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許されない行為

 帰宅中に襲撃を受けたのだが、ユウナとナリアの増援もあって大事にはならなかった。

 とは言っても警戒を解く訳にはいかない。

 そして、何よりもナリアがあの黒く半透明な石の正体を知っている可能性があるということだ。


「ナリア、その心石というのはなんだ?」

「……人間の心が具現化したもの」


 心が具現化して石になったということだろうか。

 医学的に不自然なのだが、確かに体内に石が存在している。


「でも、その人の心石はそこまで大きくはないわ。まだ生まれたばかりみたいな……」

「生まれたばかり?」

「いいえ、なんでもないわ」


 そういうとナリアはユウナの横へと立った。


「エレイン様、今日は帰らないそうですね。落ちている武器はとりあえず、私が持っていきますね」


 そう言って頭を下げてユウナとナリアは残された銃器を持って家の方角へと歩いていった。

 俺とセシルもここから離れるように寮へと向かった。


 寮に入る直前、セシルは寮の担当者に事情を伝えに行ったため俺はロビーで待機している。

 すると、リンネ姉妹とミーナが歩いてきた。


「あ、エレイン」

「訓練をしていたのか?」

「そうよ。リンネが再戦をしたいと言ってきたから……」

「結果は?」

「ふふん、私が勝っちゃった」


 そう自慢げにリンネが言う。

 そんな彼女の横から小さくだが、アレイが顔を出してきた。


「ハンデあったのにね」

「ちょっと!」


 リンネの実力は一般のものと比べればかなり上位に来るそうだが、この高度剣術学院においては中の下といったところだ。

 だが、家柄的にも歴史ある家系に生まれているわけで皆からは尊敬の眼差しを受けているのは言うまでもないだろう。


「……勝敗はどうでもいいがな。とりあえず、対人戦を繰り返して自分の体を完全に支配することだな」

「お姉ちゃん、勝ったからってずっと休憩してたのよ?」

「休憩じゃないわよ。本当に疲れてたんだって」

「それは認めるわ。かなり接戦だったからね」


 どうやら互角の戦いだったということだろう。

 剣術的に見てもミーナの戦い方は相手に依存するからな。

 リンネ相手であれば、かなり膠着状態になったはずだ。


「それにしてもいつの間にか仲良くなっていたんだな」

「もともと、私たちは昔からの幼馴染なの。よく遊んだ仲だからね」


 それがいつの間にか対立関係になってしまったということか。

 こうした戦い中心の世界であればよくあることのようだ。


「でも、これからはちゃんとしたライバルよ。お互い切磋琢磨し合うの」

「お姉ちゃん、あんなこと言ってるけど本当はエレインとやりたかったそうよ?」

「何言ってるのよ」

「時間が合えば俺も訓練に付き合うことぐらいはできる」


 俺がそう言うとリンネは少しムッとした表情をした。

 俺と一緒に訓練をしたいのではないのだろうか。まぁどちらにしろ、ミーナの実力も気になるところだ。今後、彼女の進化も見ておく必要があるからな。

 必要なら俺がまた手伝うというのも考えておくか。


「エレインを訓練に誘うなんていい度胸ね」


 担当者に事情を話してきたのか、セシルが戻ってきた。


「いいじゃない。私たちはただ強くなりたいだけだから」


 リンネは対抗するようにそう言った。


「そう、じゃ行きましょうか」


 そう言ってセシルが俺の腕を引っ張る。


「って、エレイン連れ込んで何するつもりなの?」


 意外にもそう口を出してきたのはミーナであった。

 彼女は最近俺に対して視線を送ってきているのだが、俺は何も反応していなかったからな。

 何か話があるのなら聞きたい。


「私たちはパートナーなの。部屋に入るぐらい普通でしょ」

「……ふ、二人で何をするつもりなのよっ」


 リンネも会話に混ざってきた。


「ふふっ、別にいいじゃない。パートナーなんだから」


 セシルはまるで仕返しでもしたかのようにそういった。

 彼女のそう言った性格は可愛らしいものだ。

 その言葉に対してリンネは言い返すことはせず、そのまま黙ったままであった。


 それからセシルの部屋に入ると綺麗に整理された部屋であった。

 大胆な発言をするのだが、こうしたところは几帳面な性格のようだ。


「ジロジロ見られると恥ずかしいのだけど」

「ああ、悪いな」


 そう横に視線をそらすと扉が開いたままのウォークインクローゼットが視界に入ってくる。

 中には白の可愛らしい……。


「んっ!」


 バタンとセシルは強く扉を閉めた。


「迂闊だったわ」

「女性の部屋に入るのには慣れていないからな」

「いいのよ。私が急に呼び出したわけだし」


 それから彼女は冷蔵庫に買ってきた食材を入れた。

 すると、気づいたように声を上げた。


「あ、先に夕食にする? それともお風呂?」

「いつもは夕食が先だな」

「……っ!」


 何を思ったのか彼女はひどく赤面した。


「どうした?」

「な、なんでもないわよ。夕食、ね。手伝ってくれる?」

「ああ」


 俺はセシルの指示通りに食材を切って調理を手伝う。

 初めての料理だ。野菜を切るのは案外慣れないもので、均等に切り分けるのは少しコツがいるのであった。

 セシルは普段から料理をするそうで、手慣れたように野菜を切り分けて調理を始めている。


「手慣れているんだな」

「え? これぐらい普通だけど?」

「そうなんだな」

「そういえば、フィンは商店街で調理済みばかり買っていたわね。あれだと、栄養が偏るわ」


 そう思い出すように彼女はそういった。

 確かにあの性格では律儀にバランスを考えて料理をするようには見えないからな。


「じゃ、これで……っ!」


 最後の食材を切り分けようとしたところ、セシルと手がぶつかってしまった。


「痛かったか?」


 勢いよく手を伸ばしてきたためにかなり強い衝撃が伝わった。

 当然、彼女もそれなりに痛かっただろう。


「……」

「どうしたんだ」


 セシルはその綺麗な瞳で俺を真っ直ぐに見つめてくる。彼女の頬は若干ながら赤く染まっており、さらに淡いハーブの香りが俺たちの五感を刺激してくる。


「エレイン……。いい、わよね」


 色気を含んだ声が俺たちを妙な雰囲気へと誘う。

 そして、ゆっくりとセシルの唇が近づいてくる。


 ビビーッ!


 そんな雰囲気を破壊するかのように部屋の呼び鈴が鳴り響く。


「っ! リーリアがきたようね」

「そうだな」

「扉を開けてくるから、野菜を切っておいて」

「わかった」


 すると、セシルは頬を軽く手で叩いて玄関へと向かった。

 それからのこと、夕食は三人で食べて風呂に関しては交代制で入ることとなった。


 夜、セシルの部屋で三人とも寝ることにした。

 理由としては二人きりになる可能性を減らすためだとセシルは言っていた。

 確かに最初から三人であれば二人になることはない。


「も、リーリアがいなければこんなことにならなかったのに」

「それはこちらのセリフです」


 セシルとリーリアは俺を挟んで寝ることとなった。


「私は何もするつもりなんてなかったわよ。もう寝るから邪魔しないでねっ」


 そう言って彼女は布団を深く被った。


「……エレイン様、私も少し疲れたので休みます。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 そう言ってリーリアはゆっくりと目を閉じた。

 俺も目を閉じたいところなのだが、そうはいかない。

 ちょうど風呂上がりの時間に寮の外で怪しい動きをしている足音が聞こえた。

 ここは寮の最上階だが、必ずしも安全というわけではない。

 屋上からであれば簡単に侵入することができるからな。


「……仕方ない、か」


 本来であれば無視するのだが、ここはセシルの部屋だ。

 彼女の安全に関わることであれば、俺はなんでもする。

 俺はゆっくりと二人を起こさないように部屋を出た。


 セシルの部屋のちょうど真上に俺は待ち構える。目を閉じ、地上の足音を確認しながら敵を待ち伏せする。


「ここまで執拗に仕掛けてくるか」


 俺は屋上から地上にいる敵を全て確認した。

 暗闇だろうと関係ない。視界が悪いのなら音で、音が聞こえなければ空気の流れで敵を把握する。

 音を立てずに俺は地上の敵へと魔剣を突き立てて降下する。


 ジュンッ!


 まず一人、そして左右にいる敵をイレイラを使って瞬時に切断することで他の敵に気付かれずに排除することができた。

 幸いにもこいつらは人間ではないようで、黒い煙と共に消えていった。

 さて、残りの三〇人を排除するか。

 俺は闇夜の中、魔剣を振るった。

こんにちは、結坂有です。


本日二本目の投稿となります。


エレインは闇夜の中、敵を無双していくそうですね。

果たして敵の本当の目的とは何なのでしょうか。気になりますね。

そして、ナリアはあれからどうなったのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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Twitter→@YuisakaYu

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