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興味を持つということ

 〜エレインがベルゼを倒す数十分前〜


 私、ナリアはブラドの分身に運ばれていくユウナを追いかけてこの医療施設へと走ってきた。血塗れのユウナが運ばれてくるとすぐに医師の人たちが集まって治療室へと運ばれていく。

 もちろん分身は話すことができないため、私が看護師たちに全て事情を話すことにした。

 治療は無事に進行してあのまま議会の医務室で治療を受けるよりもここの方が正解だったようだ。その証拠にここの医師たちは全員聖剣使いで、彼女の大きく開いた傷口を綺麗に塞がっていく。いや、怪我なんてしていなかったかのように回復している。


「っ!」


 その様子を私が見ていると背後から妙な視線を感じた。

 殺意のような危険なものではないのだが、明らかに悪意に満ちたようなそんな嫌な予感がする。身近に魔族がいたということで本能的に私は警戒態勢に入ることにした。

 その視線を探しに私は廊下に出るとそこにはフードを深く被り、杖のような長い棒をもった一人の男性がいた。

 彼は私を一瞬だけ睨みつけると踵を返してそのまま階段の上へと向かっていった。愛想の悪い人なのだろうかと思い、その時の私は無視することにした。


『……よいしょっ』


 すると、急にユウナの剣から一人の女性が出てきた。


「え!」

「っと、あれ? あなたは?」


 その女性は人間のように表情豊かだが、人間ではない別の存在であるかのように重さが感じられない。


「……」


 投げ掛けられた質問に答えられないでいると彼女から自己紹介を始めた。


「ごめん、普通は自分からだったね。私はユウナの魔剣に宿っているライメアよ」

「魔剣?」


 ミリシアから一度だけ説明を受けていたが、まだ詳しくはわかっていない。とは言っても彼女が精霊に準ずる何かであるということはすぐに理解した。

 それでもどうして彼女が現れたのだろうか。


「えっと、ユウナの訓練相手だったのは覚えているのだけど、名前覚えられなくてね」

「ナリアよ。今どういう状況かわかっているの?」


 魔剣の精霊だと名乗る彼女がどうして今になって現れたのかが一番気になる。ユウナの従者ということなら危機的状況に陥った時に現れるはずだ。


「……ユウナに致命的な攻撃を受けた、それだけしかわからないわね」

「主人を守ろうとしなかったの?」

「しようとしたけど、圧縮された強力な何かに押し潰されちゃったのよ」


 精霊である彼女が押し返されるほどの力が加わったというのだろうか。確かにユウナのあの傷は普通の力ではあり得ないものだ。

 確かにそれなら彼女の言い分もわかる。


「そう、それでどうして今なの?」

「今なら人もいないし、大丈夫かなって思っただけよ」


 すぐ後ろは治療室と人がたくさんいる場所なのだが、今私たちがいる場所は誰もいない。先ほどまで扉の横に立っていたブラドの分身もいつの間にか消えている。


「いまいち納得できないけど、そうしとくわ」

「そうしてくれると嬉しいな」


 そうライメアが言った途端、先程の階段からフードを被った男性が走ってきた。

 その男性は棒を巧みに操り攻撃体制に入っている。そして、すぐ後にセシルが彼に対して瞬間的に近づき、攻撃した。

 私はその瞬間、彼が敵だと判断した。


「ライメア、剣の中に入って」

「え?」

「いいから早くっ」


 すると、ライメアは私の言う通りに剣の中へと戻った。

 そして、私は彼がユウナを殺そうとした人だと断定して棒を構えた。


   〜〜〜


 それから色々とあってエレインが男性を倒した。

 ただ、気になったのが彼の棒術だ。彼の体の動かし方、攻撃のタイミング、その他全ての動きが洗練されていたのだ。

 服のせいかはわからないが、体格が大きいゆえにそれらの動作が全てダイナミックに私の脳へと焼き付けていく。


「……エレイン様」


 彼の動きにしばらく見惚れていると、私の後ろからリーリアが彼に呼びかけた。

 すると、彼はゆっくりと振り返って私たちの方へと向いた。

 その時、改めて彼の体の大きさの変化に気がついた。

 先程までは服装のせいかと思っていたのだが、彼の顔を見ると明らかに大人になっていた。


「そのお方をどうするのですか?」

「一旦は拘束する。議会に引き渡して調査してもらう必要があるからな」

「わかりました」


 すると、リーリアは彼をロープで縛って拘束するとすぐに警備室のところへと向かった。

 今思い返してみれば、ここの廊下に誰もいないと言うのは不自然だ。この場所は確かに病室がなく薬品庫などがある場所で普段から患者などがいない。とはいえ、看護師や医師までもが全くいないということはないはずだ。

 全ての治療が医師の持っている聖剣でできるとは限らない。

 そんなことを考えているとセシルが前に出て彼に声をかけた。


「棒術もできたのね」

「基本を知っていただけだ。特に訓練をしたというわけではない」

「訓練なしであんな動きはできないわよ」


 セシルの質問にエレインはそう答えた。

 正直言って剣術の動きと棒術の動きは似て非なるもの。まず重心移動の考え方から少し変わってくるのだ。

 しかし、彼は特に訓練をしたというわけでもなく、ただ基本を知っていただけだと言った。私はその言葉に少し疑問に思った。

 普通であれば、かなり高度な訓練を受けなければあのような動きはできない。私もアレクやミリシアたちが考えてくれた訓練を通してやっと思い通りに動けるようになったのだ。


「エレイン、知識があったとしてもその通りには体は動かないと思うのだけど」


 私の言葉にセシルはうんうんと大きく頷きながらエレインの方を向いた。


「そういうものなのか?」

「普通はそうなのよ」


 私は普通はできないと強調してみせるのだが、彼はただ不思議そうな表情で私の方を向いただけであった。

 おそらくなのだが、彼の中ではこれぐらいは誰でも動くことができると考えているのだろう。そういったところはユウナ以上に天然なのかもしれない。


「……それより、ユウナは大丈夫なのか?」

「え? 大丈夫だと思うわよ」

「そうか。それはよかった」


 治療を受けて傷を治療していることを話すと彼は安心したかのように小さく息を吐いた。

 自分の状況よりもユウナの安否の方が重要だと考えているのだろう。そういったところがいろんな人が彼に魅力を持つ所以なのかもしれない。

 事実、私も彼に対して少し興味を持ち始めているのだから……。もちろん、興味を持っているとは言っても彼の武術に対することだけだ。別に彼の人間性などは特に関係のないはずだ。

 と、自分に言い聞かせることにした。

こんにちは、結坂有です。


ナリアなのですが、彼女も少しずつエレインに対して興味を持ち始めてきた頃ですね。

エレインの武術に対して興味を持ったナリア、エレインの武術に似ているユウナ。二人のタッグは今後も面白そうな展開になりそうです。


それでは次回もお楽しみに。



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