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見えない黒幕

 俺、エレインは家への帰路へとついていた。

 ナリアは議会の方へと戻っていった。感情的に不安定ではあったものの色々と議会に報告したいことがあるようで、ミーナの病室を出た後すぐに議会の方へと向かった。

 あれからミーナと少し話をしたのだが、彼女はあのままでも自分で自分の道を切り開くことができることだろう。まだ彼女は無自覚ではあるものの、すでに腕の感覚を取り戻しつつあるようだからな。

 自分のために自分の道を拓こうとしているミーナに対して俺が横から何かものを言う権利はない。


「まぁあの調子だとエレインの言うようにミーナは自分の道を正直に突き進むのかもしれないわね」


 帰路を辿っているとセシルがそう吐露した。

 その言葉に俺は軽く頷いて見せるとカインの口が開いた。


「彼女自身もまだ踏ん切りがつけていなかったってこと?」

「そんなところだろうな。あと数日もすれば、彼女も退院になる。心の整理が終わればいつも通りの彼女に戻るはずだ」

「そうね。彼女もかなり芯は強い方だからね」


 セシルもミーナのことをよく知っている。

 学院生の頃に俺の知らないところで色々と話をしていたそうだからな。そういうこともあってか、ミーナからはかなり慕われている様子だ。


「エレイン様は本当に色んな人に好かれておられますね」

「そうなのか?」

「そうだと思いますよ?」

「……そういったところは本当に鈍感なのね」


 俺の反応を見てセシルはそう小さくつぶやいた。


 それから俺の家に戻るとすでにアレクたちは家に戻っていたようだ。

 今日は学院生の人と訓練をすると言っていたために少し遅くなると言っていた。日が暮れてまだまもないのに彼らが戻っているのは珍しい。


「エレイン様、すぐにお夕食の準備をいたします」

「ああ、お願いする」


 家に上がるとリーリアがすぐに夕食の準備を始めてくれた。

 俺とセシル、カインはそのままリビングへと向かい、椅子に座ると地下部屋からアレクとミリシアが上がってきた。


「エレイン、帰ってきたのね」

「今帰ってきたところだ」

「あの、ちょっと話があるんだけどいい?」


 そう言ってミリシアとアレクは俺の目の前の椅子へと座った。

 当然ながら、真剣な話をするようで二人の表情は堅いままだ。


「話ってのは?」

「えっと、今日学院が襲撃を受けたの」

「またか」


 そういえば、以前にも学院が襲撃されたことがあった。あの時は色々とややこしい事情が絡んでいたのだが、今回も同じようなことなのだろうか。


「前回とは少し違うの」

「どうやら僕たちを暗殺しようと企んでいる組織がいるようなんだ」


 すると、アレクがミリシアの言葉に続けてそう言った。

 俺や小さき盾を魔族の手先などと考えている人がまだいるということだろうか。それともまた別の事情なのだろうか。

 その辺りはどうでもいいことなのだが、確かにそのような組織がいるのは間違いないだろう。


「そのようだな。実際にユウナが被害に遭った」

「え? 大丈夫なの?」

「激しく出血していたそうだけど、命には別状ないそうよ」


 俺の横に座っているカインがミリシアにそう説明した。


「そう、なのね」

「僕たち以外にも狙われているってことなんだね」

「そうだろうな。バグドール流と名乗っていたそうだが……」

「私たちのところにもバグドール流一派が来ていたわ。多分だけど、誰かが依頼しているのだと思う」


 ミリシアはそう分析するように話す。

 彼女の言うように依頼主である誰かがいるのは間違いないようだ。バグドール流棒術の使い手であるあの男もそのようなことを口走っていたからな。

 それよりも議会の誰かが俺たちに対してそのような刺客を差し向けるというのはないようにも思える。なぜなら議会やその関係者の徳になるようなことをしているのだからな。

 しかし、実際に上に立つ者から俺たちを暗殺するような内容の依頼を出されているというのは確かなようだ。


「ちょうど俺のところにもそのような人が来たな」

「やっぱり……」

「それにしても変だね」


 すると、アレクは顎に手をやりながらそう呟いた。


「どういうことだ?」

「普通なら僕たちを狙う場合、完全に無防備なところを狙うのが普通じゃないかな」


 アレクの言うように無防備な時間というのは人間である以上存在する。前もって観察を繰り返し、そういった弱いタイミングで攻撃するのが暗殺の基本とも言える。

 しかし、彼らはそのような時間を狙っては来なかった。

 それは彼らに明確な殺意がないという証明でもあるだろう。彼らがもし本当に殺したいと思っているのなら、ユウナは即死していたはずだ。


「ああ、その辺りは確かに不自然だな」

「暗殺を得意としているのなら当然よね」


 ミリシアは頷きながらそういった。

 彼女の言うように暗殺を得意としているのなら当然ながら、相手をよく観察してから実行に移すものだ。しかし、彼らは即行した。


「何か事情があったのかもしれないが、その辺りは議会で調査してくれることだろう」

「議会に連れて行ったのかしら?」

「ああ、議会には独自に調査を行う組織があるらしいからな」

「……本当にあるの?」


 ミリシアは少し懐疑的な表情をした。確かに彼女にとっては初耳だろうな。

 俺が説明しようとすると夕食を作り終えたリーリアがリビングへと戻ってきた。


「実在します。私もその部隊に所属している身ですから」


 そう言って彼女は机の上に夕食を並べる。


「えっと、じゃリーリアの他に誰がいるの?」

「私の知っている限りではブラドさんとフィレスさんが所属していると聞いています」

「なら、安心できるか」


 そう言ってミリシアは背もたれにもたれかかる。

 すると、セシルが小さくため息を吐きながら口を開いた。


「結局のところ、私たちが今できることって少ないのね」

「そうかもしれないな」


 彼女の言うように俺たちができることは限られている。もちろん、俺の持っている剣聖の称号を使えば、それなりの融通は効くのかもしれないが、このためだけに色々と酷使するのは良くない。

 それにこの称号は作られたばかりで、まだ俺自身にはあまり信用されていない様子だからな。暗殺を目論むような人はいなくともまだ議会の内部で俺の実力に疑問を持っている人もいるようだ。そういった状況で俺が自由に立ち回れるはずはないだろう。

 すると、リーリアは夕食を机の上に並び終えた。


「……美味しそうね」

「大変申し訳ないのですが、私たちの分だけです」

「あ、うん。わかってるわよ」


 ミリシアはそういうと静かに立ち上がり、アレクと共に地下の部屋へと戻っていった。

 彼女たちの食材はすでに地下部屋にあるため、ここで食べることは少ない。


「では、エレイン様。お夕食にいたしましょう」

「ああ、そうだな」


 それからリーリアが椅子に座り、俺たちは夕食を食べることにしたのであった。

こんにちは、結坂有です。

昨日は更新できませんでした…


エレインたちを攻撃してきたバグドール流の人たちは誰かに依頼されたようです。そして、明確な殺意を持っていないとのことでした。

本当の黒幕とはいったい誰なのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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