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穢れた大地

 私、ルカは他の大騎士とともに南の防壁へと向かっていた。

 私たちは第二防壁の北側から大回りをしてこの第一防壁へと辿り着いた。

 しかし、ここに到着する前から強烈な魔の気配は漂っていた。もちろんだが、これほどの気配は今までで味わったことのないものであったのは言うまでもないだろう。


「どれだけの数がいるのかは知らねぇが、俺たちがやらなければいけないってことは確かなようだな」

「そうだけど、ここまで強力な気配だと私でも不安になるわね」


 南側の防壁に辿り着いたと同時にハーエルとティリアがそう呟いた。

 彼らの言うようにこれほどの気配はただものではない。聖騎士団のいない今だからこそ、私たちがなんとかして耐え凌ぐ必要があるのは理解できる。


「数的不利なのは重々承知、でもなんとかしないといけない」

「ああ、この国に滅んでしまっては私たちとて不都合があるからな」


 マフィの言葉に私は同意する。

 今この国が滅んでしまっては意味がない。エレインという教え子がいるのだからな。教え子のために教師が一肌脱ぐというのは当然のことではないだろうか。


「なんでもいいけどよっ。このままだと前線が崩壊するのは時間の問題だな。どうする?」


 ハーエルが私にそう質問してきた。

 数の戦力差は私たち四大騎士がどうにかしなければいけないだろう。そのためには大聖剣の力を開放してうまく魔族の勢力を弱める必要がある。


「とりあえずは何をやってもいいのだが、魔族の頭数を減らすのが一番だろうな」

「私が魔族を氷漬けにするわ。魔族の動きを封じれば前線で戦っている兵士たちも戦いやすいでしょう」

「……私は風刃を使って遊撃を担当するわ」

「ふむ、では私は奥の山を燃やし、魔族の前衛と後衛を分断するとしよう」


 私やティリア、マフィはそれぞれの能力を活かした戦い方に専念すると言ったところだろう。

 あとはハーエルの使い方なのだが、これはもうひとつしかない。


「それでよ。俺はどうすればいいんだ?」

「お前の能力は電撃だ。壁に近づき過ぎた魔族を蹴散らして欲しい」

「へっ、そんだけでいいのか?」

「ああ、今のお前にはあまり力を使って欲しくはない。後々のことを考えて力を温存しておくべきだな」


 彼の能力である電撃や雷動はかなり強力な能力だ。正直、それを序盤から惜しみなく使うのにはリスクがある。

 長期戦になった場合を考えてここは待機してもらう方がいい。


「そうかよっ。ま、俺一人でどうこうできるような話でもねぇみたいだからな。今はあんたらに従ってやるよ」


 ほとんども魔族が雑魚であるとはいえ、彼一人ではこの数をどうにかできるはずがない。

 状況はかなり最悪ではあるが、四人がなんとか協力し合えばなんとか防げれる数ではあるのだ。

 ティリアの配下として管理していたはずのカインが何者かに拉致されたというのはここに来る前にティリア本人から聞いた。

 光り輝く謎の騎士によって連れ去られたと聞いたが、その正体も掴めていない。

 色々と疑問に思うことはあるとはいえ、今は目の前の魔族をどうにかすることを第一に優先しなければいけない。

 カインがいないのであれば、負傷者は最小限に抑えなければならないのだ。

 そんなことを考えていると再び空が禍々しく光は始めた。


「……さっきも光っていたわよね」

「ここに来る途中にな。一体なんなんだ?」

「わからない。でも、嫌な予感がする」


 マフィが少しだけ身震いしながら、そう呟いた。

 確かにあの光からは禍々しい力を感じる。今までにもこのようなことがあったというわけではない。


「ティリア、すぐにでも早く氷結の力を解放したほうがいい」

「え?」

「私も奥の山を焼き尽くすとしよう」


 火柱が出ると同時に炎の門が出現する。

 そして、その中から強烈な熱波を放つ大聖剣が姿を現す。

 それに続いてティリアも剣を構えてそのまま地面へと突き刺す。


「凍てつく大地が魔を退けるっ」


 彼女がそういうと冷気が漂い始め、一瞬にして地面に氷が張った。

 すると、下にいる魔族の動きが急に鈍くなり始める。魔族の足が凍り始めているのだ。


「私も行く」


 ティリアの力の解放と同時にマフィがそう言って、防壁を飛び降りる。

 疾風の鎧に包まれた彼女はもはや無敵と言っていい存在だ。

 では、私も本気であの山にいる魔族を焼き払うとするか。


「煉獄の門は今、開かれた」


 剣を縦に振ると炎の一閃が走り、次第にその火が巨大になっていく。そして、その巨大な炎はそのまま奥の山へと火球となって放たれる。


「氏族会議が休止していなければ、こんなことはできなかったなっ。全くよっ」


 ハーエルはそう楽しそうに電撃の刃を放っている。

 防壁付近に近づいた魔族を最小限の力で斬り倒しているようだ。あの様子なら力もそこまで使っていないことだろう。


「ふふっ、久しぶりね」

「そうだな。ここまで熱く剣を振ったのは何年ぶりだろうか」

「さぁね。でも自然といられるのは変わりないわっ」


 そう言ってティリアはさらに剣を深く突き刺した。それと同時に防壁周辺の冷気が強力となっていく。

 魔族はマフィの遊撃によって前衛と後衛に分けられた。その前衛をティリアが、後衛をこの私が対処していく。

 これであれば大抵の攻撃には対処することができるだろう。


   ◆◆◆


 警報がこの学院寮を響かせてから数分、私、セシルはリンネとアレイとで廊下を走っていた。


「何があったのかな?」

「少なくともあの光には関係あるでしょ」

「今はとりあえず確認をしましょう」


 そう言って私たちは廊下を駆け出し、寮の屋上へと向かった。

 屋上ではすでに何人かの生徒が集まっていたようで、遠く光り輝いている場所を見つめているようだ。

 私も屋上の柵に近づいてじっくりとその光を観察してみる。

 あの禍々しい光が一体何なのかはわからない。

 でも、魔族だということはすぐにわかった。攻撃の合図なのだろうか。


「やばくなってきたってこと?」

「わからないわ」

「私たちはどうすればいいわけ?」


 いろんな疑問が出てくるが、それらの答えはどこにもない。警報が鳴って妙な光が天を照した。ただ、それだけなのだ。

 それでもこの事態の異常さは十分に伝わってくる。

 私たちの周りにいる生徒たちもこの光景に驚愕し、そして恐怖しているのが目に見えてわかるからだ。


「とりあえず、議会に行きましょう」

「でも、私たちはまだ学生よ? そんな議会なんかに行けるわけ……」

「ちょうど議長と知り合いなの。話を通せば何か話してくれるかもしれないわ」

「副団長の娘ってだけで普通ではないってわかっていたけど、本当に普通じゃないのね」


 普通、私もエレインからしてみれば普通の存在なのだろう。

 でもそんなことは今となっては関係ない。この異常事態で私たちができることは力を合わせ、魔族に立ち向かうことだけなのだから。

 それから私たちは議会へと向かうことにした。

 道中、フィンも仲間に入れて議会へと走り始めた。

こんにちは、結坂有です。


更新が大変遅くなってしまいました。

もう一話分も今日中には更新できると思います。


防壁での戦いが激化していく中、学院生たちはどう動くことになるのでしょうか。

これからのセシルやその仲間たちの活躍にも期待ですね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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