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本当の任務

 俺、エレインはアレクと共にシェルターの方へと向かった。

 シェルターはすでに閉まっており、外には警備隊の人たちが強化扉を守るように立っている。


「今、シェルターは開けられそうかな?」


 到着すると同時にアレクが警備隊に向かってそういった。


「シェルターは内側からしか開けられません」


 警備隊の人はそう言って強化扉の方を指さした。

 どうやらシェルターは一度施錠されると内側からしか開けられないということのようだ。

 確かに安全性を高めるためなのだろう。


「アレク、強化扉は二重になっていると言っていたな」

「うん。そうだね。もしこの中で何かが起こっていたとしても僕たちはわからない」

「どういうことですか?」


 何も知らない警備隊の人たちは俺たちにそう聞いてくる。


「可能性だけなのだが、議会の職員で裏切り者がいるかもしれないからな」

「裏切り者、ですか」

「怪しいことはあったか?」

「今までの訓練では私たち警備隊は議員と同じくシェルター内に数人配置するはずなのですが……」

「議員の方に外で警備しろと言われました」


 今回に限ってかは知らないが、警備隊の中でも少し変わったことがあったようだ。もしかすると、本当にシェルター内で反逆行為をしようとしているのだろうか。そうだとすれば、今頃内側はどうなっているのかはわからない。


「アレク、少し離れてくれないか」

「な、何をするのですか?」


 警備隊の人が警戒を始める。


「シェルターを破る」

「あ、安全は確保したのですか?」

「外の連中はブラドがなんとかしてくれたはずだ。脅威となるものはもうない」


 そう言って俺は魔剣を引き抜いて構える。

 すると、魔剣に埋め込まれている歯車が急速に回転し始めて火花が飛び散る。


「離れた方がいいと思うよ」


 アレクがそういうと一斉に警備隊の人たちがシェルターから離れ始めた。俺は扉だけに集中すると、”加速”の能力を使って強烈な斬撃を浴びせる。


 ガゴォン!


 空気が震えるほどの強い重低音が響き渡り、鉄粉が赤い火花となって周囲を舞っている。


「強化扉が……」


 粉塵が晴れるとすぐにシェルターの内部が見える。薄暗い中で銃のようなものを俺の方へと向けている人物がいた。


「嘘だろっ!」

「エレイン! 逃げてっ」


 バンッと鈍い銃声が聞こえたと同時に鉄球が銃口から放たれる。

 その程度の攻撃はこの魔剣の前では全くの無意味だ。アンドレイアの加速、クロノスの減速をうまく組み合わせれば簡単に対処することができるのだ。

 そして、時間が遅くなっている中、俺はシェルター内へと視線を向ける。アレイシアのメイドであるユレイナが一人の男に苦戦しているようだ。さらに奥の方には白衣を着た医師のような人が暴れていた。


 カキュンッ!


 飛んでくる高温の鉄球を俺は魔剣を使って弾き飛ばす。弾き飛ばした相手はユレイナと闘っている相手だ。


「うがっ!」


 死なせないよう足をに向けて弾き飛ばすとその男は一気に体勢を崩した。

 その銃声を皮切りにアレクが駆け出す。相手はどうやら医務室から出てきたであろう医師のようだ。

 もちろん、次に俺が相手をするのはアレイシアの目の前にいる男だろう。


「クソっ! どうして……」


 医師の男はアレクを見るなり急に怯え始めた。ものすごい形相で迫ってきているのだからさぞ怖いことだろう。


「くっ、議長だけでもっ!」


 銃を向けていた男は隠し持っていたであろうナイフを取り出すとそれをアレイシアへと投げつけようとする。


「っ!」

「ふっ」


 神速で聖剣イレイラを抜刀し、剣撃を飛ばした。


「あがっ!」


 投げようとしていた腕を俺は聖剣の能力を使って斬り落とした。

 イレイラの能力は”追加”と呼ばれるもので繰り出した剣撃を自在に操ることができるのだ。

 そして、ちょうどアレクも暴れていた医師も無事に取り押さえることに成功したようだ。


「何があったのですかっ」


 すると、シェルターの外からフィレスが走ってきた。

 強化扉を断ち斬った爆音でここに駆けつけてきたのだろう。


「議員用シェルターで反逆行為が起きていましたのを止めただけです」

「……強化扉はどうしたの?」

「斬った」


 俺は冷静にそういうと彼女は疑惑の目を向けてきた。しかし、彼女もレイという常人離れしている人のことをよく知っているため、すぐに呆れたようにため息をついた。


「あなたたち、本当に何者なのですか……」

「別に俺の力で斬ったわけではないからな。この剣の力が大きい」


 そう言って俺は後ろの腰に携えている魔剣を見せながらそういった。


「……そんな剣を扱う技術がすごいと言っているのですよ。とりあえず、反逆行為をしていたのは誰ですか?」


 それからフィレスの指示で警備隊の人たちが動き、裏切り者である三人を拘束することに成功した。


「腕を斬られた人以外は無事なようだね」


 アレクが他の議員を一瞥しながらそう言った。

 少しでも遅かったらアレイシアが撃たれていたかもしれない。すぐにここまで駆けつけることができたのは幸運だったな。


「エレイン、助けに来てくれてありがとう」


 ゆっくりと杖を突きながら立ち上がった彼女はすぐに俺のところへと歩いてきた。メイドであるユレイナはフィレスたちと共に拘束した人たちを地下牢へと連れて行っていた。

 遠くで話しているのを聞いたところ、外にいた百人近くの集団は一時的に聖騎士団の特殊収容所へと移送されるそうだ。確かにあれほどの人数をここの地下で収容するのは不可能だからな。


「無理に立たなくていい」

「怪我はしてないから大丈夫よ」

「それでも精神的にはかなり疲れたはずだ」


 とは言っても彼女は聖騎士団として死戦をくぐり抜けたことのある人間だ。あの程度のことで精神を病むようなことはないだろう。


「大丈夫だから。私はエレインのお義姉(ねえ)さんなのよ?」

「そうだな」

「じゃ、ここのことはフィレスたちに任せるとして。私たちは帰ろっか」


 裏切った彼らに色々と聞きたいことがあるのだが、それも明日で問題はないだろう。外で他を警備しているであろうナリアも休ませなければいけないからな。


「そうだな」


 それからしばらく警備隊の人たちと話し合いをしてからナリアを連れて家に帰ることにした。

 ナリアはかなり疲れていた様子で他に議会内に誰かが侵入していないか走り回っていたそうだ。まぁ誰もいなかったのは幸いだったがな。

 とりあえず、剣聖である俺の任務は黒幕の捜索が先だろう。そのためにはこの国を出て外国に足を運ぶことになるが、その時はなんとかしてアレイシアを説得させるとしようか。

こんにちは、結坂有です。


エレインの強さは本物のようです。アレクももちろん強いのですが、彼はまた別格ですね。

そして、これからの展開は大きく変わりそうです。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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