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悪の裏側

 俺、ブラドは襲撃してきた連中を倒した後、すぐに地下の本部へと向かった。

 小さき盾にはしっかりと説明した方がよかったのかもしれないが、それはもう遅い。すでに彼らでどうにかなるような問題ではないのだ。これは俺が隠してきたものでもあるからな。彼らに迷惑をかけるのは良くない。俺の問題は俺が解決するべきなのだ。


 敵は魔族だけではない。


 それはエレインにもミリシアにも伝えた。彼らはまだ知らないかもしれないが、魔族は人間を飼っている。人間を飼育し、自らの支配下に置いているのだ。基本的に襲撃してくる魔族は下位の魔族が多い。言葉通りの馬鹿な連中だ。その中には上位の魔族が何体かいるのだが、その上位の魔族は魔族領の中で飼育した人間を食べたり、種の苗床にしたりしているようだ。

 それらのことは聖騎士団の人たちも知らないことが多いだろう。このことを知っているのは俺とセシルの父だけだ。

 まぁセシルの父に関してはこれらの情報を世界に公開しようとしていたが、何者かに殺された。俺は反対していたとはいえ、得た情報をどう扱おうが彼の勝手だと止めることはしなかった。

 そして、実際に俺ではない何者かに殺されたのだ。

 俺も持っている情報を公にしようとすれば、きっと誰かに潰されることになるのかもしれないな。

 議会でも、四大騎士でもない別の勢力……。

 多くの人間は魔族を敵だと思っている。しかし、敵だとは思っていない連中もまた存在しているのだ。まぁどういった理由で魔族を支持しているのかはわからないがな。


「ブラドさん、外の騒ぎはなんだったのですか?」

「ヴェルガーの残党がいたようでな」

「残党……やはり入国審査は厳重にしなければいけませんね」


 事実とは異なるのだが、フィレスには隠しておかなければいけないことだ。少なくとも俺の知っている情報は全て話すわけにはいかない。


「まぁ残っていたとしてもあと数人ぐらいだろうな」

「その数人でも大きな事件になりますよ。ヴェルガーの大騎士は三人だそうですが、まだ一人残っているそうですから」

「そうかもしれないがな。気にする必要はないだろう。俺たちには大騎士が四人、それに小さき盾も存在していることだ」

「……確かに彼らなら心強いですけど」


 どこか不安の残るところがあるようだが、彼女は納得したようだ。


「それよりも俺は行かなければいけないところがある」

「どちらに行かれるのですか?」

「聖騎士団時代の友人のところにな」

「わかりました。私は引き続き調査を続けますね」

「ああ、頼む」


 彼女にはヴェルガーからの侵入者の調査に集中してほしい。俺は俺で別の問題を対処するだけだ。


 それから俺は議会を出て聖騎士団本部へと向かう。

 もちろん警備している団員からは嫌な目で見られるが、対立しているわけではない。それに噂を鵜呑みにするような人間はもういないわけだしな。

 そして、団長室へと向かう。

 今聖騎士団の団長を務めているのはアドリスだ。彼には直接魔族の行っていることに対しての情報は流していないが、彼は自分自身で調査に出ていた。

 そのために団長という地位を使って世界に向かわせていた。それにアーレイクからの任務もあったようだしな。


「入るぞ」


 俺は団長室の扉をノックして部屋へと入った。


「ブラドか。ちょうどよかったよ。調べてたこと、わかったんだ」

「ああ、そのことだが、ついさっき議会に来た」


 俺がそう言うとアドリスは驚いた。


「大丈夫なのかい?」

「小さき盾もいることだし、大丈夫だろう」

「……それならいいのだけどね」


 彼も小さき盾の高い実力に関してはかなり信用しているようだ。まぁミリシアとともに行動したこともあったらしいからな。当然と言えば当然か。


「それで、どうだった?」

「やっぱりエルラトラムの南側にかなり古い地下通路があったんだ。おそらくだけど、王国時代のものだろうね」

「なるほどな。確かに存在していてもおかしくはないだろうな」


 今の議会は昔からえるらトラムを統治していた王の城を改築したものらしい。実際に事務室の地下には牢屋の跡があったわけだからな。そのほかにもこの国を覆っている壁に関しても王国時代のものと思われる。その情報の多くは時代の波に飲まれて失われているが、一部の人間はまだ知っていることだろう。

 そして、それを悪用して国内に侵入経路を作っている連中がいるということもまた事実のようだ。


「それはすぐに封鎖したのか?」

「迷路のように作られているようでね。一つを封鎖したところで意味がないんだよ」

「ふむ、封鎖は難しい、ということか?」

「そうだね。完全に破壊するにしても地下通路の全容がわからない以上危険だしね」


 下手に破壊したところで意味はない。迷路状になっている地下通路の全てを把握できなければい効率よく破壊することはできない。


「まぁどちらにしろ、聖騎士団が地下通路の封鎖をするのは間違っている」

「あくまで僕たちの仕事は魔族を倒し、人類の繁栄を守ることだからね」


 一回の破壊工作で済むのなら聖騎士団に任せてもいいのかもしれないが、今回に限っては長期間の調査が必要となる任務だ。

 この調査は聖騎士団のすることではない。


「アドリス、その場所に案内してくれるか?」

「実際に見てみないとわからないからね。行こうか」


 それから俺はアドリスの案内でエルラトラムの南側へと向かった。

 この場所は木が生い茂っているため、一見すると何もないように見える。しかし、茂みの中へと一歩踏み入れると石で作られた道が見えてくる。そして、それを進んでいくと錆びて朽ち果てている鉄格子の扉が見えてくる。


「ここだよ。この先を進むと城壁の奥に出れるんだ」

「外はどうなっている?」

「ここと同じ森林地帯。全ての出口を探すのは不可能だね」


 迷路状になっていると言っていた。確かに通路が複雑に交わっているのだとすれば、確かに全容を把握するのは不可能だろうな。


「どちらにしろ、入ってみなければわからない」

「入るのかい?」

「ある程度の危険は承知している。アドリスは団長のいう立場の人間だ。別に付いてこなくても問題ない」


 俺は大規模な組織のリーダーというわけではない。彼のように俺には何の責任もないのだからな。

 それに多少危険な状況に陥ったとしても俺には聖剣も魔剣も持っている。ある程度のことは対処できるだろう。


「いや、僕も一緒に行くよ。魔族がこの国に侵入するのは良くないことだからね」

「そうか。だが、危険だと判断したら逃げろ」

「わかってるよ」


 そして、ひどく錆びた鉄格子の扉を開いて地下通路の中へと進んでいく。

 手に持っているのは小さなライト一つだけだ。当然ながら、一つだけで地下通路全てを照らすことはできず、奥がどのようになっているのかは実際に歩いていかなければいけない。


「それにしても空気が重いな」

「うん。ほんの少し地下に入っただけなのにね」


 地下通路とはいっても十数段しか降りていない。それなのにここまで空気が重たいのには何か理由があるのだろうか。それともただ単純に換気口などがないからということなのだろうか。まぁどちらにしろこの場所に長居したくはないな。

 しばらく進んでいくと血生臭い匂いが漂ってくる。


「この匂いは……」

「うん。思い出したくないね」


 人間が魔族化した存在。


「ぐルゥ……」

「っ!」


 犬が喉を鳴らすような音が突然聞こえてきた。

 もちろん、こんなところに動物がいるはずもなく、あるのはただ魔の気配だけ。そう、ここにいるのは魔族だ。


「アドリス。囲まれたな」

「そうだね。わかってたことだけど、こうもあっさりとはね」


 俺たちは当然ながら聖騎士団の中でもトップクラスの実力を持っている。まぁ俺に関しては反則的な能力を使っているけどな。

 少なくともアドリスに関しては剣技においても、聖剣の能力においても強力なものだ。


「狭い場所で戦うのは不本意だけど、仕方ないね」

「ああ、思う存分暴れてくれ」

「お互い様にねっ」


 そう言って彼は走り出した。真っ暗闇の中、彼は迷いもせず魔族化した人間を斬り倒していく。

 俺もそれに続くように聖剣を引き抜いた。分身を出すということも可能ではあるが、実際に自分で動いた方が自由度が高いのは確かだ。

 ただ、それにしてもこれほどの魔族化した人間をどう集めたのかが気になる。明らかにここから議会を襲ってきた連中が来たのは確かだろうが、一体どこからこいつらがやってきたのかはわからない。

 そのことに関しても調査を進めていくとわかることか。

 今、考えるべきはこの地下通路から切り抜けることだ。俺はもう一つの聖剣も引き抜き、アドリスの後に続いた。

こんにちは、結坂有です。


エルラトラムの中でも色々とわかっていないことが多くありますね。

それにしても魔族化した人間とはどういった存在なのでしょうか。魔族に支配されている人間とはどういった生活をしているのでしょうか。

気になることが多いですね。


それでは次回もお楽しみに。



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