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ミーナは戦いたい

 セシルが俺たちに接触してきてから色々と警戒してはいたが、無事に帰宅することができた。

 当然リーリアは終始警戒を続けていた。理由としてはどうやらこの家が知られないかと言うことであった。

 そこまでセシルに対して警戒しなくてもいいとは思うのだが、まぁ別に止めなくても大丈夫だろう。


 玄関を開けるとアレイシアのメイドであるユレイナが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ」

「ただいま」

「では、早速夕食の準備をいたしますね」


 礼儀正しく一礼をするユレイナに続くようにリーリアが前に出る。

 そして、二人は厨房の方へと向かっていった。

 俺は制服を脱ぐために自室へと向かう。しばらくすれば、リーリアが夕食を呼びに来てくれることだろう。


 部屋に入り、鍵を閉める。

 すると、腰後方に携えている魔剣からアンドレイアが現れる。


「厄介なことになったの」

「何がだ」


 制服を脱ぎながら、俺は彼女の話を聞くことにした。


「セシルという女の子とじゃ。あやつ、二本の聖剣を持っておったじゃろ」

「ああ。二つとも綺麗な聖剣だったな」

「お主に向けた細い方の剣、あれは大聖剣グランデバリス。問題なのはもう片方、右側に携えていた剣じゃ」


 上着を脱ぎ、それを洋服掛けに掛ける。

 かなり動いたはずなのだが、服が上質なのかシワがあまりない。

 そんなことを考えていると、アンドレイアが俺の顔を覗き込んでくる。


「聞いておるか?」

「ああ、聞いている。二つ目の聖剣がどうした」

「……二つ目は大聖剣ベルベモルト。非常に耐久性の高い剣じゃな。防衛向きと言える」


 アンドレイアがジトッとした目を向けながらそう言った。

 攻撃にグランデバリス、防衛にベルベモルトと言ったところか。

 俺の持っている剣はどれも攻撃特化のもので、確かに厄介と言えるな。


「セシルの動き的に攻撃と防衛を使い分ける剣士だ。俺に剣を向けた時とその後とでは足の動かし方が違った」

「足かの?」

「足の動きは剣士にとって重要だ。それを見るだけで重心の位置がわかる」


 俺がそういうとアンドレイアは難しそうな顔をした。


「まぁ足を見るだけでも動き方がわかるということだ」

「ふむ、よくわからんがそういうことなのじゃな」


 アンドレイアはどうやら考えることをやめたようだ。

 そういうところは素直で面白いのだが、今回のことに関して言えばもう少し考えて欲しいところだ。

 すると、扉をノックされる。


「エレイン、夕食できたそうよ」


 呼びに来てくれたのはどうやらアレイシアのようだ。

 移動に不自由なのに呼びに来てくれたとはな。

 俺はアンドレイアに合図を送り、剣の中に入ってもらう。そのとき、深くため息をついたのが分かったが気にしないでおこう。

 そして、すぐに私服に着替えて扉を開ける。


「わざわざアレイシアが呼びに来なくても大丈夫だ」

「ううん、呼びに行きたかったの」


 そういうとアレイシアはどこか恥ずかしそうに体をよじる。

 彼女が俺に対して好意を寄せているのは知っている。そうとは言っても無理はして欲しくないのが本心だ。


「そうか。まぁ無理はしない程度にな」

「わかってるよ。さ、いこ?」


 彼女が手を差し出してくる。

 俺はその手を取って、そのままリビングに向かうのであった。


 それからは普通に夕食が終わり、平和な時間を過ごした。

 相変わらずアレイシアは俺にべったりとくっつきながら話してくるが、それにはもう慣れた。

 さすがに一年近くもこうした生活が続いていては慣れるものだ。




 翌日、俺は登校する。

 昨日と同じ時間に家を出たのは朝の訓練のためだ。ミーナもこの時間がいいと言っているからな。


「今日も訓練なのですか」

「そうだ。あの姉妹との戦いも明日になったからな」


 明日の放課後にはフランケル姉妹との模擬戦の話もある。

 だから、今日のうちにミーナを自信付けたいと思っている。


「そうですか。私個人の意見としてはミーナは負けると見ています」

「確かに今のままでは負けは確定だろうな。だが、勝ち筋はある」

「と言いますと?」

「ミーナの防衛力は凄まじいものだ。そこをうまく使いこなしていけば勝てる」


 防衛力が高いとその分相手の攻撃手段が減っていく。

 そして、その防衛からカウンターのように繰り出される強力な一撃は相手に効果的だろう。

 ミーナの剣術は防衛に徹している分、非常に汎用性が高い。

 攻撃に派生するのも容易だからな。


「なるほど、守りと攻めの両立がミーナの強みということですね」

「そういうことだ。とは言ってもいつかは限界が来る。そのときは自分の剣術を進化させていく必要があるだろうな」

「彼女に可能でしょうか」


 その点はまだ不明だ。

 ミーナがどれほどの能力を持っているのか、まだ測り知れていない。


「まだわからないな」


 そう話していると、学院の敷地内に入った。

 すると、すぐにある人が話しかけてきた。


「奇遇ね」

「セシルか。どうしたんだ」

「聖騎士団の応援にあなたが呼ばれているみたいだから挨拶をしにきたの」


 聖騎士団の応援とは初耳だな。

 リーリアもわからないと言った顔をしている。

 どうやらセシルの方が情報が早いようだ。


「その応援というのは初めて聞く。どういうことだ」

「あら、まだかしら。今週の土曜と日曜に聖騎士団が独自で行っている討伐遠征があるの。そのための応援として学院の優秀な生徒たちが手薄になっている拠点防衛に参加することになっているの」


 討伐遠征というのはブラド団長が主導で行っている。

 全体的にまだ少ない聖騎士団が攻撃に特化するため、一時的に防衛が手薄になるとも言っていたな。

 その防衛に学生を派遣すると言ったところか。


「なるほど、大体は理解した」


 リーリアも大筋は見えたようで軽く頷く。


「あなたが本当に強いのか。そこで見定めてあげるわ」

「あまり期待して欲しくないものだ」


 本当に実力を出していいのかまだブラド団長から聞いていないからな。

 もし自由に動いていいのなら、彼女に証明させることはできるだろう。


「実力を隠しているようだから加えて言わせてもらうけど、応援として呼ばれているのは私とあなただけだから」

「ふむ、他の生徒には見られないということだな」


 俺がそういうとセシルは大きく頷いた。

 それなら別に大丈夫なのだろうか。まぁ実力を隠すかどうかは一任すると言われているからな。

 その点は色々と調べてから決めるとしよう。


「じゃ私は行くところがあるから、先に失礼するわね」


 そう言ってセシルは奥の商店街へと向かっていった。


「討伐遠征の話ですが、私は行けるかどうかわかりません」

「別に気にすることではない」


 リーリアは少し残念そうな顔をしていた。

 彼女はあくまで公正騎士であり、聖騎士ではない。

 もちろん魔族に対して攻撃できるが、それが主体ではないからな。


 それから学院に入り、ミーナと合流する。

 リーリアは訓練場の外で待ってくれるそうだ。


「おはよう。昨日の夜に色々考えたのだけど……」

「どうした」

「私、フランケルたちに勝ちたい」


 そう言ったミーナの目はある覚悟ができているように思えた。


「そうか。では今日は実戦形式で訓練するか?」

「さすがにあなたに勝てる自信はないけど、やってみるわ」


 すると、ミーナは聖剣を取り出した。

 その大剣は持っているだけで威圧できるほどに大きいものだ。


 俺はイレイラを抜き出し、臨戦態勢に入る。

 そして、ミーナは構えに入る。

 彼女は防衛を主体とした剣術だ。対して俺は攻撃に特化している。

 訓練相手としては相性がいいだろう。


「では、始めようか」

「ええ」


 合図とともに俺がミーナに攻撃を仕掛ける。


「は、速い……」

「構えを崩すなよ」


 俺のわかりやすい上段からの振り下ろしにミーナは大剣の腹で受け止めた。

 すると、やはり彼女はその大剣を回転させて俺の追撃を防ぐ。


「はっ!」


 俺の剣はミーナの大剣に振り回される形で左方向へと流され、態勢が崩れる。

 だが、俺は崩れた体勢をうまく体を捻ることで立て直す。


「うそっ」


 ミーナはそういうが、彼女はすでに攻撃に移っている。

 普通であれば、このまま大剣の重い一撃を脇腹に直撃するだろうな。

 俺はその攻撃をイレイラでうまく受け流し、ミーナの首元へと剣先を向ける。


「っ!!」

「前よりも素早くなっている。俺も態勢を整えるのに時間がかかった」

「……瞬きの間で時間がかかったとかどんな速さで生活しているのよ」


 ほとんど密接での状態だ。

 瞬きの瞬間に剣は振り下ろすことができる。だから遅過ぎると言うのだ。


「まぁあのような防御と攻撃であれば、普通の人なら対処できないな」

「そう、あまり納得できないのだけど」


 確かに受け切られてしまったからな。納得できないのも無理はないか。

 だが、あの一撃を直で受けてしまってはシールドがあるとは言え、怪我をしてしまうかもしれないからな。

 アレイシアを心配させないためにもここは無傷で抑えたいところだ。


「でも、以前よりかは戦いやすくなったのかもしれないわね」

「自分に自信を持ち始めたのならよかった」


 確かに彼女は強くなっている。

 扱い方を変えるだけでここまで成長するものなのだな。

 これからミーナの成長が気になるところだ。

こんにちは、結坂有です。


どうやらエレインは聖騎士団の応援に呼ばれてしまったようです。

実力が出されるのか、隠さなければいけないのかまだわかりませんが、気になるところですね。

そして、ミーナも自分の力に自信が付き始めてきました。彼女の成長も楽しみにです。


次で第一章は終わりとなります。

それでは次回もお楽しみに。

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