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国外に出るということ

 俺、エレインは朝食をみんなと食べていた。

 今日はアレクたちも一緒に食べることにしたのだ。理由としてはこれからの活動をどうするのかを軽く話したかったからだ。


「それで? エレインはこれからどうしたいとかあるの?」


 リーリアとユレイナが作ってくれた料理をミリシアは食べながらそう質問してきた。

 確かに俺自身はこれからどうしたいか考えている。


「とりあえずはこの国の邪魔をしている人たちを止めなければいけないな」

「……止めるって具体的には?」

「そこまでは考えれていないが、これ以上被害が大きくなればこの国の自衛力は壊滅的になる」


 どういった方法で止めるのかはまだわからない。しかし、このまま何もしないでいると絶対に犠牲者は増えてくることだろう。今回は怪我人だけでよかったものの本当に死者が出てしまったら取り返しのつかないことになってしまう。

 その前に問題を引き起こしている連中をなんとかしてでも止めなければいけないのだ。


「確かにエレインの言う通りだね」


 アレクもそう言って俺の考えに賛同してくれる。


「でも、どうやって止めるのよ。まだ黒幕の正体は掴めていないわ」


 すると、セシルはそう質問してくる。


「誰かまでは分かっていないが、どこの国の連中かはわかっている」


 ヴェルガーという広大な国から刺客を送り込んできているというのはすでにわかっていることだ。そのことはアレイシアから聞いている。


「黒幕はヴェルガーの人で間違いないわ。それに政府の人間だということもね」

「そこまで分かっているのなら議会側でどうにかならないの?」


 確かに議会で何か訴えれば、向こうで処理してくれそうなものだがアレイシアやユレイナの表情を見る限りそう簡単なことではなさそうだ。


「……交渉というのはお互いに利益がなければいけないの。利害が一致してやっと成立する」

「加えて私たちエルラトラムはヴェルガーとまだ戦争状態となっています。話し合いだけで解決するとは思えません」


 そういったことは剣術学院の授業でも軽く触れていた。もちろん聖剣使いが相手するのは魔族が主体だ。だが、必ずしも敵が魔族だというわけでもない。

 国同士のやりとりで何か問題が起きれば、その時は戦争ということに繋がることだってあるだろう。


「ったくよ。国同士ってのはややこしいな」


 二人の説明にレイはめんどくさそうな表情でそういった。

 確かに国同士のやりとりは本当にややこしい問題ではあるだろうな。とは言っても、このまま問題を放置することはできない。


「そのために小さき盾という存在を使いたいところなのだけど、私たちとしてもまだ大きな行動に出たくないのよ」

「どういうことかな?」

「えっとね。小さき盾は議会の管轄している部隊。そんな部隊が戦争状態の国に入国することなんてできないってことよ」


 当然のことだろう。戦争という状態で敵国の部隊を招き入れるなんてことは絶対にしないはずだ。


「だから、聖騎士団のような議会の管轄にない人間が必要なの。エレインのような人がね」

「なるほどな。そう簡単なことじゃねぇってことか」

「あ、エレインに行って欲しいなんて言ってないからね?」


 何かを確認するかのようにアレイシアは俺の方を向いてそう言った。


「いや、俺としてはそういった役割を担っても問題ないと思っている」

「え?」

「俺の剣聖という称号は聖騎士団のようなものだ。ただ議会がその実力を認めただけというだけで議会の駒ではない」


 よくよく考えてみれば、俺はかなり特殊な立場にいることは間違いない。聖騎士団は団体として行動するのに対して俺は単独でも行動できるのだ。

 つまりは俺の意志で自由に動くことができるということでもある。


「ですが、エレイン様。向かう場所は敵国です。戦争状態なのです。危険すぎるのではないですか?」


 リーリアがそう質問してくる。


「ああ、危険なのには変わりないが、やらないといけないことだ」

「……エレイン様が巻き込まれるのは納得できません」

「リーリアも一緒ならどうなんだ?」

「え、私ですか?」

「議会の人間ではないのだろう?」


 諜報部隊に属していると言っていたが、その諜報部隊は議会が認める第三の組織といったところだ。議会の人間ではないだろう。

 それにそういった諜報部隊の存在はまだ他国に知られていないようだしな。


「そう、ですね。確かに私も行くことはできると思います」

「ユレイナ、すぐに手配できるかしら」

「可能です。もちろん、議会の方にもすぐに連絡します」


 すると、そう言ってユレイナは食器を片付けて奥の部屋へと向かった。


「もう少し考えてからの方がいいと思うのだけど……」

「ここで考えても何も解決しないからな」


 そう言って俺の方を向いたミリシアは俺の顔を見るなりすぐに顔を赤くした。昨日の風呂場でのことをまだ引き摺っているのだろうか。

 まぁどちらにしろ、ここで考えているだけでは何も解決しない。


「……そう、だけども」

「ミリシアはエレインのことが心配なだけだよ」

「へっ、昨日ミリシアがあんなにも取り乱してたのは初めて見たぜ」

「そ、それは関係ないでしょっ?」


 なるほど、確かに俺のことを好意的に思ってくれているのだ。危険な場所に向かうというのに心配しないわけがないか。


「ミリシア、俺は大丈夫だから心配するな」

「……確証がない」

「神と戦ったことがある。この世界に神より強い人間がいるとは思えない」


 邪神と戦い無事に勝利したという実績は他にないだろう。


「もう、そこまで言うのなら絶対に生きて帰って」

「ああ、当然だ」


 俺がそう言うと顔をまた赤くして視線を逸らした。


「それなら、私も同行してもいいかしら」


 すると、セシルが名乗り出た。


「え?」

「私はまだどこにも属していない人間、それなら問題ないでしょ」


 確かに彼女は学院生というだけでどこの部隊にも属していない。それに若いとは言っても聖騎士団とともに戦うことのできる人材であるのも確かだ。十分に即戦力になる上に都合のいい存在でもある。


「……いや、今回は俺とリーリアだけで向かう」


 人手が増えるのは好都合ではある。しかし、彼女にはこの国でやって欲しいことがある。


「どうして?」

「ミーナのこともあるしな。それにセシルは小さき盾とともに訓練をしてもっと強くなってほしい」

「私じゃ、まだ力不足ってこと?」

「そういうことではない。今回の任務は少数で行く必要があるってことだ。あまり多人数で行くと悪い意味で目立ってしまうからな」

「そう、それなら仕方ないわね」


 そういうと彼女は納得したようでゆっくりと姿勢を戻した。


「では、エレイン様。早速準備の方を始めます」


 全員が食べ終えたのを確認したリーリアは食器を全て片付けて自室の方へと向かった。


「前にも言ったが、ナリアもセシルと共に訓練を続けてくれるか?」

「え? うん。わかったわ」


 急に話しかけられて驚いたのだろうか。まぁ彼女にはもっと強くなってもらう必要があるからな。


「それにカイン。ユウナとミーナのことは任せた」

「ええ、任せて」


 治療の方も彼女に任せていれば全く問題ないだろう。

 これからどうなるのかはわからないが、俺も真剣にやらなければいけないことだろう。それにしてもアレイシアがこんなにもあっさり俺のやりたいことを認めてくれるのは意外だった。

 危険なことから遠ざけたいと思っているはずだ。それなのにどうしてだろうか。

 まぁそのことについては今聞くよりも後で聞けばいい話ではあるか。

こんにちは、結坂有です。


次回からはまた違った舞台となりそうです。

そして、これからはエルラトラムでの話とヴェルガーでの話で交差するような展開となります。


それでは次回もお楽しみに。



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