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灼熱のデート

 しばらく街中をルカとリーリアの三人で歩いているのだが、これといって変わったことはなかった。

 ただ、ルカは俺と歩いているだけで楽しいのか機嫌がいい。学院では楽しそうな表情をしている姿はあまり見たことがないからな。


「もうこんな時間か」


 ルカが街に設置されている時計台を見てそういった。

 まだ日は暮れていないのだが、五時を過ぎた頃だ。


「何かあるのか?」

「ああ、そろそろ頃合いかと思ってな」


 そう言うと同時にリーリアがまた不機嫌そうな表情でルカを睨みつけた。しかし、当のルカは悪びれた様子はなく、どこか真剣な眼差しで俺の方を向いている。

 彼女が一体何をしようとしているのかは全く想像できないが、そもそも何か企みがあって俺をデートに誘っているようだしな。


「一旦、防壁の外へと向かおうか」


 すると、ルカはそう切り出して歩き始めた。


 それからしばらく街を歩いて第一防壁の外へと向かう。この防壁を抜けるとそこは国外となっており、魔族と接触する可能性がある。

 とは言っても、大きな襲撃などがない限りは怪我をすることはないだろうがな。


「ここで一体何をするんだ?」


 防壁からしばらく歩いて岩場の多い場所へと来た。


「ふむ、少しお前に試して欲しいことがあってな」

「……」


 少し離れた場所でリーリアが監視するようにルカを見つめている。

 それにしても俺は何をしたらいいのだろうか。

 そんなことを考えていると、ルカが突然煉獄の門を開いた。それと同時に強烈な熱波が近くの岩を変色させ、大聖剣が顕現する。


「エレイン、この剣に触れてみろ」


 ルカが俺に対してそう言ってきた。流石にこれ以上近づくと肌が焼けてしまいそうだ。リーリアもかなり離れているとはいえ、熱そうにしている。

 それほどにこの煉獄の門は熱を放っているのだ。


「……お前でもこの剣は握ることはできないのか?」


 そう挑発するかのように彼女は俺に言ってくる。

 確かに彼女がこの灼熱の門から剣を取り出しているのを見たことがある。それも火傷をしている様子もない。

 おそらくはルカがこの聖剣に認められているからだろう。


「エレイン様っ、危険ですっ」


 離れた場所からリーリアが俺に警告してくる。

 今俺が立っている位置でも顔が焼けるほどに熱波を浴びているはずなのだが、肌がただれそうになる様子はない。

 熱さだけであって、痛みなどはないように感じる。


「試したいことというのはこのことなのか?」


 俺はルカにそう聞いてみることにした。


「そうだが、こいつがお前を認めていないようだ」

「まだそうとは決まっていない」


 俺は一歩前へと進んでみることにした。

 先ほどよりも強烈な熱が俺を襲うが、それでも肌に異常はない。

 さらにもう一歩前に進む。普通であれば強い熱を感じるだけで逃げたくなるものだ。それでも俺はゆっくりとその大聖剣の柄を握るために手を伸ばす。

 そして、その剣を握ると同時に炎が俺の腕に纏わりつく。


「私の一族以外でこの聖剣に触れることができたのはお前だけだ。予感はしていたが、本当に握れるとはな」


 腕に纏わりついている炎が消えると熱さは感じなくなった。

 どうやら俺はこの大聖剣に認められたのだろう。


「……試したいことはこれだけか?」

「どこまで耐えられるのかと思っていたが、そうして握ることに成功している。それ以外に試すことなどない」


 俺が握れなかった場合はどこまでこの熱波に耐えられるか試そうとしていたようだ。ティリアといい、ルカといい、四大氏族は実験が好きなのだろうか。


「まぁ今はその聖剣は渡すつもりはないがな。試して良かった」


 彼女なりに何かを得たということだろう。かといって俺が気にするようなことでもないか。


「エレイン様、大丈夫なのですか?」


 熱から逃れるために岩陰に避難していたリーリアが俺の方へと近づいてきた。


「ああ、熱さもそこまで感じない」

「そうなのですね」


 興味でもあるのか目を輝かせて俺の方を見つめてくる。

 後で質問攻めになることは確実だろうな。


「ふふっ、お前が気にすることは何もない。今日のデートは楽しかったぞ」

「一人で楽しんでいたように見えたがな」

「これでも私は乙女なのだ」

「……乙女なら、こんな試練みたいなことはしないと思いますけど」


 リーリアは鋭い目でルカを睨みつける。


「こんなもの、エレインにとっては可愛らしい悪戯のようなものだろ」

「割と精神を使ったのだが?」


 俺がそう言うとルカは「ふっ」と鼻で笑いながら、俺から聖剣を受け取るとそのまま煉獄の門へと納めた。

 それにしてもこの門は凄まじい威力を持っているのは明らかなのだろう。魔の気配が門が開くと同時に逃げていくのがわかったからだ。

 少なくとも弱い魔族であればあの門だけで退けることができるようだ。


   ◆◆◆


「何か考え事か?」


 私、ミリシアは学院で生徒たちの訓練指導をしていた。

 そのつもりだったのだが、レイがそう声をかけてきた。


「え?」

「なんか身が入ってねぇっていうか、そんな感じがしたからよ」

「今朝のルカの話が気になってね。でも、指導はしっかりとしているつもりだから」


 彼女からエレインと一緒にどこかへと出かけると聞いていた。具体的な内容までは教えてはくれなかったが、彼女は彼の教師でもある。

 おそらくは教育に関する何かだろう。そう思って今朝は肯いたけど、一つ疑問に思ったことがあった。それは彼女から甘い香りが漂ってきたことであった。しかしながら、気付いたのは彼女が話を終えて立ち上がった時だ。

 そんな不安が今も残っている。


「……ならいいだけどな」


 そう言って彼は自分のグループの指導へと向かった。

 考えているだけだと何も変わらない。

 数日間、ここで寝泊まりしているわけだけど今日はエレインの家に行くことにしよう。

 ルカと何があったのかを聞くにはエレインに直接聞いた方がいいだろう。

 それから生徒たちの訓練を指導を始めた。

 私の指導方法としては、体の動かし方を徹底的に教え込んだのだ。生徒たちは重心の自然な動かし方をまだ体得していないようで、そのせいで一つ一つの動きがぎこちなくなっている様子だ。

 そのあたりからじっくりと教えていく方がいいだろう。


「オラァ!」


 すると、レイの声が中庭に響く。

 それと同時に木剣が宙に舞うのが見えた。

 どうやら彼はすでに戦闘を模した訓練を始めているようだ。少しばかり早いような気がするが、実戦から学ぶことも多いのも確かだ。


「うわぁっ」


 生徒がバランスを崩して後ろに倒れる。


「しっかり姿勢を低くして、重心を下げろっ。そうしねぇとこうやって倒れてしまうからな」

「はい」

「次っ! いつでも来いっ」


 そうしてまた他の生徒が彼に斬りかかる。

 生徒の方は剣を大きく振り上げ勢いを乗せたまま彼へと袈裟斬りを仕掛けた。しかし、それもまた簡単に防がれて剣をはたき落とされていた。


「がっ!」


 そのまま顔面から地面に叩きつけられたようで、すぐに生徒は立ち上がれないようだ。

 幸いにも大きな怪我はなかったとはいえ、もう少し緩い訓練にした方が良いのではないだろうか。


「次っ!」


 そう思ったのだが、彼の担当している生徒たちは皆熱心なようで不満を持っているような生徒は誰一人いない様子だった。

 あのままでも生徒たちはしっかりと技術を体得していくことだろう。

 あのようにレイのグループは戦闘を通して無理矢理ながらも徐々に重心の使い方を習得してきている。アレクの方もほぼ全ての生徒がある程度できるようになってきている。

 私ももう少しは頑張らなければいけないな。

こんにちは、結坂有です。


ルカによる熱いデートは無事に終わったようですね。

彼女がエレインの何を確認したかったのかはわかりませんが、特に問題が起きることなく終わったみたいです。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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