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権力は狙われる

 僕、アレクは議長であるアレイシアの護衛も兼ねて、エレインたちが戻ってくるのを待っていた。

 すぐに戻ってくるわけではないだろうが、それでも彼女の仕事が終わる頃には帰ってくることだろう。


「アレクさん」


 すると、ユレイナが話しかけてきてくれた。


「何かな」

「エレイン様とは仲が良いのですか?」


 思い返してみれば、彼女とはそこまで話したことがなかった。僕とエレインとの関係についてはそこまで聞いたことがなかったのかもしれない。


「そうだね。ともに訓練をしてきた仲だからね」

「訓練、ですか?」

「何年も地下施設で訓練してきたんだ。エレインも僕のことを信頼しているし、僕もエレインのことを信頼しているよ」


 あの地下施設での訓練は常人であれば精神を病んでしまいそうになるものなのかもしれない。

 それでも僕たちがこうして普通に過ごすことができているのはあの地下施設がしっかり管理されていたというものあるだろうが、何よりも僕たちが仲間を信頼していたということが大きいだろう。

 信頼できない人だとしたらきっと僕たちはまともに訓練を全うすることはできなかったはずだ。


「お互い信頼している関係、いい仲間なのですね」

「そうなのかな。信頼はしているとはいえ、エレインの実力がどんなものなのかはわからないんだ」

「どうしてですか?」

「おそらくなんだけど、僕たちはあの地下施設での訓練に必死だったんだと思うんだ。だから、他人の実力まで思考が及ばなかった」


 それが一番大きいだろう。

 いくらエレインが実力を隠していたとは言っても探ろうとすれば理解できていたのかもしれない。

 実際に訓練の様子をしっかりと分析すれば、見えてきたはずだ。


「まぁ今となっては他人の実力なんてどうでもいいものだと思ってるけどね」

「ふふっ、それはアレクさんたちが強いからですよ」

「そうなのかもしれないね」


 自分の実力が高いものなのかどうかは関係ない。どのような状況下でも自分の本領を発揮することが重要なのだ。


「終わったぁ!」


 そんなことを話しているとアレイシアが大きく背伸びをしてそういった。


「お疲れ様です。アレイシア様」


 ユレイナはアレイシアの方へと歩いて行くと書類の束をまとめ始めた。


「これの確認なら明日でもよかったと思うけど?」

「……一応期日は今日までですからね。遅れてばかりだと仕事をしていないと勘違いされてしまいます」

「でもしっかりと議案とか提出しているんだけどなぁ」


 そう言ってアレイシアは肩をほぐすように回すとゆっくりと僕の方を向いた。


「エレインはまだかな?」


 議長室の扉は蹴り飛ばされてしまって開いたままとなっている。

 しかし、廊下に誰かがいるような気配もないことからまだ戻ってきていないようだ。


「そうだね。ナリアを探しているんじゃないかな」

「ふーん、そっか」


 彼女がぐったりと背もたれにもたれかかってそういった。

 そしてそれと同時に大きな警報のような音が鳴り響いた。


「え?」

「アレイシア様、避難警報です」

「避難? 攻撃でもあったの?」

「わかりません」


 自分の把握できる範囲では特に妙な気配はない。しかし、誰かが警報を鳴らしたというのは事実だ。

 何者かが議会に攻撃を仕掛けてきているのだろうか。


「とりあえずは地下のシェルターまで行きましょう」


 そう言ってユレイナは扉の外を確認する。

 安全を確認した彼女は足が不自由なアレイシアを支えながらゆっくりと移動を始めた。


「僕が護衛するよ」

「ええ、助かるわ」


 まだ目に見えて攻撃が行われていないようだ。早めにこちらが対応できるように誰かが警報を鳴らしたようだ。

 もしかするとエレインが鳴らしたのだろうか。

 誰であれ、今は議長であるアレイシアを守ることが僕の役目だ。

 それから廊下をゆっくりと確実に進んでいく。

 妙な気配は特にないのだが、僕が把握できる範囲外からの攻撃があるのかもしれない。

 例えば、この長い廊下の窓から……。


 パリンッ!


 窓を警戒すると同時に窓ガラスが飛び散る。


「っ!」


 僕は瞬時に剣を引き抜いてアレイシアを守るように立つ。

 四人の男が窓から廊下に侵入してきたのだ。それも僕たちを挟み込むようにだ

 一本道であるこの廊下を前後から挟み込んでいる。こうしてすぐに移動したのが悪かったのか、ちょうど狙われてしまったということだろう。


「ユレイナ、戦うことはできるのかな」

「できますっ」

「なら十秒だけ後ろは任せたよ」

「はいっ」


 僕はそういうと同時に床を蹴った。

 目の前の男二人は剣を持っている。一人は長剣、一人は短剣だ。短いとは言っても腕の長さほどはある。

 もちろん、相手は殺さない。だが、確実に相手を拘束することができるとも限らない。

 場合によっては大怪我を与えるという選択肢も取らざるを得ないだろう。

 絶対にアレイシアを守るのだ。


「ふっ」


 僕の聖剣の能力を使えば一瞬で相手を吹き飛ばすことができるだろう。


 キャリンッ!


 強烈な金属音が鳴り響くとともに短剣を弾き飛ばす。

 そしてすぐに長剣の男も俺に対して攻撃を仕掛けてくるが、それの攻撃も稚拙なものでそれを軽くいなすと男の胸部を力強く蹴り飛ばす。


「はっ!」


 背後から攻め込んできた方へと視線を移すとユレイナがなんとか二人の攻撃を防いでいた。

 僕は男の一人が持っていた長剣を義肢の腕で持ち上げる。


「アレイシアさん、伏せてっ」

「うんっ」


 アレイシアが伏せると同時に僕は長剣の柄を前にして男に投げ飛ばした。


「うがっ!」


 超速で飛んできた剣の持ち手に対処することができず、顔面に強打する。

 そして、もう一人の男を僕は義肢の足で蹴り倒した。

 当然ながら、この足と腕には痛覚がない上に頑丈に作られている。武器のように扱ったとしても壊れることはないのだ。


「アレクさん、助かりました」

「これぐらいは問題ないよ。先に進もうか」

「はいっ」


 ユレイナは剣を納めてアレイシアを支える。

 どこからやってきたのかはわからないが、それなりに動ける人間がここまでたどり着いたのは不自然だ。

 アレイシアとユレイナは僕が守るから大丈夫だが、外にいるであろうエレインたちの方が気になる。どれほどの数がこの議会に攻撃してきているのかはわからないからだ。

 とりあえず、僕がするべきことはアレイシアを守ることだ。あとはエレインたちに任せるしかないだろう。

こんにちは、結坂有です。


次回も戦闘は続きます。

エレインももちろんですが、ナリアも頑張りそうですのでお楽しみに!


評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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