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訓練生の日常

 早朝、私、クレア・シーゼレスはベッドから体を起こした。そして洗面台に向かい鏡に映った自分を見つめながら夢について考える。その夢というのはいつか聖剣使いになるという夢だ。

 しかし、このヴェルガーという国では特殊な能力がなければ聖剣使いになることはできないと言われている。当然ながら、私には特殊な力など持っているわけでもない。それにどこかに弟子入りして剣術を学んでいるわけでもない。国が指導する基本剣術を基にしてただただ訓練に励んでいるだけだ。

 そういうこともあって他の人たちからの目は冷ややかなもので、聖剣使いではない訓練生のほとんどは憲兵となって広大な土地を持っている国の内政を保っている。

 このまま聖剣を手に入れることができなければ私も憲兵として働くことになるだろう。

 こうして鏡の前でそんなことを考えるということをもう何年も続けている。夢は願い続ければいつか叶うと言われているが、本当にそうなのだろうか。私にはそれがどうも信じられないでいる。とは言っても自分で何かを変えることができるというわけでもなく今日もこれから訓練に向かう準備を始めた。


 服を着替えて朝食を作る。

 最初のうちは栄養に偏りがないように考えて作っていたのだが、一人暮らしというのは残酷なものでそんなことを考える余裕すら今は無くなってしまっている。

 朝食を食べ終え、訓練生に配布されている訓練用の木剣を携えて家を出る。

 これから向かう場所は訓練生が集まる場所となっている。

 もちろん、訓練生と言っても私のよう流派を持たない人もいればどこかの門下生ということだってある。そんな人たちとともに訓練をしたり、戦ったりするというのは流派に属さない私にとってとても有意義なことなのだ。

 それから外に出てその訓練生が集まる場所へと向かうことにした。


 この町はヴェルガーの中でもかなり大きい港町となっており、潮風の心地よい観光地として国内で有名だ。ただ、私は景観の良さだけで選んだだけではない。ここは海外から来る人も多くいるということで外の文化を知れるという意味でもとても都合が良いのだ。

 しかし、魔族が蔓延っているため海外から観光としてここにくる客は全くおらず、ほとんどの人は軍関係者となっている。

 そして、私は今日も昨日と違う道で訓練場へと向かうことにした。

 今回は少し遠回りとなるのだが、今までとは全く違った景色が流れていく。横に目をやると港には大きな船がちょうど到着したところのようで中から人が出てきている。もちろん帰国してくる人もいるのだろうが、彼らの多くは海外から来た人だろう。

 もしかするとあの人だかりの中にはもしかすると聖剣使いの人もいるのかもしれない。そんなことを考えていると次第に私の足取りも軽いものになってくる。


「あれ……」


 港に溢れている人たちを見て私は不思議に思った。

 いつもなら警備の人が多いはずなのだが、今日は警備の数がかなり少ないのだ。

 しかし、私としてもこの国の警備に関わったことがほとんどない上に、いつもと違う場所から見ているからということもある。

 こうした違和感は自然なことなのだろうか。


 ドンッ!


 すると、強烈な爆発音が港の方から聞こえてきた。


「うそっ」


 理由はわからないが、いつの間にか私は走っていた。

 何らかの事件があったとしても私の持っている剣は木剣で頼りになるほどの実力もない。それでも何故か私の背中を押すようなそんな衝動に駆られていた。


   ◆◆◆


「エレイン様、到着しましたね」


 入国の審査を終えた俺、エレインは船着場に船が着くのを眺めていた。

 ヴェルガーの中でもかなり大きい港町のようだ。人生初めての船ということもあり、今まで味わったことのない新鮮な雰囲気を楽しんでいた。

 昨日の夕方から朝にかけて船に揺られていたわけで船の中は静かなものだったが、俺にとっては充実した時間だったと言える。


「ああ、そろそろだな」


 そして、しばらくすると船が停まり、橋がかけられる。

 入国審査などは船の中で済ませているため滞りなく船を降りることができた。


「気をつけてくださいね」


 昨日馬車に乗り込んでから機嫌がいいようでリーリアが楽しそうにしている。理由を聞いてみたところ特に変化はないそうなのだが、二人きりというのがなぜか気分が高揚するようだ。

 彼女としてはデートをしているみたいとのことらしい。

 まぁそう言われれば、気分が高なるのも理解できなくもないか。

 それから船を降りて深呼吸してみる。

 新しい場所の空気というのはもちろん今までとは全く違う味がする。


「ここは以前と全く変わりませんね」

「そうなのか?」

「はい。この石造りの景観はエルラトラムとは違っていつまでも変わりません」


 木造と石造の入り混じっているエルラトラムの景観とは違い、ここは石造で統一されている。当然ながら、簡単に取り壊すこともできないためすぐに景観が変わるということはないはずだ。

 それにリーリアがここに来たというのは数年前のことだろう。たった数年では大きな変化はないはずだ。


「とは言ってもエルラトラムが少し変わっているのですけどね。エレイン様、ここを真っ直ぐ行くと小さなカフェがあります。休憩して行きませんか?」

「ああ、そうだな」


 他の人たちの移動に混ざって俺たちはそのカフェへと向かおうとした。

 その直後、妙な気配を感じると同時に少し離れた場所で爆発音が聞こえた。


「っ!」


 周囲の人たちは軍関係者が多いということもあっていたって冷静ということもあるが、次第にざわめき始める。

 リーリア曰く、このヴェルガーという国は周りが海で囲まれているとのことで魔族の侵攻が少ない。そのため平和な場所で休暇を取りたいと思う軍関係者も多いそうだ。


「何が起きたのでしょうか」

「わからないな。だが、異常事態なのには変わりないようだな」

「確認に向かいますか?」

「ああ」


 この国の雰囲気を味わう間もなく何かの事件に巻き込まれてしまったようだ。まぁ剣聖という称号を持っていることもあり、何もしないわけにはいかないだろうな。


「カフェでゆっくりしたかったところですが、近くで事件が起きていては休むこともできませんからね」

「そうだな」


 リーリアは小さくため息をついた。

 それから俺たちはその爆発のあった場所へと向かうことにした。

こんにちは、結坂有です。


新しい登場人物、クレア・シーゼレスは今後エレインとどのような関係になっていくのでしょうか。そして彼女は無事に聖剣使いになれるのでしょうか。

これからの彼女の活躍が気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



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