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保護された先にて

 森の中で彷徨っている私に聖騎士団の人たちは保護をしてくれた。

 近くにまだ魔族が潜んでいたのにも関わらず、私を守って基地のあるところまで連れてきてくれたのだ。


「団長、お疲れ様ですっ」


 基地に入る時に見張りの人がそう言った。

 本当にこの人が聖騎士団の団長などだと改めて分かった瞬間であった。


「生存者を見つけた。詳しいことは聞いてみないとわからないが、とりあえず保護をしておくことにした」

「そうなんですね。わかりました」


 そう言って見張りの人は即席で作られた小さな門を開ける。

 それから私は三人に連れられるように基地の中へと進んでいく。基地の中は魔族の襲撃があったのか所々破壊されている箇所が見られる。


「……ここにも魔族が来たの?」

「ああ、かなりの数が攻めてきたが死者はほとんど出ていない」


 やはりあの魔族相手でも聖騎士団であれば対処できるということだろうか。

 聖剣を持っているという時点で普通ではないことはわかっている。


「まぁ援軍が来てくれなかったらわからなかったけどね」


 そういったのはアドリスという人だ。


「そうですね。あの人たちがいなければ負けていたかもしれません」


 続いてフィレスもそういう。

 とは言っても援軍が駆けつけてくるまで耐えるというのもすごいと思うのは私だけだろうか。

 しばらく歩いて基地の中心である司令塔へと入る。

 そして、団長の部屋である場所に入り、そこで私は話をすることにした。


「それで、どうしてあの森に?」

「あの森は魔族が多くいると報告されている。それなのにどうして聖剣も持っていないナリアがいたのかが不自然だ」

「……私の村は素手でも魔族に対抗できていたの。聖剣がなくてもある程度抵抗できる人だったのよ」

「それってこれと関係あるのでしょうか」


 そう言ってフィレスが黒く半透明な石を見せてきた。

 私はその石のことを知っている。人が死んだ時に落とすと言われるものだ。

 言い伝えではその人がどういった生き方をしてきたのかでその大きさが変わると言われている。


心石(こころいし)……」

「この石を知っているのか」

「体内に宿るとされる心の石、私はそう教えてもらったわ」


 古い母の記憶、母が不治の病で寿命がないというときに教えてもらったのだ。

 まだ子供だった私に母は優しく教えてくれたのを覚えている。


『心石があなたを強くしてくれるわ』


 そう言って魔族と戦って戦死したと言われている父の石を握りしめていたのを今でも鮮明に思い出すことができる。


「普通、この石が体内にない」

「だけど、魔族にはこういった石がある個体もいるんだ」

「え?」


 私は初めて聞かされた。

 人間のことも、魔族のことも全てあの村が基準となってしまっている。

 聖騎士団の人たちが嘘をついている様子もない。


「もう一度聞く。お前は何者だ」

「……人間、よ」

「あの森で殺された人たちを調べたが、あの近くには村のようなものがあったのか?」

「そうよ。私はそこで暮らしていたの」


 私がそう言うと団長は信じられないと椅子に背もたれにもたれかかった。


「私は嘘なんてついてないわ」


 いくら私が言ってもそれを裏付ける証拠は何一つない。

 それに人間であるなんてことも証明のしようがない。


「まぁ、人間だとか魔族だとかって証明できないからね」


 そうアドリスは私の目を見てそう言った。

 この人たちは私が魔族だと思っているのだろうか。

 私は途端に恐怖を感じた。

 今から何をされるのかわからない。

 それにあの村で男がしていたこと、魔族を生捕にして研究の素材にしようとしていたように私もそうされるかもしれない。

 そういった嫌な予感が脳裏に走る。


「一つ、いいかな。あなたにとって魔族は敵なの?」


 フィレスは私の目の前にしゃがみこんで顔を覗き込んでくる。


「……敵よ。村を荒らしたのは許すことができないわ」

「それなら私たちと同じね」


 そうフィレスが結論付けた。

 他の二人も頷いてそれに肯定してくれている。

 どうやら私が敵対勢力ではないと信じてくれたようだ。


「あの周辺に村があるかどうかは調べていけばわかるはずだ」

「そうだね。でもしばらくはここで過ごしてもらうことになるけどね」


 そう言って団長とアドリスは私の方を向いた。


「今日からお前はエルラトラム国民だ」


 団長がそう言った途端、私は安心した。


   ◆◆◆


 セシルとリルフィが隣の訓練場へと向かったが、俺は一人残っていた。

 理由はアンドレイアとクロノスに話があるからだ。


「話があるようだが、なんだ?」


 そう魔剣に話しかけると、二人は姿を現した。


「あのリルフィという娘には気をつけろ」

「ええ、そうですね。あの人からも魔の気配を感じます」


 彼女は俺よりもずっと魔の気配に敏感だ。もともと彼女たちは精霊だから当然だ。


「一般の人が感じ取れないぐらいか?」

「そうじゃ。わしらも最初は気付かんかった」


 近くまで気付かなかったということはほんの少ししか感じられないということだろうか。

 うまく隠しているか、そもそも魔の本質が薄いかのどちらかだろう。


「どちらにしろ、今はこの学院の生徒だ。それに実力も今の所高くはない」


 リルフィが本当に敵だったとして、彼女程度の実力ならどうとでもできるからな。


「人間に擬態、してるのでしょうか」


 そうクロノスが言う。

 確かに以前から魔の気配を持った人間に出会ってきている。

 アレクが見つけてきたあの黒い石のことも気になる。


「あの黒い石は知らないそうだな」

「はい。私もあの魔の気配を放つ石に関してはよく知りませんから……」

「わしも考えてみたが思い当たるもんはなかったの」


 二人が知らないということは聖騎士団も知らないのだろうな。


「じゃが、一つ言えることは上位の魔族もあれに似た石を持っているということじゃな」

「魔族が?」

「はい。ご主人様は倒した後、すぐに別の魔族へと向かわれるため知らないと思いますが、確かに結晶のようなものが体内にある個体もいますよ」


 そうクロノスが説明してくれる。

 言われてみれば、倒した後の魔族を観察したこともなかったな。


「それと何か関係があるのかもしれないな」

「だとしても人間にという話は聞いたことがないの」


 ここでいくら考えたところで何も解決できないのは明らかだ。

 そのことについても聖騎士団に伝える必要がありそうだな。

 俺は耳を澄ませて、横の訓練場の様子を調べた。

 どうやらうまく倒せたようだ。


「そろそろ帰ってくる」

「話の続きは主の家で、じゃな」


 そう言って二人は魔剣の中へと姿を消した。

 それからしばらくして扉が開いた。


「勝てたようだな」

「……エレインもこっちに来ればよかったのに」


 そうムッとした表情でセシルが言った。


「休憩したかっただけだから気にするな」


 すると、リルフィが俺の前に立って頭を下げた。


「エレイン、私に色々教えてくれてありがとうっ」

「強くなったのはリルフィ自身で俺は何もしていない」


 俺は彼女の特徴について教えただけだ。強くなったのは彼女自身の実力だ。


「でも、お礼は言わせて欲しいの」

「お礼は次の試合で勝ってからな」


 俺がそう言うと彼女は「あっ」と依頼のことを思い出した。


「じゃ、その時にお礼言うね」


 そういう彼女は以前よりも自信に溢れているようであった。

こんにちは、結坂有です。


一日遅れで申し訳ありません。

本日の夜にも更新します。


ナリアから聞き出された心石、あれは一体なんなのでしょうか。

そして、かすかに感じられるリルフィからの魔の気配……気になることが多くなりましたね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

優しいコメントもお待ちしております。

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