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想いの向こう側

 轟音とともに魔族の血飛沫が空を赤く染めた。

 大聖剣イレイラの力を最大限に活かすことでこの強烈な技を放つことができるのだ。


「エレイン様……」


 後ろの方でリーリアが俺の名前を呼んだ。


「どうした」

「大丈夫ですか?」

「ああ、それよりルカの容体は?」


 先ほど自らの腹部へと剣を突き刺していた。確かに自分の生命力と引き換えに氏族が持っている聖剣の強力な力を引き出すことが可能だと聞いていたが、まさかここまでのものだったとはな。


「……私のことは気にするな。すでに傷口は焼き閉じている。あとは治療士に任せれば完全に治るだろう」

「そうか」


 とは言ってもかなりの血液を失ったはずだ。聖剣で外傷は完治しても血液まで回復することはできない。


「エレイン様、一体何をしたのですか?」


 見ているだけではすぐには理解できないことだろう。しかし、ルカには俺がどういった技をしたのかはある程度わかっているはずだ。そうでなければ、あのように唖然とした表情をするはずがないのだ。


「……お前自身の斬撃を無数に展開した。そうではないか?」

「ああ、この聖剣の能力でな」

「魔族の位置を完全に把握していないと不可能な技だ。全く、お前には叶わないな」


 そう言ってルカはゆっくりと立ち上がり言葉を続けた。


「まぁここまで恐ろしい人間を他に見たことがないからな。この私からお前に何かを強要することはやめておくとしよう」


 どうやら俺に対して何かをさせようとするのはやめるようだ。

 それはそれでありがたいのだが、それで彼女の計画は進められるのだろうか。


「問題がないのならそれでいいのだがな。何か計画に支障が出たりしないのか?」

「ふっ、気にするだけ無駄だ。ただ単に私の好奇心なだけだからな」

「なるほど」


 氏族の人たちは全員こうなのだろうか。

 ティリアも完全に彼女の好奇心からだった。確かに一般人よりかは生きる上で制約が多いとはいえ、流石にやりすぎな気がする。


「それでは私から一つ言います。エレイン様にこれ以上、迷惑をかけないで欲しいです」

「ほう?」

「……エレイン様にはもう関わってほしくありません」


 リーリアがそうルカに睨みつける。彼女からすれば俺に危害を加えるようなことばかりしているように見えるからな。

 思い返してみれば、今までこういったことは多かったように思える。


「そうだな。私用でエレインに関わることはもうしないでおこう」

「本当ですね?」

「ああ、もちろんだ」


 どうやらリーリアのおかげでルカの暴走は抑えられそうだ。

 毎回こうしてどこかに連れて行かれるのは面倒だからな。

 とは言っても先程の魔族の軍勢はどうやらエルラトラムへと進軍していたようだ。ここでなんとか食い止めることができて良かったとも言えるか。


 それから俺たちは防壁へと向かい、治療士にルカの怪我を治療してもらうことにした。

 それにしてもこの第一防壁に近づいてから妙な気配を感じるようになった。兵士たちを見てみるが、対して魔族の攻撃があったようには思えない。

 この気配は一体なんなのだろうか。

 俺は自分の足元を見た。


   ◆◆◆


「いいか、相手の動きを見るなよ。見てから反応しては遅すぎるからなっ」


 そう言ってレイが魔族の方へと突き進んでいく。

 私、ミリシアとアレクは生徒たちの援護をしながら、地下通路の奥へと進んでいっている。このまま進んでいけば、第一防壁の近くへと出るはずだ。


 それにしても魔族の勢いがまだ収まらないのはどうしてだろうか。

 そして、何よりも魔族の群れは国の中心からきている魔族の方が多いのが変だ。あれから二〇体ほどの魔族を倒しているのだが、一向に数が減っている様子ではない。

 暗闇から何体も湧いて出てきているのだから。

 対して、第一防壁付近から攻め込んできている魔族の数はそこまで多くはない。先ほどから数体程度しか攻め込んできていないのだ。


「にしてもこいつら、どんだけいんだよっ」

「腕が痺れて……」


 彼らは私たちほどに戦い慣れているわけではない。そのため三体程倒したあたりで疲労が出始めている。

 魔族の正確な数まではわからないが、このままではこちらの生徒が疲弊によって倒れてしまうことだろう。一刻も早く第一防壁付近にまで出る必要がある。


「レイっ、第一防壁の方まで全力で突撃してほしい」


 すると、アレクがそうレイに命令をした。


「あ? どうしてだ?」

「先ほどから魔族の数が少ないからね。突破口を切り開いてくれれば助かるんだけど」

「へっ、上等だぜ。俺が道を作ってやるよっ」


 彼がそういうと剣を前に構え、地面を強烈に蹴って前進していく。その衝撃波が一番離れている私の方まで届いてきたのには驚いた。

 本当に彼が本気を出してしまったらこの地下通路は簡単に崩壊してしまうことだろう。


「オラァ!」


 そんな彼の雄叫びとともに強い風切り音が聞こえてくる。奥の方で私たちのために突破口を切り開いてくれているようだ。大抵の魔族であれば彼一人で問題はないだろう。

 私とアレクがするべきことは生徒たちの体力を維持することだけだ。

 しかし、第一防壁まで辿り着けたとしてもその先のことはほとんど無計画なのだが、その辺は成り行きで頑張るしかないか。

 とりあえず、この地下通路から出ることさえできれば後は聖剣や魔剣の能力で押し切るだけだろう。

こんにちは、結坂有です。


二日も更新が止まってしまい、申し訳ございませんでした…



もしかするとミリシアたちがこのまま地下通路を抜けるとエレインと合流してしまうのではないでしょうか。

これからの展開が面白そうですね。


次回はまた夜ごろに投稿いたしますので、お楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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