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戦いのセオリー

 俺、エレインはナリアとリーリアを連れて西門の方へと走って向かった。

 警報を鳴らしてから数分経ったのだが、すでに誰かが侵入してきている可能性がある。まぁ多くても四、五人程度だろう。それぐらいならアレクや他の警備隊でも対処できるかもしれない。

 俺はそのような人たちではなく、まだ議会に侵入してきていない外で待機している人たちが気になったのだ。

 まさかとは思うが、これほどの軍勢で議会を攻撃しようとしているのは考えられない。この議会はこの国のほぼ中央に位置している。そんな場所に大軍を移動させるのはどう考えても不自然だ。とは言っても実際に取り囲まれているのは間違いない。この気配はどう考えても魔族とはまた違った悪意と殺意に満ち溢れている。


「エレイン様、本当に敵がいるのですか?」

「ああ、百人程度はいるかもしれないな」

「百人? そんな数をどうやって?」

「わからない。だが、もう西門に集結している頃だろう」


 そういってみるが二人は首を傾げたままだった。

 確かに実害が出ているわけでもないからな。

 そしてしばらく走っていると俺のちょうど真上で窓ガラスが割れる音が聞こえた。


「っ!」

「本当に攻撃してきたってわけ?」

「そうだろうな」


 上階の廊下にいるのは三人、おそらくはアレイシアたちだろう。そしてそれを挟み込むように四人が侵入してきたようだ。

 読みは合っていたとはいえ、好ましい状況ではないか。


「エレイン様、どうしますか?」

「アレイシアのことはアレクに任せる。俺たちは西門に向かうべきだな」


 今から上階に行って対処したとしても門が瓦解してしまっては意味がない。魔族侵攻によりこの国の防衛力は全体的に低徊している中で議会が崩壊してはこの国が滅亡してしまうことだってあり得るだろう。

 侵入してきた四人の実力はわからないが、アレクの強さなら全く問題ないはずだ。


「わかりました。アレクさんを信じます」


 かなり心配している様子のリーリアではあるが、俺の判断を信じてくれたようだ。

 それから西門の方へと走っていく。それと同時に警備隊のざわめきも増していく。


「なんなんだ、あいつら……」

「暗くて見えないけど、武器を持っているわよね?」

「どちらにしろ、ここを通してはいけないんだ。気を緩めるなよ」


 やはり感じていた気配は正しかったようだ。

 西門を警備している人たちが奥に立っている集団の方を見つめていた。


「何があったの?」


 すると、ナリアが警備隊の人に話しかけた。


「ああ、怪しい人影が出てきてな」

「怪しい人影?」

「武装しているようにも見えるがな。まぁ害のない連中なら問題ないんだが……」


 警備隊の一人がそうナリアの質問に答えているとリーリアが前に出て話しかける。


「先ほど、廊下の窓が破られて何人かが侵入してきたようです」

「また侵入したってのか?」

「はい。あの集団ももしかするとその人たちなのではないでしょうか」

「もしそうだとしても、俺たちは議会内の警備しかできない」


 侵入してきた相手に対して強い力を発揮できるが、議会の外にいる連中は対処することができないということだろう。

 明確な攻撃の意思が見られないのであれば、議会側の人間は動けないということだ。


「なら、警備隊ではない俺が前に出るしかないな」

「見たところ百人近くはいるんだぞ? 一人二人が突撃した程度で追い払えるわけもないだろ」

「議長から”剣聖”として称号を与えられた人間だ。百人程度全く問題ない」


 そう言ってみるが、目の前の警備隊の人は信用しきれていないようだ。

 確かに百人を同時に相手することがどれだけ無謀だと実感しているからだ。


「……俺たちは議会の警備員、議会に明らかな攻撃を仕掛けてこない間は対処することができない。それでもいいのか?」

「ああ、全く問題ない」


 援護がなくてもあの程度の数なら俺一人で平気だ。


「エレイン様、私はお供します」

「無理そうなら逃げると約束できるか?」

「はいっ」


 そうは返事するが、もし俺が危機的状況に陥った時は命懸けで俺の元に駆けつけてくることだろうがな。


「エレイン、本当に行くの?」

「当たり前だ」

「私も付いていきたいところだけど、警備隊だから……」

「気にすることはない。あの集団の他にも侵入してくる奴はいるかもしれないからな。警備隊の人たちと共に議会内を警備してほしい」


 俺がそう言うとナリアは大きく頷いた。

 まだ彼女も俺のことが心配なようだ。病院での出来事から俺に対する視線が変わったように感じたがそれはどうやら勘違いではないようだ。

 おそらく彼女は俺の実力に対してかなり信用している証なのだろうか。

 まぁどちらにしろ、俺がするべきことはただ一つ。あの集団を倒すことのみだ。

 そして、俺は聖剣イレイラを引き抜いて走り出す。リーリアもしっかりと付いて来てくれる。

 西門を抜けてしばらく走り続けると集団も俺のことを警戒し始めた。議会から突然二人が飛び出してきたら警戒もすることだろう。

 しかし、その程度の薄い警戒で大丈夫なのだろうか。いざとなれば、一瞬にして全員両断することだってできる。


「ふっ」


 集団の一人が一気に俺へと攻撃を仕掛けてくる。

 それを回避するとまた別の人が攻撃してくる。連携はうまくできているようだが、その程度で俺の進行を止めることはできない。

 イレイラを瞬時に回転させ、逆手に持ち帰ると相手の腹部へと浅く斬り込む。それでも人間にとっては重傷だ。


「うぁがっ!」

「は、速いっ!」


 当然ながら、俺の動きに反応できる人はいないようだな。


「リーリア、大丈夫そうか?」

「大丈夫です」


 彼女もすでに戦っているようで二体一となっている。

 しかし、彼女の持っている魔剣は相手の精神を支配することができる。心の弱い人が彼女に勝つことはできない。


「はっ」


 美しく相手の攻撃を回避する。

 すでに彼らの心は見抜かれているといったところだろう。

 二人の攻撃を回避したリーリアはそのまま強烈な一撃を彼らに浴びせる。当然ながら、峰打ちとなっているようだが、それでも肋骨は折れていることだろう。


「こ、こいつら普通じゃねぇ!」

「今更だな」


 集団に単騎で突撃するのは全く普通ではないだろう。すでに懐に入り込んでいるのだ。このまま押し切れば相手も撤退するはずだ。

 ものの数分で半数近くは倒すことができた。もちろんだが、誰も殺してはいない。重傷は負っているものの命を落とすほどの怪我ではない。


「か、影がっ!」


 少し離れた場所にいた男がそう言った。

 視線を後ろに向けるとそこにはブラドが放ったであろう分身が全速力で走ってきた。それと同時にフィレスも加勢しに来てくれたようだ。


「くっ! ここは撤退だ!」

「このままでは全滅するっ!」


 今の状況が不利だとやっと気付いたのか奥の方で指揮していた男がそう叫び始める。

 すると、集団は一斉に後ろを向いて走り出した。


「逃がすと思うか?」


 しかし、彼らの背後にはブラドがいた。


「なっ!」

「見たところ、貴様らは四〇人程度だ。俺の分身はあと千体は放てる」

「っ!」


 一瞬にして出現したブラドの分身に囲まれた彼らはなすすべなく降参した。

 

こんにちは、結坂有です。


まだまだ戦闘が続きます。

果たして議会を攻撃してきた人たちは誰から命令されたのでしょうか。

そして、黒幕は強いのか……気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



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