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襲撃、再び

 翌日、俺は普通に登校することにした。

 リーリアもすっかり疲れを癒すことができたそうで、それは顔の表情を見るだけでもわかるほどだ。

 昨日がどれだけ疲れていたのかは言うまでもないだろう。


「エレイン様、今日は疲れなどございませんか?」


 リーリアがそう俺に聞いてくる。


「全くだ」

「さすがはエレイン様です」


 何か誇らしげに彼女はそう言う。

 そして、商店街でセシルと合流してそのまま学院へと向かった。


 学院に入ると、いつも通り生徒たちが俺たちを囲んでくるがそれも担当の教師であるルカが教室に入ってくるとすぐに解散する。


「人気者になったんだな」


 そうルカが言う。

 確かに彼女の言うように俺たちは先の試合で生徒たちによく絡まれるようになった。

 それもこれも全ては学院の試合制度の問題もあるのだがな。



「人気者になりたくてなったわけではないからな」

「まぁそうだろうな」


 そう彼女は言うと周囲を見渡した。

 俺も席に座り、授業の開始を待つ。

 しかし、彼女は授業を始めようとはしなかった。


「先生、どうかしましたか?」

「……いや、なんでもない」


 そうは言っているが、彼女はまだ教室の外を警戒しているようだ。

 俺も耳を傾けて探ってみたところ、明らかに力のある何者かがいる。


「あの……お祖父様のことですか?」


 そう控えめに手を挙げたのはリルフィであった。


「何か知っているのか?」


 ルカが彼女に対してそういうが、リルフィは口を硬く閉じた。

 何かを知っているようではあるものの話してくれない以上俺たちが知ることはできない。

 そう考えていた瞬間、空気が震えるような感覚がした。


「っ!」


 リルフィが何か怯えるような表情をした。


「エルデバン家当主か……。怪しいことをしていると思っていたらこんなことを企んでいたとはな」


 そうルカが言った途端、教室の扉が開いた。


「リルフィ、今すぐわしのところへと来るんじゃ」

「……」


 扉を開けたのは髭を長く生やした老人であった。

 腰には太い刀身の太刀を携えている。

 すると、ルカがその老人のところへと歩いていく。


「ここは部外者立ち入り禁止だ。一体何のよう……っ!」


 その瞬間、老人は素早い抜刀でルカに剣先を向けた。


「近寄るな。邪悪な者よ」

「この私に刃を向けるというのか?」


 そうルカが老人に向かって話ていると、教室の後ろの扉が勢いよく開き男が飛び出してくる。


「なっ!」

「きゃあ!」


 リルフィの元へとその男が掴みかかる。

 一番近いセシルが素早く反応し、それを引き止めたのだが男の方もかなりの速度でリルフィのところへと駆け出す。

 捕らえようとする生徒もいるが、生徒の間を縫うように高速で移動している。

 もちろん、一般の生徒であれば捕まえることはできないだろう。


「エレイン様!」

「ふっ」

「んっぐ!」


 俺が腕を伸ばすとその男の首元を捉えることができた。

 俺の握力はレイほどではないが、そう簡単に逃れることはできないはずだ。

 彼は気道を握られているため、身動きができない。


「先生。こっちは大丈夫だ。その老人をどうにかしてくれ」

「……ああ。任せておけ」


 俺はルカにそういうと彼女は空気中に手を伸ばした。

 そして次の瞬間、炎が彼女の右腕を包み込みそこから燃え盛る刃の大剣が現れた。

 大きな剣ではあるものの片手でも扱えるほどのもので、女性である彼女でも片手で扱えるようだ。


「っ! まさかっ」


 老人はその剣を見て驚愕していた。

 しかし、鋭い視線は変わらず強い殺気を放っている。


「煉獄の門は今開かれた……」


 ルカがそう言って大剣を軽く一振りする。

 すると、炎が老人を襲いかかっていく。無数の火球が剣閃から生まれており、それを老人が必死に剣で振り払っている。


「ふぅあ!」


 しかし、老人の方も負けていないようで彼が大きく振り下ろした剣撃はルカの方へ突き進んでいた。

 その空気を破壊するような勢いで放たれた剣撃をルカは炎の柱を作り上げることで受け止める。


「かかったなっ!」


 それはどうやら囮だったようで、火柱を作るために振り上げていたルカに彼は突撃する。


「門は開かれたと言っただろ」

「ぐぁはっ!」


 ルカは炎だけで作られた直剣を左手に彼を突き刺していたのであった。

 重い大剣はすぐに攻撃の向きを変えることができない。しかし、その剣から分離するように取り出されたもう一つの炎の剣は相手の意表を突くことに成功したようだ。


「っ! 師匠!」


 すると、彼は体を強くよじらせて無理やり抜け出した男は老人に向けてそう叫んだ。


「このっ! 化け物がっ!」


 腰に携えていた短剣を彼が引き抜き、ルカの方へと駆け出していく。


「がっ!」


 だが、俺は咄嗟の判断で魔剣を引き抜き彼の短剣を瞬時に破壊し、彼を蹴り飛ばした。


「落ちぶれた人間如きに引き止めるなどっ!」

「エレイン様に殺意を向けるなどこの私が許しません」


 そう言って聖剣を失った彼を体術で拘束したのはリーリアであった。

 当然ながら、彼女は聖騎士団で訓練を積んでいた上に公正騎士として議会と対立していた立場でもあった。

 そういった経験から対人戦においても高い実力を持っているのは言うまでもない。


「エレイン、よくやったな」

「この程度なんの問題もない」


 はっきり言ってこれぐらいであれば子どもの遊びに過ぎない。


「シーギス・エルデバン。話を聞かせてもらうぞ」


 そう言って炎の剣が突き刺さったままの老人を引っ張り上げた。


「リーリアと言ったな。その男を連れてきてくれないか?」

「はい」


 リーリアはルカに連れられるように男を連れて教室を後にしたのであった。

 教師であるルカと俺のメイドであるリーリアがいなくなった教室は若干の焦げ臭さが残っていた。

 炎の柱ができていたところの床がひどく焦げていたことからかなり高い温度であの柱が形成されたということが推測できる。

 聖剣といえど、あそこまでの力があるとは驚きだ。


「……今のってなに?」「煉獄の門って言ってなかった?」「あの炎、間違いなくそうだよな」


 二人が見えなくなったところで生徒たちは騒ぎ始めた。


「リンネ、何か知っているのか?」


 俺は剣を納めてリンネに詳しく話を聞くことにしてみた。


「えっと、四大騎士の一族で”煉獄の騎士”と呼ばれた一族がいるの。もしかすると、ルカ先生がその一人なのではってみんな騒いでるみたい」


 すると、思い出したように人差し指を立てて俺の方を向いた。


「あっ、四大騎士と言われてるけど、単に強いってわけじゃないからね?」


 なるほど、単に有名だからということだろうか。

 まぁあの強さであれば剣術評価といったものではないからな。もはや評価のしようがないと言った方がいいだろう。


「そんなに有名だとしたらどうしてこの学院の教師をしているのだろうな」

「……普通は公家の護衛とかしてるはずなんだけどね。私もわからないわよ」


 確かに彼女が本当にその名族の一人なのかはわからないからな。

 そのことについても後で詳しくわかってくることだろう。

 今は二人が帰ってくるまで待機した方がいい。

 それにしても、先ほどから遠くの方でセシルとミーナが俺に向けて何やら鋭い視線を送ってきているのはどうも心地が悪い。

こんにちは、結坂有です。


襲撃はあったものの担当教師であるルカとエレインで一瞬にして制圧されてしまったそうです。

エルデバン家のあの二人は一体何を企んでいたのでしょうか。気になりますね。

そして、午後の授業も何か起きそうな予感がします。


それでは次回もお楽しみに。



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― 新着の感想 ―
[一言] 一行目、エレインはいつの間にか、投稿戦士になってたんですね(^^)
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