあったね。濃霧のときの堕精霊と似たようなものかな」


 確かにあのときは真横にいる人の気配すら薄くなっていた。つまりは気配を隠すことができるということだ。


「っ! もしかして、計画的にこのようなことを……」

「そのまさかだね。とりあえず、議会に連絡をしないとね」

「ええ、そうね」


 そう言って、私たちはすぐに関所の中にある通信装置を動かす。

 そのとき、私はなにか良からぬ違和感を覚えた。

こんにちは、結坂有です。


エルラトラムでもいろいろ事件が起こってきているようですね。

人間の魔族化、そしてエルラトラムへの魔族の攻撃……一体何の関係があるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに……



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