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狙われるもう一人の最強

 翌日、俺は学院に向かうことにした。

 昨日は何者かに狙われてしまったのだが、ルカやティリアといった四大騎士のおかげもあって特に問題が起きることはなかった。

 アレイシアとミリシアに見送られる形で俺は家を出て、学院へと登校する。


「エレイン様、やはり昨日から妙な気配がしますね」


 道を歩いていると横でリーリアがそういった。

 確かに彼女の言う通りで誰かに見張られているような感じがする。

 しかし、俺たちに向けて殺意のようなものはない。


「……昨日とは違った人だな」

「どういうことですか?」

「尾行の仕方が今までと違うからだ」


 尾行にはその人の癖が現れる。

 今、俺たちを付けている人は昨日の人とは少し変わっている。


「そうなんですね。今回はどうなされるのですか?」

「今日も無視することにしようか。俺たちに危害を加えるようなことはしないようだからな」


 ただ俺たちを監視しているだけ、そう言った感じだろうか。

 いや、それ以外のことも考えておく必要があるな。

 そんな妙な視線の中、俺たちは商店街へと入る。

 すると、セシルが話しかけてきた。


「おはよう。今日は少し早いのね」

「ああ、特に理由はないがな」

「そう……。何か関係があるのかと思ったのだけれど」

「どうかしたのか?」


 彼女は少し周囲を警戒するような様子を見せる。


「寮を出てから誰かに見張られているみたいなのよ」


 おそらくは俺を見張っている人と関係しているのだろうか。

 どちらにしろ、セシルも俺たちと同様に監視されているようだ。


「そうか。俺たちも商店街に入る前から見られている」


 ここまでわかりやすく会話していても逃げる素振りはしない。

 つまりは気付かれていてもいいということだろうか。


「エレインたちもそうなのね。一体何なのかしら」

「まぁ考えるだけ無駄だろう」

「ええ。行きましょう」


 それから俺たちはそのまま学院に向かった。

 商店街には人集りができており、ここで俺たちを攻撃することは可能性としては低いはずだ。


「っ!」


 そう思った瞬間、破裂音が聞こえた。

 昨日の銃声と同じようだ。


「どこから?」


 そんなことを思っていると第二の銃声が聞こえた。

 二射目は俺たちのすぐ近くを通り過ぎる。

 かなりの距離から俺たちを狙撃してきているようだ。

 商店街に集まっていた人たちはその喧騒でこの銃声に気付いていない。


「学院まで走る」

「ええ、わかったわっ」


 それから俺たちは走った。

 商店街に戻ることもできたのだが、あの人集りでは誰かが巻き込まれることもあるからな。


 走っている間は狙撃されることもなく、俺たちは無事に学院へと入ることができた。


「一体、誰が撃ってきたの?」

「わからない。昨日、俺たちも下校中に狙撃されたんだ」

「えっ、大丈夫だったの?」


 あの時はアンドレイアが防いでくれたため何事もなかったのだが、もし初弾から当てられていた場合は俺も大怪我を負っていたことだろうな。


「怪我はしていないから大丈夫だ。それにしても今回はセシルが標的のようだな」

「わ、私?」


 今回、アンドレイアが反応しなかったのは俺を標的としていなかったからだろう。

 俺と契約を交わしているアンドレイアやクロノスは俺に対してのみ敏感に反応することができるが、セシルに殺意が向けられていた場合はそれに反応することができない。


「ああ、何か心当たりはあるのか?」

「いいえ、特にはないわ。昨日も商店街でご飯を食べたぐらいよ」


 確かにそれだけでは攻撃される筋合いはないか。


「けど、外が騒がしかったのは覚えているわ」

「騒がしかった?」

「そうね。詳しくは知らないのだけど、四大騎士の人がどうとかって言っていたわ」


 おそらく昨日のことだろう。

 ティリアがあの大聖剣の力を発揮したからな。

 あまり知られていないとはいえ、あれほどのことをすればすぐにでも話は広まるものだ。


「なるほどな。それ以外は特に変わった様子はないのか?」

「ええ、そうね」


 それなら狙われる理由がないか。

 相手が何を考えているのかはわからないが、俺のパートナーに手を出した時点で俺を敵に回したということだ。

 それから俺たちは教室に向かってとりあえず、今日のことをルカに報告することにした。


   ◆◆◆


 私、ユウナはすぐにでもミリシアさんやそのお仲間の人たちに伝えたいところなのだが、まだもう一つ仕事が残っていた。

 それは団長が外で保護した女性、ナリアのことであった。


 聖騎士団本部で一晩過ごしたあと、私は国境近くの保護施設へと向かっていた。

 その保護施設は非常に清潔な場所で以前は聖騎士団の支部として使われていたそうだ。

 保護施設に入って長い廊下を進んでいく。


「ナリアさんですか?」

「ああ、外で保護した人だ」


 そう言って団長は部屋の鍵を開けた。

 中に入ると地下牢ではない清潔な部屋で、そこには鋭い碧眼の女性がいた。


「……その人は?」

「ユウナだ。これから一緒に過ごす仲間となる」

「仲間?」

「団長、それってどういうことですかっ」


 私は少しだけ妙な予感がした。


「エレインの家に連れて行って欲しい。アレイシアの方にも話は通してある」

「それはいいのですけど、どうしてなんですか?」

「聖騎士団の方で保護することも考えていたのだが、それだとナリアに自由は与えられないからな」


 確かにこんな場所で閉じ込められていては自由はない。

 とは言ってもアレイシアさんのあの家に行ったとしてもそこまで自由はないように思える。

 なぜならあの地下部屋はここと比べて住みにくい場所なのだ。私やミリシアさんたちは地下に慣れているため、特に不満はない。

 しかし、普通の人は少し息苦しいのだと思う。


「あの、どういうこと?」

「簡単に言えば、ある人の家に住むってことだ」

「……外で暮らせるの?」

「地下部屋になるかもしれないがな」


 団長がそういうとナリアはほんの少しだけ嬉しそうな表情をした。

 しばらくはここで寝泊まりをしていたようで、外に出るのは数日ぶりだそうだ。


「ユウナ、あとは頼んだ」

「……わかりました」


 新しい仲間となった彼女はどういった人なのかはわからない。

 けど、何か違和感があるのは間違いない。

 本人には失礼だけれど、人間とは少し違った雰囲気を感じるのだ。

 でも、敵でないのなら何も問題はないだろう。


 それから私とナリアは聖騎士団本部を後にしたのであった。

こんにちは、結坂有です。


今度はセシルが標的となってしまったようですね。

果たして敵は何をしようとしているのでしょうか。気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



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