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たった一人だけの技術

 あれからユウナとナリアとで色々訓練をした。

 セシルもいたのだが、いつも通りの動きができないのか顔を赤くして休憩している。

 彼女曰く、ユウナとナリアの動きが普通ではないということであった。まぁ確かに実力だけで言えば、ユウナはかなり上達している方だと思う。

 とはいえ、セシルも十分に強い。

 思う存分訓練に励んで欲しいところだ。


「きついか?」

「……木剣でこんなことするのは異常なの。流石にあの動きは無理だわ」


 確かにセシルの動きは聖剣の力を前提とした動きだ。

 それぞれ剣の能力に見合った動きをしている。そのために何の能力もない木剣であの鋭い剣捌きは再現できないことだろう。

 しかしながら、技の全ては体の動きにある。ということは聖剣がなくてもその技を体現することができるということだ。

 特殊な力はなくとも動きはどのような剣でも可能なはずだ。


「そうは言っても基本は同じだ。少し慣れ始めてきたらすぐにできるはずだ」

「本当かしら」


 彼女はそう不安そうに言った。

 当然ながら、彼女は今まで厳しい訓練を積んできた。それは彼女の動きを見ればすぐにわかる。


「まぁすぐにでも動けるようになるだろう」

「そうだといいわね」


 彼女は自分のことを過小評価している気がするがな。

 もう少し自分の技に自信を持つことができれば、彼女の剣に重みが増すことだろう。だが、それもすぐに改善していくことになるか。

 そんなことを考えていると、ユウナが俺の方へと歩いてきた。

 先ほどまで俺の指摘通りに技術を磨いていた彼女だが一体どうしたのだろうか。


「エレイン様」

「なんだ?」

「ひ、久しぶりにあの技を見てみたいです」

「あの技?」


 ユウナに見せた技はいくつもあるが、あのと言われても俺には見当がつかない。


「えっと……周囲が光る剣、です」


 なるほど、木剣での『瞬裂閃』か。

 当時は技に名前など付けなかったからな。実際にこの技の名前をつけたのはクロノスだ。見たままを名前にしているが、今後のためにも名前はあった方が意思疎通しやすい。

 確かに大きく空間が捩れるあの技は光っているようにも見えるな。ただ、実際は目の錯覚で実際に光を放っているわけではない。

 まぁ理屈も理解していない幼少の頃であれば誰もが光っているよう思えたことだろう。


「そうだな。今のユウナにも知っておいて問題ないだろうな」


 俺はゆっくりと立ち上がって、木剣へと手を伸ばす。


「え?」


 横にいるセシルはまさか木剣でできるのかと言いたげな顔をしているが、俺の技に聖剣を頼り切るようなものはない。

 元から体得していた技に剣の能力を付与しただけに過ぎないのだからな。

 俺は木剣を体の前にして、瞬間的に鞘から引き抜く。

 そして、自分の周囲に円を描くように斬り裂く。それと同時に自分の周囲に剣閃として光り始める。


「嘘っ」


 セシルは前にも見たことがあると思うのだが、木剣でも同じことができるとは思ってもいなかったようだな。

 それに対してユウナやナリアは俺の技から何かを得ようと分析する目をしていた。


「……綺麗」


 ナリアは美術品にでも触れたかのような感想を第一声に出した。


「エレイン様はやっぱりすごいですっ。今見てもその技を体得できそうにないですからっ」


 ミリシアやアレクたちと訓練をしている彼女でも俺のこの技をすぐに模倣することはできないのだろう。

 とは言っても自分の技を誰かに教えることは今後ないだろう。なぜなら今のところ、俺の技を一つでも習得できそうな人に出会ったことがないからだ。

 まぁ体の使い方が非常に上手いレイであれば、これに近いことはできるのかもしれないがな。彼にはこのような複雑な技術など必要ないことだろう。


「……本当に木剣でもその技ができるのね」

「当たり前だろ」

「聖剣がなくても技は繰り出せる、エレインを見て確信したわ」


 聖剣の力に頼ってばかりではいけないと彼女も思い始めたことだろう。

 彼女はユウナやナリアの訓練を見てそう思い始めていたようだ。そして、先ほどの俺の技を見て確信に変わった。

 意識が変われば全てが変わる。

 ユウナたちの訓練を始めてみた時のセシルはできないとばかり思っていたようだが、今の目には自分にもできると信じている様子だ。


「どんな剣でも技を繰り出すことができれば、技を理解したのと同じだ。何もそこまで難しいわけではない」

「そうなのかもしれないわね。私も頑張ってみるわ」

「……わ、私もその技ができますか?」


 すると、ユウナが俺とセシルとの会話に割って入って来た。その時セシルは一瞬だけだがムッとした表情をした。

 どうやら俺の『瞬裂閃』を習得したいそうだ。流石にここまでの技は無理かもしれないが、同じく光るような剣撃はいくつかある。

 その中でも簡単なものであれば彼女にもできることだろう。


「あの技は難しいかもしれないが、他の技ならできるかもな」

「本当ですかっ! 教えてくださいっ」


 目を大きく開いて俺に近寄ってくる彼女はどこか子供のようにも見える。

 実際はあの頃からほとんど変わっていない様子だがな。それが彼女の強みでもあるようだからそこまで問題はないだろう。


「そういえば、ユウナとエレインの動きって似ているわよね。それはどういうこと?」


 どうやらセシルも気が付いたようだ。ここまで近くで訓練を見ていては誰でも気付くことなのかもしれないな。


「ああ、ユウナとは幼い頃に一緒に訓練をしていたからな」

「エレイン様に少しでも追いつきたくて、見様見真似ですが頑張ってきましたからっ」

「あの頃にしっかりと教えたことはなかったがな。うまく体現できていると思う」

「ほんとですかっ」


 ユウナは嬉しそうに飛び上がった。

 実際のところ、動きを真似ているだけで何一つ体現できていない。

 だが、俺の技術とはまた違った意味で彼女は技術を身につけている。それはアレクやミリシアのそれではなく、レイの技術に近い。


 もしかすると、ユウナも独自の技を身につける段階に入ってきたのかもしれないな。

 地下施設では毎日特殊な訓練を行って発現させた技術だが、彼女にもそれに近いことが起きているのだろう。

 今後の彼女や訓練を共にしているなりあの進化にも目を向けたいところだ。

 もちろん、セシルの進化も期待したい。

こんにちは、結坂有です。


独自の技術を身につけるというのは難しいことですが、ユウナやナリアもしっかりと自ら技術を編み出して行っているようです。

もちろん、セシルも持ち前の剣術から派生したものを作ろうとしているのでどちらの成長も見てみたいところですね。


それでは次回もお楽しみに。



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