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議会は動く

「大変です!」


 そう職員の人が慌てて議長室に入ってきた。

 一体何があったというのだろうか。


「どうなされましたか?」


 ユレイナが私の代わりに質問してくれる。

 すると、彼は血相を変えて私の方を見た。


「フリザード家にディゲルド様が攻撃を仕掛けたようですっ」


 フリザードとディゲルドはどちらも四大騎士だ。

 そういった氏族は互いに協力し合う関係のはずなのにどうして攻撃をしたのだろうか。

 そして、何よりも彼らが戦うということは自然災害のようなことが起こってしまう事になる。

 フリザードは大寒波を、ディゲルドは天災を引き起こすことができる。


「アレイシア様、どうされますか?」

「……確か、私たちには議会軍のような軍隊はいなかったわね」


 以前、議会の権力が暴走した際に軍隊は聖騎士団に全て飲み込まれてしまったと聞いている。

 そして、聖騎士団も今は議会の命令に従わなくても良い状況になっている。


「聖騎士団にも連絡はしたの?」

「しましたが、彼らは人間の戦いには興味がないとの返答です」


 つまりは動かないということか。

 もちろんだが、彼らには彼らの仕事がある。

 魔族の防衛に関して言えばいつ襲ってくるのかわからないのだ。そういった状況で防衛の手を緩めることはできないだろう。


「ブラドを呼んできて」

「はっ」


 私はそう職員の人に命じた。


「ユレイナ、リーリアに連絡できるかしら」

「連絡ですか?」

「ええ、今頃だったら学院は放課後になってるはずよ」

「わかりました」


 そう言って彼女も議長室から出て行った。

 私自身も自由に走れるのであれば、率先して行動に出るのだが今の状況ではできない。

 部下に命じることしかできない自分を呪いたい気分だ。

 エレインのためと議長の座に就いたとはいえ、早速こうした事態に巻き込まれるとは全く今日はついてないわね。


   ◆◆◆


 職員に連れられて俺、ブラドは議長室へと向かった。

 今の俺にできることは限られている。しかし、彼女の補佐などは勤めることができるだろう。


「失礼しますっ」


 職員が議長室の扉を開けた。

 すると、そこにはアレイシアが座っていた。


「ブラド、フリザード家に行ってくれるかしら?」

「……俺には彼らを止めることはできない」


 フリザードとディゲルドが戦っていると言うことは先ほど職員の人が伝えてくれた。

 確かに大問題ではあるのだが、今の俺には彼らを止めるほどの権力も力もない。


「止めることはしなくていいわ。あなたにして欲しいのはエレインを確保して欲しいだけよ」

「エレイン、か」

「フリザード家に自分の意思で行ったみたいだけど、私たち議会が奪ったとすれば彼女も何も言わないと思うの」

「確かにそうかもしれないな」


 彼はミリシアたちの安全を確保するために自らの意思で捕まったと聞いている。

 だが、エレインの意思に反して奪われたとなればフリザードも何も言えないはずだ。


「お願いできる?」

「ああ、いいだろう」


 それから俺はすぐに準備に取り掛かった。


 俺はフェリスと共にフリザード家へと向かった。

 先ほどまで雷鳴が轟いていたが、今は止んでいる。

 もしかすると、戦闘が終わってしまったのではないだろうか。

 いや、それにしても寒さを感じていない。フリザードがあの大奥義を使えばここ一帯が氷漬けになっているはずだ。


「どうかしましたか?」


 そう考え込んでいる俺にフェリスは話しかけてきた。もちろん、フリザードらの力を知らない。


「なんでもない。エレインを早く見つけるとしようか」

「わかりました」


 そう彼女が返事をした後、俺たちは急いで屋敷の方へと向かった。

 そして、屋敷にたどり着いたのだがそこにはや建物というものがなくなっていた。

 正確には地面が陥没して大きな穴が空いていると言っていい。


「な、何が起きたのでしょうか?」

「わからないな。とりあえず、下に進むか」

「はい」


 フリザード家の屋敷には地下に大きな実験場があると聞いている。

 どのような実験をしているのかは公開されていないが、公にできるような実験ではないことは確かだろう。

 穴の端にある亀裂を伝って俺たちは下の方へと進んでいくにつれて寒さを感じる。

 フリザードが奥義を発動したようだ。

 かなり小規模なものだが、本気で戦ったことが周囲の状況を見て取れる。

 壁から滴る地下水が形を残したまま凍ってしまっている。氷柱になる前に凍ってしまっているようだ。

 これほどに強烈な寒波を発動できるのはフリザードの聖剣以外はありえない。


「っ! これは……」


 降りてすぐに見つけたのは魔族の骨だ。

 ここで何らかの戦闘が起きていたのは明確だが、まさか魔族だったとはな。

 それにここまで骨を綺麗に切断されているのは見たことがない。剣で断ち斬られたはずなのだが、断面が研磨されたかのように平らになっている。

 エレインが斬ったのだろうか。


「先に進むか」

「は、はいっ」


 それから穴の奥へと進んでいく。

 そこら中に魔族の骨が散らばっており、明らかに一〇〇体以上がここにいたということになる。そして、その骨のどれもが綺麗に切断されていたのだ。

 ありえない状況ではあるのだが、実際に起きているとなれば受け止めざるを得ない。

 しばらく進んでいくと人の気配を感じた。


「しっ」

「っ!」


 フェリスを腕で壁に寄せて隠れた。

 身を隠しながら俺は顔だけ壁から出して先の様子を確認することにした。

 顔を出した瞬間、エレインと一瞬だけ目が合ってしまった。

 まさか、この距離で勘付かれたというのだろうか。まぁ彼に気付かれただけで、その周りにいる人には気付かれていないようだ。


「ハーエルっ。ここを破壊したのは許されない行為よ」

 そう話しているのは現フリザード家当主のティリアだ。

 そして、ハーエルというのはディゲルド家当主である。その二人が言い合っている様子だ。


「あ? 魔族をここまで溜め込んでた一族に言われたくねぇよ!」

「私のことはどう言ってもいいけれど、先代の悪口は聞き捨てならないわね」


 魔族を溜め込んでいた? 何を言っているのかはわからないが、あの魔族の骨の山を見れば確かにそういうことなのだろうな。


「ふざけんじゃねぇ。いくらなんでも規約違反だろ」

「……それはディゲルドも同じことよ。こうして私の屋敷を消滅させたんだから」

「地下が空洞だから仕方ねぇだろっ」


 そう言い合っている中、エレインの横に立っている女性が声を出した。


「ティリア、ここで言い合っている場合ではないわ。すぐにこの穴から出た方がいい」

「それもそうね。ここだと落ち着いて話せないからね」

「誰のせいだろうな」

「あなただけには言われたくないわよ」


 氏族の会話は何度か聞いたことがある。あの人たちはいがみ合っているように見えて実はそうではないのだ。

 犬猿の仲だとよく言われているが、俺の見立てではそこまで仲が悪いというわけではないようだ。

 とはいえ、ここで彼らに別の場所へと移動されてはエレインの奪取ができなくなる。


「フェリス、エレインを捕らえろ。援護は俺がする」

「……はいっ」


 そう言って彼女が走り出した。

 それと同時に俺は魔剣へと手を添えた。

こんにちは、結坂有です


更新が大変遅れてしまいました…

申し訳ありません。


それではまとめです。

エレインを奪取するためにアレイシアがついに行動に出ました。

果たしてこれからどういった展開になっていくのか、気になりますね。


数時間後には次回を更新できると思いますので、お楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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