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天に棲まう魔族

 天界に来てから一日ほど体を休めることにした。

 ここに連れてくる際に受けた怪我で体力をかなり疲弊してしまったからだ。それを癒すことが先決だろう。

 そして、朝になった。

 とは言ってもこの天界には昼も夜も明るいままなのだがな。一応、時間という概念はあるようだ。


「おはようございます。エレイン様」


 リーリアが俺の部屋に入ってきて挨拶をする。

 天界での時を表す砂時計のようなものがちょうど反転して夜が終わり朝が来たことを告げた。


「おはよう」

「よく眠れましたか?」

「そうだな。案外この空間での睡眠は快適だった」


 正直なところあまり眠れなかった。

 だが、リーリアにこれ以上心配をかけさせないためにもここはよく眠れたと答えたほうがいいだろうな。


「そうですね。ベッドはふかふかですし、明るささえ気にしなければ問題なく眠れましたね」


 どうやら彼女自身もこの天界での睡眠には問題なかったようだ。

 まぁ問題になると言えば、カインの方が少し心配だな。


「そういえば、カインはどうした?」

「彼女でしたらまだお休みになられています」

「つまりは眠れなかった、ということか?」

「そのようですね。かなり寝づらそうにしていましたから」


 俺たちとほぼ同時期にこの天界に来たと思われるのだが、極めて白に近い空は不気味なほどに眩いものだ。

 そんな光の中、感情に敏感な彼女にしてみればかなりの障害になることだろう。


「まぁ彼女は魔族と直接戦うわけではないからな。早くに起きれないというのはそこまで大きな問題ではない」

「はい。今日はどうなされるのですか?」

「体の調子もだいぶ良くなったからな。城壁の外にでも出てみようと思っている」


 この世界に来てからまだ城壁内でしか行動できていないからな。少しは外の様子や魔族と実際に接触してどういった状況なのかをしっかりと把握しておく必要があるだろう。

 下界と天界での魔族の違いなどにも注目しておきたいところだ。


「……お言葉ですが、少々危険ではないでしょうか」

「危険なのには変わりないが、このまま何もしていないければ変化はないからな。少しばかり状況を知っておくに越したことはないはずだ」

「確かにそうかもしれませんが、魔族の数は私たちの世界とは比べものにならないほどです」


 昨日、望遠鏡で覗いただけでも数万もの魔族がいたのは確かだ。

 あれほどの数に囲まれでもすれば、どう足掻いても怪我をしてしまうだろうな。


「世界を救うと誓ったからな」


 俺は昨日までに思考を巡らせて作戦を考えていた。狙うは邪神ヒューハデリックだ。魔族の産出をどうにか抑えることができれば、あとは殲滅戦になる。

 正直言えば、殲滅は光の力を持っている剣神に任せたいところだ。広範囲に強い力を放つことができるあの力は一気に制圧するのに役に立つからな。

 それに対して俺たち人間ができることは限られている。精霊などの力を借りているとは言っても神のような強大な力を持っているわけではない。


「本当に変わらないのですね」

「どういうことだ?」

「いえ、ただの独り言です。それでしたら私もお供いたします」

「それだと助かる」


 俺がそう言うと彼女は少し嬉しそうに頭を下げた。

 たとえどのような場所だとしても彼女は絶対に俺の後を付いてくることだろう。俺のために付いていくと言ったあの時の表情は強い決意のようなものを感じさせた。

 それほどに彼女は俺の従者として尽力したいと考えている。


 それから部屋を出て回廊を歩いていると剣神であるトレドゲーテが現れた。


「起きたのか」

「ああ、寝るには明る過ぎるが体は休めることができた」

「そうか。睡眠とはなかなか厄介だな」


 神は眠らないというのだろうか。

 まぁ確かに精霊が眠らないというのだから当然か。

 すると剣神は頭を掻きながらリーリアの方を向いて口を開いた。


「ずっとそばにいるんだな?」

「はい。私はエレイン様の従者ですので」


 もともと俺から議会の追及を退ける目的で公正騎士であった彼女が任務として俺のメイドという仕事をしていたのだ。

 もちろん、それが当時の彼女にとってかなり重労働であったということは言うまでもないだろう。


「……我が子孫がこのような女性と巡り会うとはな。俺の時は誰一人助けてくれなかったからな」

「どういうことだ?」

「ただ単純に俺一人が強かったんだろうな。俺が人間だった頃はな」


 彼の神としての力量は確かなものなのかもしれないが、実際の剣技などはどれほどのものなのかは全くわからない。

 当然神に選ばれるぐらいだから強いものなのだろうな。


「だが、こうしてお前たちに頼ることにしたのは魔族の数が圧倒的だからだ。正直俺一人でどうにかできる問題ではない。魔族の大半を光の力で殲滅できたとしても肝心の邪神には届かない」

「そうだろうな。正直、剣神の技量はよくわからないが、数を押し切るにはどうしても光の力を使う必要がある」

「その隙にお前たちが邪神に攻撃を仕掛けるといったところか」


 夜のうちにずっと考えていたがそれが一番勝率が高いと考えた。

 確かに他にも作戦を考えてみたのだが、この方法以外の作戦はどれも可能性が低かった。

 それはどうやら剣神も同じようなことを考えていたようだな。


「本当に私たちだけで神を倒せるのでしょうか」

「倒せるかどうかはまだわからないがな。ただ、これ以外の方法は色々と問題があるからな」


 確実に神を倒すことを考えれば剣神トレドゲーテが斬ることが望ましいが、それをするには俺たちが億単位の魔族を倒す必要がある。

 それに城壁の問題もある。この城の近くに剣神がいなくなるということは逆にこちらが攻め落とされる可能性だってある。

 そんな状況下で彼をあの山頂にまで突撃させるのはあまりにも危険だからな。


「その点に関しては特に問題はないだろうが、お前たちからすれば不安要素なんだろうな」


 昨日の老人の話によると聖剣を持っているのであれば全く問題がないということらしい。

 まぁその点は考え所だな。


「とりあえずは、俺たちが邪神をどうにかする必要があるということだな」

「ああ、その方が助かる」


 すると、剣神トレドゲーテは小さく頷いた。

 当面はこの作戦で実行していくことになりそうだ。

こんにちは、結坂有です。


本格的な戦いがそろそろ始まりそうですね。

そして、下界にいるミリシアやミーナはどうしているのでしょうか。下界でも何か事件が起きそうな予感です。


それでは次回もお楽しみに。



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