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デートは突然に

 俺、エレインは今日もユウナとナリアの訓練に付き合っていた。

 同じくセシルも以前と比べて少しずつ強くなっているようだ。聖剣を使わない訓練のおかげか、技の切れは格段に良くなっている。

 そして、学院で今も学生の訓練に付き合っているアレクやミリシア、レイはあれから戻ってきていない。アレイシアから聞いたのだが、彼らはどうやら学院で寝泊まりしているようだ。

 確かに学院の中には仮眠室などがあり、工夫すれば何日も住めるような場所にすることは可能だろう。ともあれ、彼らなら特にベッドがなくても最低限の場所さえあればどこでも寝ることはできるがな。

 まぁ学院からすれば客員なのだ。それ相応の待遇になっていることだろう。


「エレイン様、少しよろしいでしょうか」


 ユウナたちの訓練の指導をしているとリーリアが窓を開けて声をかけてきた。

 この家の訓練場は広いとはいえ、一般家庭での中の話だ。大声を出さなくても声が届くほどの大きさしかない。


「どうした?」

「ルカ・ヘルゲイツさんが来ました」


 そうリーリアは言うと若干不安そうな表情をした。

 確か彼女はアレクたちと共に学院生の訓練に付き合っているはずだ。彼らに関して何か話でもあるのだろうか。


「わかった。すぐに行く」

「……私も行くわ」


 すると、セシルも木剣を鞘に納めてそう言った。

 彼女も学院の生徒だ。無関係というわけでもないからな。まぁ別に来てもいいだろう。

 それから家に入り、応接間へと向かう。

 そこにはルカが足を組んで紅茶を飲んでいたところであった。


「エレインか」

「ああ、何か話でも?」

「そんなところだ。前にも話していたと思うが、デートの話だ」


 そう率直に彼女は言うと俺の横に立っていたセシルが顔を真っ赤にして口を開いた。


「で、デート?!」

「何、男女の仲なのだ。デートぐらい普通だろう」

「なんで教師とデートなのよっ。おかしいでしょ?」


 セシルの言う通りで確かに教師とデートすることはおかしいと思える。

 しかし、俺はその話に肯いてしまった。別に俺に何か不利益になるようなことがないのなら問題はないと思ったからだ。


「あの話は次の剣術競技の後のことだ。少し話が早いような気がするがな?」

「ふっ、学院があの状態だからな。まともに剣術競技をしている場合ではないのだ」

「それでその話を前倒しにということか」

「つまりはそういうことだ」


 そうとは言っても俺はユウナやナリアとの訓練もあるからな。ミリシアに頼まれている以上、中断するわけにはいかない。


「ミリシアたちには許可を取っているから安心しろ。まぁ渋々だったのだがな」


 事前にこの話を学院で訓練を指導している彼らにも話したということだろうか。それなら何も問題はないということだろうか。

 それに一日程度なら訓練の支障になることもないはずだ。この話を断る理由は何一つないか。


「ちょっと待ってよ。エレインとデートってどういうことなのよ」

「エレインのパートナーとなって感情移入したのか?」


 そうルカは彼女を茶化すように言った。


「そ、そんなんじゃないけど」

「なら問題はないな?」


 そう言われてしまったら彼女は何も返すことはできないだろう。今は学院の中というわけでもないため、彼女の立場は非常に薄い状態だ。


「まぁそんな顔するな。エレインを奪いに来たわけではないからな」


 ルカは俺の横に立っているセシルと扉の前に立っているリーリアの目を見てそういった。


「わかった。デートの誘いには乗ろう」

「ふふっ、そうか。では早速行くとしようか」


 すると、彼女は残っていた紅茶を飲み干してゆっくりと立ち上がった。


「……エレイン様、私もついて行ってもいいですか?」


 リーリアはこのデートに同行しても良いと言っていた。


「ああ、大丈夫だ」

「ありがとうございます」


 そういうと彼女はすぐに支度を始めた。

 セシルはというと悔しそうな表情をしていたが、何も恋愛的なデートというのとは違うような気がするからな。

 そのことは帰ってきてから話すとしようか。


「セシル、今日の夜に俺の部屋に来てくれるか?」

「え?」

「少し話したいことがあるからな」

「……分かったわ」


 少し頬を染めながら彼女は返事をした。

 彼女の感情についてはよくわからないが、嬉しそうにしていることから少しは機嫌が戻ったのだろうか。


 そして、リーリアの支度が終わるとすぐにデートが始まった。

 言うまでもないが、聖剣や魔剣などは装備したままだ。リーリアもスカートの中に魔剣を隠し持っていることだろうし、ルカはどんな場所にいても大聖剣を呼び出すことができる。

 そんな状態でデートと言えるのかはわからないが形式上、デートということで俺たちは街中へと歩いて行った。

 魔族の群れが侵入したということもあってまだ警戒の解けていない市民も多いとはいえ、普段と変わらない生活を送っているそうだ。

 主に狙われたのは学院の寮であったからな。他の商店街であったり住宅街はそこまで被害はなかったのだろう。


「そういえば、エレイン。何か変わったと思わないか?」

「……特に変わったところはないように思えるが」

「ふふっ、香りを変えてみたのだ。どうだ?」


 香水の類だろうか。

 まぁどちらにしても薄らとだが彼女から漂ってくる香りがある。爽やかなローズの香りだ。


「いい香りだが、それがどうかしたのか」

「エレイン様、香水を変えてくるというのはアプローチの一つです。ここは否定するのが一番かと思います」


 そう耳元でリーリアが囁いてくる。


「別に否定してくれても構わん。執拗以上にアプローチするだけだからな」


 どういった意味でルカが俺へと関わっているのかはまだわからないが、無駄に相手を刺激するような真似は避けたいからな。

 今のところは穏便に済ませて、彼女の本心を炙り出す必要があるだろう。


「それより、これからどこに行くつもりなんだ」

「ふふっ、カフェだ。デートといえば穏やかな場所でゆったりと過ごすものだろう?」

「……エレイン様、気をつけてください。いつ、彼女が仕掛けてくるのかわかりませんからっ」


 いつも以上にリーリアは俺の近くを歩いている。

 それはルカのことを警戒しての行動なのだろうが、少し歩きづらい。

 どこか余裕そうにクールな表情を浮かべたルカに対して、リーリアは虎のように彼女を睨みつけている。

 一体、このデートはどうなるのだろうか。

 色々と考えてみたが、俺には全く予想すらできなかった。

こんにちは、結坂有です。


更新が遅れてしまい、申し訳ございません。


突然始まったルカとのデートですが、一体何が目的なのでしょうか。

単なる好意からなのか、それともまた別の目的なのでしょうか。気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



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