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束の間の休暇

 聖騎士団本部の廊下で俺を呼ぶ声が聞こえた。

 振り返ると、そこにはリーリアがいた。

 議会に報告するようにと俺が命令したのだが、おかげでブラドがここに来たわけだ。


「エレイン様、ご無事で何よりです」


 そう言って俺の横に立つと、ミリシアとセシルは一瞬だけムッとした表情をした。

 彼女は俺のメイドであり護衛だ。俺の横に立つのは当然のことなのだ。


「大したことはしていない。ミリシアやアレクの方が頑張ってくれている」

「……私たち小さき盾は何もしてないわよ。ただ、防壁近くの敵を殲滅しただけ」


 ミリシアはそういうが俺としては裏切り者を見つけ、学院の援護へと向かっただけという簡単な仕事だ。

 防壁近くの戦闘は魔族の数が多い分、かなりの大仕事だと思うのだがな。


「実際に魔族の大部隊と戦ったのは小さき盾のはずだが?」

「僕たち四人で倒したって言っても全体で二〇〇と少しだよ。確か、侵入した魔族は三〇〇以上と聞いてるけれどね」


 アレクがそう補足するように答えた。

 俺も数えているわけではないが、大通りを埋め尽くすほどの数だったのは覚えている。

 イレイラで斬撃の数を増やさなければ、俺も苦労したことだろう。


「数の話ではないだろう」

「でもよ。俺らのところにリーダーみてぇな奴はどこにもいなかったぜ?」

「と、とりあえずあなたたちが強過ぎるってことだけは分かったわ」


 すると、リルフィが苦笑いをしながら言う。

 確かに今するべきことは成果の話ではないだろうな。


「そういえば、四人で倒したと言ったな。ユウナはどうしているんだ?」

「防壁の方で後片付けを手伝っているわ。思った以上に防壁の損害が激しくてね。それに第一防壁の方にまた進軍しないといけないからね」


 言われてみれば第一防壁が突破されているそうだな。

 四大騎士の人たちも向かっているというのなら、ユウナ一人だけでも十分か。


「なるほどな」

「エレイン様はこれからどうなされるのですか?」


 特には考えていないが、夜ももう遅い。

 今日は一旦帰って一休みする必要があるだろう。無自覚とはいえ、体はかなり疲弊しているはずだからな。


「家に帰って休むことにする」

「じゃあ、僕たちはユウナの手伝いに向かうよ」

「まぁ彼女だけでも大丈夫だろうけどね」


 そういえば、ユウナは帝国で俺たちよりも早く軍へと入隊していた。現場での仕事は彼女の方がうまくやっていけるはずだ。

 ただ、まだ一五歳の彼女にどれほどの経験があるのかはわからないがな。


「あと、ブラドさん。アレイシア議長が話したいことがあると言っていました」


 すると、横に立っていたリーリアがブラドに対してそういった。

 もう聖騎士団団長ではなくなった彼は今は議会の補佐として働いているようだ。その補佐としての仕事でここに来たわけだが、氏族監督官は魔族になって死んでしまったからな。


「わかった」

「……エレインは休むのよね?」


 すると、セシルが俺に聞いてきた。


「ああ。流石に体を休める必要があるからな」

「だったら、私もエレインの家に行っていいかしら」

「エレイン様は大変お疲れのようですので、今回はご遠慮ください」


 俺の前に立ってリーリアがそういうが、別に家に来る分には問題がないようにも思えるがな。

 彼女の家である学院寮も今は議会の調査で慌ただしい状況だろうしな。


「家に来るだけなら問題ない」

「エレイン様……。わかりました」

「よかったわ」

「私は家に帰るわ。お母さんも心配していることだし」


 リルフィは実家から通っていたようで寮生ではない。とは言っても、あんな事態があった後だからな。

 身内に心配をかけることはしたくないはずだ。


「その方がいいわね」


 それから俺たちはそれぞれ向かうべき場所に向かった。


   ◆◆◆


 翌日の朝。私、セシルはエレインのベッドの上で目が覚めた。

 昨晩の記憶は最悪なことに何も覚えていない。


「わ、私何をしていたんだろう」


 最後に覚えていることは、聖騎士団本部からエレインの家に来たことだけは覚えている。


「起きたのか」


 そう言って部屋の中に入ってきたのはエレインであった。

 まだ早朝のはずなのに彼は剣を装備して、すぐにでも学院に向かうことができるように服まで着替えている。


「ごめんなさい、昨日の記憶がほとんどないの」

「そうだろうな」

「もしかして私、何かいけないことでもしたのかしら」


 少しだけ不安になってきた。

 彼に嫌われるようなことをしていないのかが気になる。


「一緒にお風呂に入ってのぼせてしまったみたいだ。顔を真っ赤にして倒れるものだから驚いた」

「……一緒にお風呂に入っただけ、なの?」

「まぁ忘れているのならいいのだがな」

「え? 気になるのだけど?」


 そう聞いてみるが、彼は答えるようなことはしなかった。

 昨日の夜に彼と一体何をしたというのだろうか。


「もしかして……いやらしいこと、とか?」

「詳しいことは言わないが、そういった類のことだな」


 急に恥ずかしくなってきた。

 おそらくなんだけど、リーリアと対抗するためにその場で何かをやったのだろう。

 私自身も自棄になってとんでもないことをしてしまったようだ。


「まぁあの程度のことでセシルのことを嫌に思うことはないからな。気にしないでくれ」

「そう、そうなのね。ごめん」


 彼は私のパートナーなのだ。今後の関係に傷が付かないのはいいことだけど、私がしたことがなんなのかが気になる。


「それより、朝食は食べるか?」

「うん。いただくわ」


 それからリビングへと向かってリーリアの作った朝食を食べることにした。

 彼女の料理はかなり美味しく、これは私も精進しなければいけないなと思う。

 エレインの横に立つ資格を得るには料理もできる必要があるのだ。私の料理をエレインが美味しいと言ってくれるのかはわからないが、今後そのことについても考える必要があるだろう。

こんにちは、結坂有です。


魔族の攻撃が終わり、徐々に平和になり始めましたね。

しばらくは平和な時間が続きそうですが、そういった時間はいつまで続くのでしょうか。

そして、セシルがしてしまったヤラシイこととはなんだったのでしょうね。


それでは次回もお楽しみに。



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