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情報の優位性

 朝食をリーリアとセシルと三人で食べていると、疲れた表情でアレクたちが帰ってきた。


「……ほんとに来てたのね」


 ミリシアはセシルを見るなり、目を細めてすぐにそう言った。


「そうよ。悪いかしら」

「なんでもないわ。ただ、エレインと仲良くしているのが少し……」


 次第に彼女の顔が赤くなっていき、俺たちから顔を背けた。

 すると、横に立っていたユウナが俺の方を向いて口を開いた。


「ミリシアさんは少し疲れているみたいでして、私ももう限界ですよ」


 目元が緩んでしまってかなり疲れ切った様子でユウナは話す。確かに夜通し働いていたとしたら疲弊してしまっているのも無理はないか。


「ちょっと、私は別に疲れてなんかっ」

「いいだぜ? 疲れたって言ってもよ」


 レイがミリシアの肩を叩いてそういうが、それでも彼女は首を振って否定している。

 疲れていないのだとしたら何が原因なのだろうか。


「疲れたからじゃなくて、ただ羨ましいなって思っただけよ」


 そう語気を強めて彼女は言った。一体何が羨ましいのかはわからないが、おそらくはそういうことなのだろう。

 ただ、日夜続けて体を動かしているわけだ。無自覚であっても体は疲弊してしまっている。すぐに休んだ方がいいはずだ。


「まぁどちらにしろ、体を休めた方がいい。また魔族の群れが来ないとも限らないからな」

「そうだね。エレインの言う通りだよ」


 アレクがそうミリシアの方を向いて俺の助言を肯定する。

 すると、彼女はムッとした表情をして、そっぽを向いた。どういった感情が彼女をそうさせているのか全くわからない。


「エレイン様もそう言っていることですし、休みましょうよ〜」


 ユウナがそう甘えるように言うと、ミリシアは渋々承諾した。

 ベッドに横になるだけでもいいから彼らには休んで欲しいところだ。


「……本当に仲がいいのね」


 彼らが地下の方へと向かっていくのを見ながらセシルがそう呟くように言った。

 仲がいいのかどうかはわからないが、かなりの時間を地下空間で過ごしてきたわけだ。お互いにある程度のことは理解し合っているつもりだ。


「子供の頃から共に訓練をしてきたからな。ある程度のことは理解し合っている」

「へぇ。私なんか毎日学院で顔合わしているのに全然仲がいいとは言えないわね」


 そう言うとほんの少しだけ頬を膨らませた。

 セシルと知り合ってまだ一年と経っていないのだ。彼らと同じようにセシルを信頼できるかと言われれば疑問が残る。


「言われてみればそうかもな」


 俺がそう肯定すると、彼女は大きくため息を吐いた。


「エレイン様、昨日はよく眠れましたか?」


 そういえば、セシルが風呂でのぼせてしまってから俺は彼女の部屋で寝ることにした。

 一緒に二人で寝るということは初めてだったが、案外にも心地よい香りでかなり疲れが取れた。


「ああ、おかげさまでな」

「……ちょっと待って、私がエレインの部屋で寝てたってことはっ」

「エレイン様は私の部屋で一緒に睡眠を取りました」


 リーリアがそういうとセシルは項垂れて落ち込んだ。


「ほんと、私ってダメダメね」


 何も落ち込むようなところではないのだが、こうもあからさまに落ち込まれてしまってはこちらとしても対応に困るのだが。

 横に座っているリーリアの方を見てみると、どこか満足げな表情をしている。

 一体どのようなことがあったというのだろうか。

 裏で高度な戦いが繰り広げられているのかもしれないと自覚しつつも、俺には到底理解のできないものなのだなとも感じた。


   ◆◆◆


 私、フィレスは地下の部屋でブラドさんを待っていた。

 彼はもう聖騎士団団長ではなく、私自身も聖騎士団関係者でもなくなった。ただ、聖騎士団ではなくても人類のために人助けできることはある。

 先ほどブラドさんの言っていた諜報部隊として魔族や裏切り者の情報を集めることだ。

 もちろん、それには危険を伴うものなのかもしれないが、それでも私は彼とともに部隊として任務を全うしたいと考えている。

 魔族で苦しむ人類が一人でも多く助けられるのなら私はなんでもするつもりだ。

 そんなことを考えているとブラドさんが戻ってきた。


「今回の事件について調査員がまとめてくれた資料だ。これから本格的に復旧作業に入るみたいだな」

「はい。調査には私も参加しました。第二防衛線では小さき盾の人たちがほとんどの魔族を倒してくれたおかげで、防壁の兵士たちは全体で数体程度しか倒していなかったです」


 あの小さき盾は異常なほどに強い。

 以前、魔族の調査へと向かったときに攻撃を受けたことがあったが、その時もかなりの活躍をしてくれた。

 まさか二人であれほどの魔族を一瞬で倒せる人智を越えているとしか言いようがない。


「第二防衛線のことは特に問題はない。問題なのは魔族がどう第一防衛線を突破したかだ。資料によると、左右に展開している前線基地から破壊されていったと書かれている」


 そう言ってブラドが資料の内容を指さした。

 これは四大騎士の一人であるティリアの証言を元に作られた資料のようで、前線での詳細な情報が細かく書かれている。


「そうですね。第一防壁もかなり堅牢な作りをしていますから、そう簡単に突破は難しいと思います」

「ああ、次に左右の基地にいた人たちなのだが、暗闇から急に魔族が現れたと言っている。当然ながら、あの日の夜は新月で月明かりなどが全くなかったからな」


 確かに言われてみれば真っ暗だったことを覚えている。

 ただ、第二防衛線では四大騎士のルカが火の粉を大量に撒き散らしたことで明かりを確保してくれていた。


「とは言っても、暗いから魔族がわからなかったというのは妙だ。何か裏があるはずだろう」

「それが私たちが調べることですか?」

「あれほどの魔族をどのように動かしてきたのかが気になる。魔族の中にも司令塔のような役割を持つ奴がいるのは知っているが、何も知らないはずの魔族があれほど円滑に作戦を組み上げることができるとは考えられないからな」


 ブラドさんの言う通りで、ここまでスピーディに作戦を実行できるわけがないのだ。

 だが、それらの情報は全てあの氏族監督官が手引きしたとは考えられないだろうか。彼ならあの地下連絡通路も知っていてもおかしくはない。


「氏族監督官はどうなのでしょうか?」

「怪しいのは確かだが、それだけでは不十分だ。聖騎士団も防衛線から撤退していたからな。もしかすると、この議会に情報を流している裏切り者がいる可能性があるだろう」

「……議員の中に、ですか?」

「ああ」


 幸いにもこの地下部屋は外部に私たちの声が聞こえない構造になっている。もともとは地下倉庫だった場所を改造して作られているのだ。

 かなり頑丈な壁に守られているため、音が外に漏れることは全くないことだろう。

 ただ、私たちがいるこの議会に敵がいるのはあまり考えたくはない。


「聖騎士団の情報はもちろんそのまま議会にも流れている。だから、議員の中に敵がいてもおかしくはない」

「それでは、私たちはこれから議員の調査に入るのでしょうか」

「もちろんだ。議員だからといって安心はできない。不審な動きをしている議員を全て調べ上げる必要があるな」


 ブラドさんがそういうと同時に私の方を向いた。

 これから仕事をしに行くという合図だ。いつも彼が移動をする直前に私に目を向けてくる。

 私は軽く頷いて彼の後をついていくことにした。

 ここまで細かく情報がまとめられていれば、どこで何を調べるべきなのかわかってくる。こうして情報を調査して行くことで、裏で動いている裏切り者を暴くことができる。

 情報を持っている方が優位に立ち回れるのだ。

こんにちは、結坂有です。


深夜投稿となってしまい、申し訳ございません。


諜報部隊がついに動き始めましたね。

議員の中に裏切り者がいるという前提で怪しい人物を調べ上げていくようです。果たしてどうなるのでしょうか。

そして、魔族の群れは本当にいなくなったのでしょうか。その辺りも気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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