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不穏な空気感

 俺、エレインは議会で二人を拘束していた。

 もちろん、アレクの協力もあってなのだが、それでもこの人たちがどうしてこの議会を攻撃してきたのかがわからない。

 今や議会は市民の安全のために足善を尽くしていると言える。特に議会の評判が落ちているという話は商店街を歩いていても聞いたことがないのだ。つまりは市民や兵士たちの反発ではないのだろう。


「エレイン、この人たちはどうするのかな?」

「……俺は議会の人間ではないからな」

「アレイシア様、ブラドさんが地下牢を見つけたと言っていましたよね。その場所を使ってはどうでしょうか」

「そうね。あの場所なら大丈夫だと思うわ」


 どうやらこの議会の地下牢を使うのだそうだ。

 知っている場所ではないのかもしれないが、議会にはブラドがいる。まぁ彼がいるのならその地下牢でも全く問題ないか。

 それから警備隊の人たちが走ってきて気絶した二人を地下牢の方へと連れて行った。


「それにしても急に襲撃してくるなんてね」


 すると、アレクが倒れてしまった上着掛けを元に戻しながらそういった。

 確かに彼らが襲いかかってくるにしては急過ぎる気がする。何か前触れのようなものでもあったのだろうか。


「アレイシアの方は何か変わったことはなかったか?」

「えっと、小さき盾の暗殺を指示するような手紙があったのとそれを届けてくれた人が反逆行為をしたぐらいかな」

「そうですね。それ以外はいつも通りでした」


 アレイシアの言葉にユレイナもそう肯定した。

 それならその手紙を届けた人物が怪しいということにもなるが、もしも大きな組織が絡んでいるということも考えられるな。


「裏で何か大きなことが起き始めているのかもしれないが、今の僕たちにはそれを探ることができないからね」

「ああ、だがそこまで気にするようなことではない」

「僕たちが議会を守っている、そう簡単に議会は崩壊しないよ」


 アレクやレイが小さき盾は議会の持つ最後の切り札として活動している以上、この議会が外部の攻撃などで崩れることは滅多にないことだろう。相手が神でない限りは問題なく戦えることはずだ。


「ええ、頼りにしているわ」


 アレイシアも小さき盾であるアレクに信頼の目を向けている。

 俺と同じ仲間ということで信頼しているわけではない。実際に彼らの動きや活動を目で見て確信している、そういった目をしている。


「それではアレイシア様、残りの書類も早く終わらせましょう」

「……明日じゃダメなのかしら」

「ダメです」


 どうやら彼女には彼女の仕事があるようだ。

 このまま議長室にいてもいいのだが、議会の他の様子も気になる。アレクをこの部屋に残しておくか。


「エレイン様、どこかに行かれるのですか?」

「他のところの様子も見ておきたいからな。アレク、ここを任せてもいいか?」

「わかった。アレイシアの安全は僕が保証するよ」

「私はお供してもいいのですか?」

「それは構わない」


 リーリアが俺のメイドとして一緒に来てくれる分には全く問題はない。むしろ好都合とだと言える。なぜなら、彼女は公正騎士という役職を持っていることもあり、議員が何か絡んできたとしても彼女なら簡単に対処することができるからだ。

 まぁそういった便利だという以前に一緒にいた方が何かと気が楽というのもある。理屈はよくわからないが、ようするに信頼できる仲間だということだろう。


「エレイン、ちょっと待って」


 そう踵を返して議長室を後にしようとすると後ろからアレイシアが引き止めた。


「議会を見て回るのならナリアも連れてきてくれるかしら。彼女、ずっとここの警備をしてくれていたの」


 なるほど、数日間ずっと働き詰めだったということか。それは確かに疲労の方が心配になるな。


「家に連れて行くにはいい機会だな」

「うん。お願いね。私もすぐに仕事、終わらせるから」


 ユウナは帝国で俺と同じように厳しい訓練を耐え抜いてきたという実績がある。数日もの間、寝ずに動くことぐらい全く問題ないのかもしれない。

 しかし、ナリアは特殊な訓練を受けてきたというわけでもないからな。ユウナほど働き過ぎているわけではないにしろ、疲労がかなり溜まっているというのは言うまでもないか。

 それから議会の内部をリーリアとともに歩いて回った。

 ちょうど影になって見えにくくなっている場所も注意しながら散策していたのだが、特に変わった様子はなかった。

 議会に侵入してきたのはあの二人だけだったのだろうか。


「エレイン様、こうしてじっくり議会を回ってみると案外侵入するのは容易そうですね」

「ああ、月明かりが届かない場所もあることだしな」


 時刻によっては建物の影に沿って議会の裏側に入ることもできそうだったからな。そういった点では厳密に計画を立てていれば簡単に侵入することができるだろう。

 ただ、そこで疑問に思ったのはそのような弱点に気づけるのは内部から外を見た時だけだ。

 外部から観察しただけではそういった死角がわからないはずだ。


「……あれは、ナリアさんですね」


 そう言ってリーリアが窓の外を指さしてそういった。


「そうだな」


 どうやら彼女は東門の警備を担当しているようだ。

 東門は正門と同じぐらいに巨大な門で、主に物資などの補給を行なっているそうだ。物資などを積んだ馬車が出入りするようで当然ながら警備も強固になる場所でもある。

 ナリアを呼びに階段を降りて、東門の方へと向かう。

 すると、すぐに彼女も俺たちに気が付いたようで同じ警備隊の人に一声かけて俺たちのところへと走ってきた。


「議長室に侵入者が現れたの?」


 どうやら彼女のところにもすぐに情報が回っていたようだ。


「そうだな。議長の暗殺を狙っていたのかもしれないがな」

「暗殺? 大丈夫だったの?」

「問題はない。俺とアレクで制圧した」


 暗殺とは言っても疑問は残るがな。明らかな殺意がなかったところを考えると誘拐や監禁をして何か取引でもしようとしていたのかもしれない。とは言ってもそれを調べるのはブラドやフィレスの担当だ。


「そう、私のところから侵入したわけではないみたいね」

「おそらくだが、西門の死角になっている場所から侵入したのだろうな」

「確かにあの場所、夜になると視界が悪いからね……」


 数日間も警備をしていれば、そういった場所にも気付いてくることだろう。ユウナもそういった点を探すのは得意なはずだからな。


「ユウナの分も頑張らないといけないわね」


 そう張り切る彼女ではあるが、流石に疲労が溜まっているはずだ。


「いや、ナリアには休憩してもらうつもりだ。連日の警備で疲れも溜まっていることだろう」

「まだできるわよ」

「一つ言っておくが、俺たちの基準に合わせようとするな」


 俺は彼女の身を案じてそう言った。

 彼女はユウナと同じく小さき盾の一員ということになっている。それはミリシアやアレクと同格だということでもある。

 もちろん、それに見合う一員として頑張ろうとしているのは先の病院での一件から見て取れる。そういった一面は長所でもあると同時に短所でもある。みんなの実力に合わせようとして結果的に無理をしてしまう。


「……わかったわ」

「それならいい」


 それからリーリアの説明で他の警備隊の人に事情を説明してナリアを警備から外してもらうことにした。

 議長命令ということもあるが、彼女が連日警備をしていたというのは周知の事実だからな。その辺りは快く了承してくれた。


「ごめん、なんか色々と迷惑かけたみたいで」

「気にするな。議会に来たついでだからな」


 東門の警備から外れたナリアは俺たちと一緒に議長室へと向かっている。ちょうどアレイシアが急いで仕事を終わらせている頃だろう。

 これならみんな一緒に家に帰ることもできそうだ。

 しかし、そう思ったのも束の間ですぐに悪意に満ちた強烈な気配が俺の五感を刺激する。


「っ!」

「どうかしましたか?」


 正確な数まではわからないが、明らかに強い意志で議会を攻撃しようとしている人がいる。とはいえ、まだ議会の内部には侵入していない。


「リーリア、警報を鳴らしてくれるか」

「……はいっ」


 俺の言葉に危機感を覚えたのかリーリアも理由を聞かずにすぐ実行してくれた。

 そして、議会に警報が鳴り響いた。

こんにちは、結坂有です。


次回から激しい戦闘が連続して続く予定です。

これから戦闘が多くなっていきますので、お楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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