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熾烈な魔族の攻撃

 私、セシルはリンネ、アレイ、フィンとともに議会へと向かっていた。

 議会ではこれまでに何度か行ったことがあったが、学院に来てからは一度もない。

 子供の頃の記憶を頼りに議会へと向かうと、警備隊の人たちが集まっていた。


「議長のアレイシアと話がしたいのだけど……」

「学院生が議長と面談できるはずがない」


 そう私が警備隊の一人に話しかけてみるが、彼は私を軽くあしらうだけであった。


「アレイシアとは知り合いなの。少しだけでいいから話をさせて」

「今は緊急事態で議長は忙しい」


 先程の警報が鳴ったというのは事実だ。

 確かにこの国が緊急事態に陥っているというのは言うまでもない。しかし、なんの説明もなしであのサイレンを聞かされた身にもなって欲しいものだ。

 あの禍々しい光と恐怖を掻き立てるサイレンで学院生だけでなく、市民も不安になっていることだろう。


「議長のくせに、説明をしねぇのはおかしくねぇか?」


 フィンがそう鋭く警備隊に質問するが、警備隊は彼を一瞥しただけで無視をした。


「どうかしたのですか?」


 そう言って奥からやってきたのはユウナであった。

 彼女はエレインの幼馴染だそうで、日々彼とともに訓練を積んでいたのを覚えている。


「はっ、学院生が議長と話がしたいと申しておりまして……」

「えっと、セシルさんですよね? アレイシアさんでしたら奥の部屋で会議中ですので、中で待ってもらってもいいですか」


 彼女は私の顔を見て快く了承してくれた。まさかとは思うが、彼女は小さき盾の一人として認められたのだろうか。

 どちらにしてもすごいことではあるが、彼女についていけば議長であるアレイシアと話ができるかもしれない。


「よろしく頼むわ」

「はいっ。こちらです」


 そう言って私たちはユウナの後を追うように議会の中を進んでいった。


 議会の中は思っていた以上に広く感じる。

 子供の頃に何度か行ったことがあるはずなのだが、初めてここに来たと錯覚してしまいそうだ。

 所々見覚えのある壁画などが点在しているものの、ほとんどが数年前と大きく変わっているのだろう。


「あちらの待機室で待っていてくれますか?」

「えっと、来客用の部屋よね?」

「そうですね。でも、今は緊急事態ですから使われていないのですよ」


 緊急事態という状況で誰かが来客として議会に来るということはないか。

 それなら遠慮はいらないということだ。

 ユウナは私たちを来客用の待機室に案内をした後、すぐに持ち場へと戻っていった。

 しばらくすると、アレイシアのメイドが来るのだそうだ。


「……議会に来たの初めてだけど、本当にお城みたいだね」

「うん。外からだと内側がどうなっているかわからないから」


 リンネとアレイは興味深そうにこの待機室を見渡している。

 確かに所々に古い絵画が飾られてあったりと豪邸やお城を連想させるような物がいくつもある。

 そして何よりも堅牢そうな石で作られた壁や床は古風な牢屋すら感じさせる。雄大さや威厳さの中にある美しさを肌で感じた。

 そして、しばらくすると扉が開き、アレイシアのメイドであるユレイナが入ってきた。


「……お待たせしました。ただいま会議が終わりましたので議長室の方へと案内いたします」


 私たちを見るなり彼女は意外そうな顔をした。

 それもそのはずで、普通緊急の来客はどこかのお偉いさんが一般的だ。しかし、私たちは学院生でそれもまだ一年目の生徒だ。

 それからユレイナに案内され、議長室へと向かう。

 廊下に出て、窓の外を見るとあの禍々しい光がまだ空を照らし続けている。魔族ということで第一防壁より奥のはず、それならこの現象は他国にも見えているに違いないだろう。


「アレイシア様、お連れいたしました」


 そう言ってユレイナが扉を開けると、そこには疲れ切った表情のアレイシアがいた。

 彼女の横にはユウナと同じくエレインと訓練を受けていたナリアと聖騎士団団長だったブラドが立っている。


「……セシル、一体何のよう?」

「なんのようって、この騒ぎは一体なんなの?」

「魔族の攻撃。あの警報が鳴るってことはそういうことよ」


 しかし前回は学院寮が襲撃された時はあの警報が鳴ることはなかった。


「寮が攻撃された時は?」

「あの時の襲撃してきた魔族は推定でも四〇〇体ほど、魔族の大侵攻に匹敵するほどの量ではなかったのよ」

「……つまりは今回は以前の数よりももっと多いってことかよ」


 後ろで話を聞いていたフィンがそう呟いた。

 彼も学院寮で魔族と戦っていた。そんな彼があれ以上の魔族が攻め込んできていると聞けば驚愕するのも無理はない。


「あの時は聖騎士団がいたからね。警報は出さないという方向だったの」


 それに加えて寮への攻撃は奇襲だった。

 被害を確認する前にエレインが全てを片付けてしまったために警報が出せなかったという状況だろう。

 しかし、今回は違う。

 警報が鳴ったのは魔族の侵攻が確認されてから数十分は経っているようだ。

 しっかりと被害状況を考えて非常事態かどうかを判断する時間があったということだ。


「今回が前の攻撃と違うっていうのはあの光ですぐにわかったわ」

「……何が言いたいの?」

「私たちも戦えるってことなの」

「だめよ。あなたたちは未来の聖騎士団であり、未来の議会軍でもあるのよ? そんな未来ある人材をここで失うのは痛手だわ」


 まだまだ現場で戦っている人たちと比べれば私たちはまだ弱いのかもしれない。それでも少しは手助けできることだってあるはずだ。

 将来に向けて高い可能性を秘めているのは間違いないが、今は魔族の大侵攻を受けている。それでも守られてばかりで納得できるほど私たちは弱者ではないのだ。


「だからこそよ。だからこそ、私たちがこの国を守りたいのよ」

「そうだわ。現存するエルラトラム最古の流派として私たちも戦うわよ」


 リンネが私の言葉に続けてそういった。

 彼女自身も先の戦いで強力な魔族に手も足も出なかった。だが、今は二度とあのような臆病な戦い方はしないと決めているようだ。

 積極的に前に出るということは技の手数が増えるということ、そして手数が増えれば自然と生存率も上がる。攻撃は最大の防御ということだ。


「……」

「アレイシア様、セシルの流派もリンネやアレイの流派も対人で進化した剣術ではございません。対魔族に特化した剣術ですので十分に戦えるはずです」

「ユレイナ……。わかったわ。あなたたち学院生も前線に向かってもいいと許可します」


 すると、アレイシアは改まってそういった。


「わかりました。直ちに手続きの方を済ませてきます」


 そう言ってユレイナは議長室を出て行った。

 彼女はアレイシアのためになんでも行ってくれるメイドだ。アレイシア以上に働いているはずなのにまだ疲れを感じている様子ではない。

 それだけでもとんでもない体力の持ち主であるということはわかった。


   ◆◆◆


 あれから何十分戦っただろうか。

 私、ルカは巨大な火球を操り奥の山にいる魔族を焼き尽くしている。

 近くにいるティリアは膝をつきながらも剣を地面に突き刺し、冷気を放出している。

 マフィは風に乗り、空気で作られた刃を四方八方に放っている。

 それでも魔族の勢いは一向に収まる気配はない。

 むしろ、私たちの倒す速度よりも魔族が押し寄せてくる速度の方が速いのだろう。このままではいずれ魔族によって防壁が埋め尽くされてしまう。

 そうなってしまえば、以前のように第一防壁をまた手放すことになってしまう。第二防壁での戦いは私たちが全力を発揮できない。なぜなら市民に影響を与えてしまうからだ。私たちが本気で力を振えるのはこの第一防壁のみだ。


「もう……厳しいかもしれないわね」


 ティリアは息を荒げながらそういった。

 彼女は私たちよりも力の消費が激しいため、誰よりも早く限界が来てしまう。何十分も力を出していればすぐに限界が来るのは仕方ない。


「安心しろ。この私とて限界だ」

「ふふっ、全然安心できないわね」

「ああ、お互い様だな」


 そんなやりとりを繰り返しながらも私たちは戦うしかなかった。

こんにちは、結坂有です。


またも更新が遅くなってしまい、申し訳ございません。


魔族の攻撃はまだまだ続きそうですね。

セシルたち学院生たちがこれからどう活躍していくのか、そして小さき盾の動向も気になるところです。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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