表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/675

戻っていく日常

 議会で色々と事情を聞かれたため、すでに夜になってしまった。

 今、俺はリーリアと一緒に議会から家に帰っている途中だ。

 アレイシアはもう少し仕事が残っているとのことで俺よりも帰りが遅くなるそうだ。机には書類のようなものがなかったのだが、どういった仕事が残っていたのだろうか。

 まぁ俺が気にするのは意味がないのかもしれないな。


「エレイン様、家に着いたらすぐにお風呂に入りましょう」


 すると、横を歩いているリーリアが話しかけてきた。

 確かに戦闘実験があったりとかなり疲労が溜まっていることだろう。

 体に問題がないとはいえ、精神的にもお風呂でゆったりする方がいいかもしれないな。


「そうだな」

「帰ったらすぐにお風呂の用意を致しますね」


 そう言っている彼女はどこか嬉しそうにしている。


「……一緒に入るのか?」

「ええ、もちろんです」


 なるほど、そういった魂胆だったのか。

 まぁ心配をかけてしまったのは申し訳ない。何よりも約束を破ってしまったのだからな。

 ここは彼女に流れを許してもいいだろう。

 このことに関してはアンドレイアとクロノスもそこまで怒ることはしないようだしな。


「まぁいいか」

「よ、よろしいのですか?」

「仕方なかったとはいえ、約束を破ったようなものだからな」

「わかりました」


 彼女はそう言って赤くなった顔を隠した。

 改めて一緒にお風呂に入るというのは恥ずかしいものなのだろう。

 一度や二度ともに入ったからといってそう慣れるようなものではないからな。

 俺も若干だが、理性が外れないように感情を制御しなければいけない。

 心は落ち着いているとは言ってもこの体は思春期の真っ只中だ。油断していてはすぐに理性が崩れ去ってしまうことだろう。


 それから家に入り、夕食を食べ終えるとリーリアはすぐに風呂の準備を始めてくれた。

 俺は風呂が溜まるまでの間、少しばかり休憩することにした。

 すると、地下からミリシアが来てくれた。

 どうやら俺の気配を感じ取った様子だ。


「エレイン、無事だったのね」


 彼女は俺を見るなり涙を溜めてそういった。


「色々と大変だったがな。先ほど帰ってきて夕食を食べた後だ」

「……そうなのね。魔族と戦うっていうからどうなるのかと心配だったわよ」

「ティリアは俺の能力を調査したかったようでな。長時間戦闘を続けて俺の詳しい情報を手に入れようとしていたな」


 俺がそう言うとミリシアは溜まっていた涙を拭って納得したように頷いた。

 彼女もまた感情を強くコントロールできる人間だ。特殊な訓練を受けていたと言っていたが、まさか俺と同じ訓練を受けていたとは考えられないだろう。


「それってまた危ないことにならない?」

「そんなことはないだろう。俺もある程度手を抜いてきたからな」


 実験場での戦いははっきり言って手を抜いていた。

 しかし、魔族が溢れ出てきた時はカインの前で一瞬だったとはいえ本気の技を出してしまったのは確かだ。

 ただ、あれはそう簡単に分析できるような代物ではないからな。すぐに対策されるようなことはないはずだ。


「それならいいんだけど、またエレインが巻き込まれることがあったらと思うと心配ね」

「そこまで気にする必要はない。それにミリシアはまだこの国での市民権はまだないだろ」

「そのことなんだけど、私たちはエルガルト家に入ることにしたのよ」


 エルガルト家、確かこの家の持ち主だったな。

 アレイシアが手配してくれたのだろうか。議長になってすぐに彼女らに市民権を与えたのだろう。


「分家にあたる家に入ったんだな。間違いではない判断だと思う」

「そうよね。ちょうどいい立ち位置だと思っているわ」


 これからの彼女たちの役割を踏まえれば、正解と言えるな。


「ところで、これから何かするの?」

「ああ、これから風呂に入るところだ」

「……ほんの少し早ければ一緒に地下部屋でシャワーでも入れたのに」


 確か地下にはシャワールームがあったはずだ。


「いや、シャワーよりは風呂に浸かりたい気分でな。精神的にもゆっくりしたい」

「ふーん、リーリアはいないみたいだけど?」

「風呂の準備をしてくれている」

「まさかとは思うけれど、一緒に入るなんてことはないわよね?」


 そう前のめりになって彼女は俺を睨みつけてくる。

 ここはリーリアのためにも否定しておいた方がいいだろうか。いや、嘘をつく必要もないか。

 ここは正直に……。


「エレイン様、お風呂の準備ができました」


 そう考えていると、リーリアがリビングへと入ってきた。

 その様子をミリシアがジト目で見つめた。


「……じゃ、ごゆっくりと」


 少しだけムッとした表情で彼女は地下へと向かっていった。


「お邪魔でしたか?」

「大した話はしていないからな。気にしなくて大丈夫だ」

「そうなのですね」


 まぁはっきり言えば話を止めたといったところなのだがな。

 この埋め合わせは今度するとしようか。


「では、お風呂に行きましょうか」

「ああ」


 それから脱衣所へと向かう。

 風呂場から漂ってくる石鹸の香りは気分を安らげる効果があるようで自然と精神が落ち着いていくのがわかる。

 丸一日とゆっくりと休憩していなかったからな。

 すると、リーリアは脱衣所の扉を閉め、鍵まで閉めた。


「これで大丈夫ですね」

「……何がだ?」

「いいえ、なんでもありません。早く入りましょう」


 そう言って彼女はサッと上着を脱いだ。

 恥じらいがないかのように脱ぎ始めたのだが、顔は真っ赤で恥じらっているのが見て取れる。

 俺も彼女だけに恥をかけないためにもすぐに脱ぎ始めることにした。

 それからはお風呂で二人、ゆっくりとすることにしたのであった。

 とは言っても精神的にはそこまでゆっくりすることはできなかったのだがな。それはリーリアには言わないでおこう。


 風呂から出た俺は服を着替えていた。


「服がかなり汚れていますので綺麗に洗っておきますね」

「ああ、助かる」


 戦闘実験で何時間も戦い続けていたからな。

 さらに言えば、洞窟となってしまった場所でも戦った。もちろんだが服は土などで茶色く汚れていた。


「エレイン様の服を綺麗にするのは私の務めですから」

「……よくわからないが、お願いする」

「はい」


 どこか嬉しそうに俺の服を持ったリーリアは脱衣所を後にした。

 そして、自分の部屋に向かうとすぐにアンドレイアとクロノスが現れた。


「お主、今度わしらと風呂に入るぞ」

「はいっ。私たちもお風呂というものを経験してみたいです」


 どうやら二人はお風呂というものに入りたいそうだ。

 精霊は風呂に入らずとも体を清潔に保つことができる。そもそも生物ではないのだから当然だが、それでも風呂には興味があるのだろう。

 別に時間を見計らえば彼女たちと一緒に入ることは可能だろう。


「そうだな。たまにはいいかもしれないな」

「ふむ、そもそもわしらが最初にお主と交わったのじゃからの」

「……語弊のある言い方だがな」


 体を突き刺されたのだ。ある意味では交わったと言える。


「それにしても、ご主人様はいつも逞しいですよね」

「どういう意味だ?」

「その、どんな時でも堂々としていると言いますか……。とてもかっこいいのです」

「このわしが見込んだからの。当然じゃな」


 クロノスがそう俺のことを大袈裟に褒め称えるのは今に始まった事ではない。それにアンドレイアの自慢そうにするのも同じだ。

 とは言っても彼女たちがここまで俺のことを慕ってくれるのはどうしてだろうか。

 俺は確かに特殊な人間なのかもしれないが、ここまで慕ってくれるのはどうも納得できない。

 やはり帝国の調査書に書かれていたあの”非人間”ということが関係しているのだろうか。だが、それを知る術は今となってはもうないか。

 今後ともそういったことを調べていく必要があるのかもしれない。

こんにちは、結坂有です。


長い一日が終わり、ゆっくりとお風呂に入ることができたエレインですが、今後とも何か事件が起きるかもしれないですね。

そして、何よりもティリアたちの動向が気になりますよね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

Twitterではここで紹介しない情報やたまに呟きなども発信していますので、フォローしてくれると助かります。

Twitter→@YuisakaYu

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ