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侵食される内政

 私、ミリシアはレストランでとある二人組を監視していた。

 午前中に議会の中でいくつもの資料を調べて怪しいと思った人たちだ。彼ら二人組はこの国で小売業を営んでいるようだが、そのほかにも色々と輸入に関する事業を行なっているらしい。

 その輸入先として大きく取り上げられているのがヴェルガーという国からだ。特に食料品などを主に仕入れているようだ。


「金持ちってのもこんなところに来るんだな?」

「だってここ、有名な場所だし料理もお美味しいからね」

「それに、情報ではここはあの人たちから仕入れた食呂を使っているみたいなんだ」


 食料品を主に取り扱っているということだ。こうした場所で食事を取るのも当然と言えるだろう。

 それに売れていない場所とはあまり取引したくないはずだ。少なからずこの店の調査も含めて来店しているようだ。その証拠に彼らはここに来たと同時に何やらメモを取り始めた。


「ま、私たちはただの客として来たってわけだから深く考える必要はないけど」


 彼らのように市場を調査しに来たわけではない。私たちは彼らの素性について知りたいだけなのだ。

 他にもヴェルガーから仕入れている団体は彼ら以外にもいるようだが、他にも理由があった。

 彼らを支援している人たちの中に元議員だった人がいるということだ。何か政治的な力が働いている可能性だってあるということだ。


「って言っても見たところ普通の連中にしか見えねぇけどな?」

「まだここに来たばかりでしょ。これから誰かと話をするのかもしれないし」


 それからしばらく待ってみたのだが、誰一人として彼らに接触する人は現れず彼らはただ食事を楽しんでいただけであった。

 しかし、問題が起きたのは彼らがこのレストランを出た後であった。

 私たちは彼らを尾行しようと少し時間をずらして外に出てしばらく尾行を続けていると急に男の悲鳴が聞こえた。

 私たちは彼らを直接目で見て尾行していたわけではなく、音や気配などで彼らを追いかけていた。


「っ!」


 その悲鳴はどこか痛々しくも感じたため、私たちは急いで彼らのいる場所へと向かった。

 街道から外れて裏路地を進んでいく。すると、二人組の一人が背中からナイフのようなもので突き刺さって倒れていたのだ。


「何やってんだ?」

「待って、しばらく様子を見ましょう」


 外には二人組の目の前には複数の男が立っていた。レストランの中にはいなかった人だ。

 私たちは彼らに気付かれない程度に離れた場所から彼らを監視することにした。


「は、話が違うだろ!」

「何がだ?」

「俺たちはただ情報を向こう側に伝えただけで何もしてねぇって!」

「この私に逆らうのか? 誰のおかげでお前らの活動を支えてると思ってる」

「そ、そりゃわかってるさ。でもこれはいくらなんでもやり過ぎだろっ」


 命に関わる怪我ではないとはいえ、かなりの激痛が走っていることだろう。倒れている彼からは大量の鮮血が溢れ出ている。

 何か取引に問題でも起きたというのだろうか。


「取引だと言っただろ。私ならその怪我を治すことができる。だが、断れば怪我は悪化していくばかりだ」


 そう言って男の一人が突き刺さったナイフを足で踏むようにしてさらに深く刺し込んでいく。そして、それと同時に男は悲鳴を強める。


「わ、わかった! 次はどうすればいいんだ!」


 二人組の一人がそういうと男はにやりと悪い笑みを浮かべて口を開いた。


「ヴェルガーの連中にこの地図を渡せ」

「……これは?」

「この国の防衛網だ。これさえあれば攻め込むのに楽だろう」

「は? こんなの反逆罪だろ!」


 受け渡された地図を持って男はそういった。

 当然ながら、この国の防衛に関する情報を敵となる国に渡すというのはかなり危険な行為に違いないだろう。下手すれば死刑となることだってあり得る。


「だが、その地図を持っているのはお前だ。この私ではない」

「っ!」


 すでに受け取ってしまった以上、やらざるを得ないということだ。彼の目の前にいる人物が誰なのかはわからないが、議員である可能性が高い。もし男に彼が逆らうようなことが起きれば、すぐに反逆罪を適用し彼らを処分することだってできるのだ。

 自分の手を汚さずに悪事を働く。権力を持った人がやる汚いやり口だ。


「国の防衛に関することだから、流石に私たちも看過できないわ」

「そうだね。これは大問題だ」

「へっ、だったらやることはひとつだな?」


 そういうとレイが剣を引き抜いて一気に走り出した。

 そして、複数の男の一人をものすごい勢いで吹き飛ばすとそのまま勢いを殺さずに次々に男を薙ぎ倒していく。


「なっ!」

「こんなところにどうして!」

「てめぇら、あんま調子乗ってると痛い目見るぜ?」


 私たちを見た彼らは驚愕した表情を浮かべた。

 小さき盾という存在を知っている議員と思われる男は他の人たちよりも顔を青ざめている。それもそのはずだ。私たちの実力がどれほどのものなのか、彼はよく知っていることだろう。

 このような用心棒では私たちに歯が立たないことぐらいすぐに察したはずだ。


「さっきまでの話は聞かせてもらったわ。立派な反逆罪ね」

「……この地図はこの男がっ」

「悪いけど、全て聞かせてもらったよ。その地図を渡すためにこんなことをしたということもね」


 そう言ってアレクがナイフで倒れた男を指さした。


「もしかして、こんな風なことを過去に何回もしたのかしら?」


 私は地図を持った男にそう聞いた。

 すると、彼は無言で大きく頷いた。

 このようなやり方で彼らを利用していたのだろう。もちろん、やり方としては間違っていないし、理にかなっていると思う。

 だが、結局はこうして足が付いてしまう。


「まぁ今回は運がなかったってこった。潔く認めろや」

「と、取り囲め!」


 議員の人がそういった途端、周囲にいた人たちが武器を引き抜いて襲いかかってくる。

 幸いにも彼らはどうやら聖剣使いではないようだ。とは言っても私たちには関係のないことだけどね。


「悪いけど、それが無意味だってわかってるでしょ」

「オラァ!」


 レイの強烈な一振りによって生み出された衝撃波はその襲いかかってくる男たちを吹き飛ばした。


「うそだろっ!」

「嘘じゃないのよ。私たちの強さ、わかってたことでしょう?」

「本当にそれほどの力が……」


 報告されていたことを信じていなかったのだろうか。まぁどちらにしろ、彼は誰かに捕まっていたことだ。

 私たちが捕らえなくともおそらくは諜報部隊の人たちがやっていたはずだ。

 それからのこと、彼らは諜報部隊のフィレスによって議会の方へと連行されていくのであった。

こんにちは、結坂有です。


次回も戦闘が続きます!

それにしてもエルラトラムを裏切ろうとする人は案外にも多いようですね。どうしてなのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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