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神殺しの剣聖

 議会の外が安全になったということで家に戻ってきたアレイシアに俺は天界でどのようなことをしてきたのかを説明した。

 もちろんリーリアやカインの証言も交えて詳細に教えることにしたのだ。

 あまりにも突飛なことなので最初は彼女もすぐには納得してくれなかったが、俺の体が急激に成長してしまったなどの事実からどうやらある程度理解してくれたようだ。


「……邪神を倒してしまった、って?」

「ああ」


 正確には倒したわけではなく封印という形になってしまったのだがな。

 まぁそのことについては今は説明しないことにした。


「ユレイナ、どうする?」

「何がですか?」

「いや、だって魔族なら倒した人はいっぱいいるけど、神なんて倒した人いないわよ」

「そうですね。それほどにエレイン様がお強いということで……」


 別に俺はこの情報を公開しなければ普通の人間として生きていけるのだがな。

 とは言っても情報がなければ信用もされないわけだ。中には嘘の情報を使って聖騎士団になろうとする兵士たちも昔から多くいたようだからな。

 聖騎士団に入るにはそれなりの実績が必要で、その実績を偽ることはよくあることのようだ。


「わかった。新しい称号を作りましょう」


 手を叩いてアレイシアがそういった。


「称号?」

「そうよ? 称号があれば色んな人に信頼されるわ」

「まぁそうかもしれないが急に作って大丈夫なのか?」

「私は議長、議長で議会もエレインのことをよく知っている人が多いわ。議会に信用されているということはエレインの役に立つと思うの」


 確かに議会から何かの称号を得るということは議会から信用されているということでもある。エルラトラム議会の信用は今後世界に出る時に役に立つのは間違いない。

 称号を得るということは自由に世界に出れるというのは俺にとっても十分過ぎるメリットになるのかもしれない。


「ですが、議会は納得してくれるでしょうか」

「どういうこと?」

「多くがエレイン様をよく知っているのは確かです。それでもエレイン様に仇なす人が全くいないということではありません」


 議会の中に俺を敵だと勘違いしている人がいるという可能性が全くないというわけではないからな。

 現に第一防壁の兵士たちが俺や小さき盾たちを敵対視している人がまだ多くいるという事実は変わりない。


「それでも称号がエレインの役に立つのであれば、私は作りたいの。義弟(おとうと)のために頑張るのは悪いことかしら?」

「……そうですね。エレイン様のためにも頑張るべきですよね」


 何もそこまで頑張る必要はないのだがな。

 とは言っても彼女たちは善意で俺に称号を与えようとしているのだ。法外な方法でない限り止める必要もないか。


「じゃ、称号は何にしよっか」

「今決めるのですか?」

「別に急ぐ必要はないからな」


 俺もそう言ってみるがアレイシアは真剣に考え込んで俺の称号を考えて込んでいる。こうなってしまったら口で止めることは不可能だ。


「……剣聖、なんてどうかしら?」

「剣聖、確かにいいですね。聖騎士は存在していますが、剣聖という称号はありません」

「そうよ。エレインは聖人のように美しく優しい心を持っていて、剣の道も極めているわけでピッタリね」


 剣の道を極めているのは事実なのかもしれないが、心が美しく優しいというのは少し異なるのではないだろうか。

 果たして俺がその称号を受けるに値するのかはわからない。


「そんな強い心を持っているとは考えられないが……」

「私が認めるからそうなのっ」


 そう真っ直ぐな目でアレイシアが俺を見つめてくる。どうやら彼女は本当に俺の心が美しく優しいものだと思っているようだ。


「ええ、アレイシア様が惚れたのですからさぞお美しい心を持っておられるのでしょう」

「ほ、惚れたってどういうことよ?」

「そのままの意味です」


 顔を赤くして彼女は俺から視線を逸らした。


「エレイン様、私も美しい心を持っていると思います。どこまでも平和のために行動する意思は強く優しい心を持っているという証拠ですから」

「……なんか、みんながエレインを褒めているだけに聞こえるのだけど」


 リーリアの発言にカインがため息を吐きながらそういった。

 まぁこの三人がいればいつもこんな会話になるのだからな。俺が学院に通学していたときも毎晩のように俺を褒め称えてくれた。


「だってエレインはまだ子供。子供は褒めて伸びるんだから」


 アレイシアはどうやらカインのことを知っていたそうだ。四大騎士のティリアにずっと付き添っていたらしいからな。その繋がりで知り合ったのだろう。


「アレイシア様、エレイン様はもう大人になられました。もう子供ではないと思います」

「……体はそうかもしれないけれど、まだ子供なのっ」

「俺も体は大きく成長したのかもしれないが、実感はないからな。まだ子供なのかもしれないな」

「そうエレインも言っていることだしね」


 ユレイナとリーリアはどこか納得していない様子だったが、まぁこれ以上何かを言ったところで無意味だからな。


「なんか騒がしいと思ったらアレイシアが帰ってきたのね」


 そんな会話をしていると地下部屋からミリシアたちが戻ってきた。


「ええ、最初は書類を取りに戻っただけなんだけどね」

「それでユウナとナリアはいないってわけか」

「そうよ。すぐに戻る予定だったからね」

「……休まなくて大丈夫なのか?」


 昨日から寝ないでずっと働いていることになっているのだが、体調は大丈夫なのだろうか。

 いくら訓練を受けていたからといっても疲労は確実に溜まっているはずだ。


「大丈夫、すぐにでもエレインに称号を与えたいから」

「無理はしなくてもいい」

「エレインのお義姉(ねえ)さんなんだからこれぐらいやらないとね」


 そう言ってアレイシアは杖を突きながらゆっくりと部屋を出て行った。

 表情を隠しているのかは知らないが、疲れ切っている状況ではなかったからな。それに議会には仮眠室もあるようで、別に引き止めなくてもいいだろう。

 窓の外を見ると彼女が馬車に乗って議会に向かっていった。


「……さっき言ってた称号って?」

「ああ、神を殺した俺になんの称号もないのはダメだということでアレイシアが作ろうとしている」

「まぁそれぐらいあってもいいわけね」


 その称号があれば今後俺が世界で活動を続けることになったときに役に立つのかもしれない。


「でも、エレインがまた遠くに行くのは嫌だわ」


 すると、ミリシアは小さくそうつぶやいた。


「どういうことだ?」

「なんでもないわ。朝になったけどゆっくり体を休めてね。私も地下部屋で寝るから」

「ああ、おやすみ」

「おやすみ」


 そう言って彼女は地下部屋へと向かった。

 何を言いたかったのかはわからないが、また俺が遠い場所へと向かって欲しくないとだけは伝わった。

 好きな人がどこかに行く。近くにいないだけで不安を感じるのは仕方のないことなのかもしれないな。

 リーリアも彼女と似た理由で俺のそばに居るのだろう。

 世界が平和になるのなら自分が犠牲になると一度は誓ったのだが、こんなにも俺のことを大切に思っている人がいると次第にそういった考えも揺らいでくる。

 まぁどれが正しいかはまだわからないが、少なくともその人たちを悲しませないためにも俺は最善を尽くす必要があるということだ。

こんにちは、結坂有です。


またしても更新が遅れていまいました…

四月ということで色々と忙しいですが、一日も早く安定して更新できるようがんばりますのでよろしくお願いします


こうして称号を得ることになったエレインはこれからどういった活躍をするのでしょうか。

まだまだ続く平和への道はどういった展開になっていくのか、気になるところですね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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