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突破された結果

 雷鳴が鳴り響いた直後、この屋敷の門が吹き飛ばされた。

 俺は窓からそれを確認した。

 横にいるティリアも信じられないと言った表情をしている。


「あれはなんだ?」

「……ハーエル・ディゲルド。どうしてここに」


 すると、俺の後ろに立っていたカインが声を上げた。


「氏族はお互い戦わないって約束ではなかったの?」


 どうやら門を破壊したのはハーエルという大騎士の一人だそうだ。

 しかし、そうした氏族同士は戦うようなことをしない約束があるようで、彼がどうしてここにきたのかは彼女たちもわかっていない様子だ。


「約束事だけど、破ったところで何も罰則がないのもまた事実よ」

「魔族を生捕にしているのが問題か?」

「絶対に知らないはずよ。内部の人が告発したわけでもないだろうし……」


 言われてみれば地上にいるときは魔の気配は感じられない。おそらくは氷漬けにしているからそういった気配が感じられないのだろうな。

 普通に屋敷に入った程度ではここに魔族がいるということはわからない。

 屋敷の人もティリアに対してかなり忠誠を誓っていることから告発したという可能性も低い。

 であれば、何か裏があるのかもしれないな。


「とりあえず、どうするの?」


 カインが話し合いよりもこの状況をどうするかをティリアに聞いた。


「そうね。とりあえず、彼を追い出さないとね」


 そう言って彼女は聖剣を引き抜いて戦闘体制に入った。

 大騎士に対抗できるのは大騎士しかいないようだからな。


「俺はどうすればいいんだ?」

「……武器を返すわ。でも、逃げたりしたらどうなるかわかってるわね?」

「別に混乱に乗じて逃げることはしない」

「それならいいわ」


 ティリアはそう言って部屋を出て行った。

 屋敷に侵入してきたディゲルドという大騎士のことは彼女に任せるとして、俺は言われた通りに自分の聖剣と魔剣を取り戻すことにした。


 保管庫で保管されていた自分の剣を取り戻した俺はすぐに装備することにした。


『そんなボロボロになって……。一体何をしたんじゃ?』


 すると、魔剣の中からアンドレイアが話しかけてきた。

 体はカインの聖剣で修復してもらったとはいえ、彼女の目は誤魔化せないようだ。

 カインは保管庫の外で待っているため、今ここには俺以外誰もいない。


「まぁ訓練みたいなものだ」

『どんな訓練なんじゃ……』

『ご主人様、ご無事で何よりです』


 クロノスも俺のことを心配していたようだ。


『それにしても、禍々しい力が渦巻いておるの』

「禍々しい力?」

『精霊の力ですね。直接現象を引き起こすことのできる精霊はごくわずかです』


 四大騎士の持っている聖剣は特別なものでとても強力なものだと聞いている。それはルカ、マフィ、ティリアの能力を見てよく理解している。

 あのような能力を持っていてはもはや剣術など無意味だろう。圧倒的な力の前では技術は役に立たないのだからな。


『まぁわしらも異常な存在じゃ。気にすることはない』


 確かにアンドレイアやクロノスの時間を操作する能力は異質を極めていると言っても過言ではない。どのような力を持っていたとしても時間を操られてしまってはどうすることもできないからな。


「っ! ちょっと!」


 すると、保管庫の扉の外からカインの声が聞こえた。

 その直後、バチバチと言った強烈な電撃の音も聞こえてきたのだ。

 外で一体何があったのだろうか。

 俺は急いで扉を開けると、地面に座り込んだカインがいた。


「何があった?」

「……外で電気が流れて行ったの」

「電気が流れた?」


 具体的にどういったことが起きたのかはわからないが、少なくとも彼女はかなり怯えているのは確かだ

 彼女の聖剣では怪我を修復する能力だけで、攻撃するための能力とは真逆だからな。


「俺の近くにいれば安全だ」

「う、うん」


 足がまだ震えているものの彼女は俺の横へと引っ付くように近寄ってくる。

 ここまで近いと少し歩きづらいのだが、彼女が安心すると言うのであれば別に構わない。

 そして次の瞬間、空気が震えるほどの轟音を立てながら地割れが起きていく。まるで大地震かのような状況だ。


「えっ、地震?」

「違うな」


 地震にしては妙な揺れ方だ。

 それにこの轟音は雷に近いもの、おそらくはカインが先ほど見たものと何か関係があるのだろうか。

 ただ、ここが危険なのには変わりない。


「ちょっ……」


 俺はカインを抱き上げて地割れが起きている中、屋敷を脱出することにした。


   ◆◆◆


 私、ティリアは電撃が通気口を入っていたのを見てすぐに地下へと走り込んでいった。

 しかし、ほんの少し遅かったのか轟音とともに天井が崩れていく。

 もしかしてこの力、あの奥義を使ったのだろうか。


「人の屋敷を破壊するとはいい度胸ね」


 ここまでされては私としても許されない行為だ。

 門ぐらいならまだ穏便に済ませようと考えていたのだが、これは屋敷全体を破壊するほどの攻撃だ。

 エレインなら無事にカインとともに脱出したことだろうが、地下を破壊されては実験することもできない。

 それに、魔族が街に解き放たれる前にディゲルドをなんとかしないといけないだろう。


 それから地下の実験場へと辿り着いた。

 すると、そこにはハーエルがいた。

 私はすかさず聖剣を地面に突き刺した。

 その直後、その聖剣を中心に地面が氷漬けになる。


「へっ、来やがったなっ」


 しかし、その相手の動きを止める攻撃を彼は電撃になって避けられてしまう。

 そしてすぐに彼は私の目の前へと現れる。


「っ!」


 聖剣を引き抜き、目の前に現れた電撃の剣を受け止めた。

 バチバチッと恐ろしい音を立てながら、彼は話しかけてきた。


「魔族はどこだ? 言ってみろよ」

「……なんのことかしらねっ」


 私はそう言って彼を弾き飛ばした。


「わかってんだぜ? 地上では気付かなかったが、ここにこれば魔の気配はわかる」

「それがどうしたの?」

「二〇? 三〇? 少なくともそれぐらいはいるだろ」


 私は表情を変えずに彼の攻撃を警戒する。

 おそらく彼は明らかに確証があってここを攻撃してきているようだ。

 いったいどこからその情報が漏れてしまったのかはわからないが、これ以上ここを破壊されると本当に魔族を解き放ってしまうことになる。

 街一個ぐらい簡単に破壊することができるほどの数の魔族がこの地下にはいるのだから。


「何を言ってるのか、わからないわ」

「とぼけるってか?」

「……」

「悪いが、そうはいかねぇな!」


 すると、彼はまた聖剣を地面に突き刺した。

 それと同時にまた電撃が周囲へと放出されていく。

 私は周りに氷の盾を作ることでその電撃を防いでいたが、壁面はその電撃で破壊されていく。

 このままでは本当に魔族のいる牢へと突破されてしまうかもしれない。


「”天の怒りは全てを破壊し尽くすっ”」


 その呪文のようなものは奥義のようなもの、二回も発動するとはどういったことだろうか。

 奥義は精霊の力を解放することで行うことができる。

 もちろん、使用者の体はかなり負担がかかることになる。一日に二回も出せば、体力を著しく低下させる。最悪、命を落とすことだってあり得るのだ。

 しかし、彼は剣を突き上げた。

 奥義を発動したようだ。


「くっ!」


 分厚い氷越しからでもわかるほどに強烈な閃光とともに、強い衝撃波が襲いかかってくる。私の高密度で作り上げた氷など一瞬で破壊され、実験場の壁面なども簡単に崩していく。

 まずい。天井には大きな穴が開いておりここで魔族が解き放たれれば街に溢れ出てしまうことになる。


「魔族はどこだっ!」


 ハーエルがそう言った直後、魔族の咆哮が轟いた。

こんにちは、結坂有です。


四十体以上はいる魔族がついに解き放たれてしまいましたね。

まだ地下にいるようなのですが、これがもし街に出てしまったらすぐに混乱が起きるでしょう。

果たして、これからどうなるのでしょうか。気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



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