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混乱の先にあるもの

 エレイン様がここから飛び降りてから私はすぐに下の階へと向かった。

 門の下ではまだ魔族が残っているが、十体ほどで私が降りる頃にはすでに全滅していたのであった。


「リーリアさん?」


 私に気が付いたアレクが声をかけてきてくれた。

 彼は片腕片足が義肢ではあるものの、全くそれを感じさせない自然な動きができている。


「エレインのメイド、だったよな?」


 そして、その横にいるのはレイという人だ。

 体格からわかるその強靭な肉体は見ているだけで迫力が伝わってくる。


「……どうしたのかな?」


 私がしばらく黙っているとアレクが話しかけてきてくれた。


「エレイン様が門の外へと向かってしまいました」

「そうみたいだね」

「ミリシアもいることだ。心配はねぇよ」


 そう二人は私に話しかけてきてくれる。


「あの、二人にお願いがあるのですけど……」

「僕たちにできることならいいよ」


 アレクはまっすぐ私の目を見つめてきてくれる。

 エレイン様のご友人と言うこともあり、優しい人ばかりなのだろうか。


「この門を越えたいのです」

「……僕には難しいかな」


 当然、この門の高さは普通に人のの五倍ほどもあるからだ。


「抱えてもいいならいけるぜ」


 そう言ってくれたのはレイの方だ。

 非常に分厚い刀身の剣を肩に乗せて言った。


「本当ですか?」

「ああ、今から行くか?」

「……はい」


 そう言って私たちはまた門の上へと向かった。

 門の上に向かうと先ほどよりも空気が肌寒く感じる。


「空気が変わったって感じだね」

「ええ、さっきはここまで寒くはなかったのですけど」

「まぁなんでもいいぜ。ここを飛び降りればいいんだな?」


 レイは門の下を覗き込んでそう言った。


「はい。エレイン様はそこから飛び降りて先へと向かって行きました」

「ほんと、あの人は無茶をするね」

「なんでもいいけどよ」


 すると、レイは私の方に手を伸ばしてきた。


「ほら、行くぞ?」

「……はいっ」


 私がその手を取ると、彼は引っ張り上げて私を抱え上げた。


「えっ……」

「動くなよっ」


 そう言って彼は門から飛び降りた。

 私だけ時間が止まったかのような感覚がした。自由落下により無重力状態となっているのだろう。

 一秒後、地面に着地する。

 意外と衝撃が少なく、体のどこも痛くはない。


「体は大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫だと思います」

「それならよかったぜ」


 そう言って彼は私をゆっくりと地面に下ろした。

 そして、上から私たちを見ていたアレクが飛び降りてくる。

 スタッと静かに着地した彼は平然としていた。


「意外と高かったね」

「こんなもんじゃねぇか?」


 普通、門の上から飛び降りれば怪我をするものだ。最悪死に至る高さでもある。

 それを軽々と飛び降りて何事もなく着地するという芸当は常識では考えられない。

 これもエレイン様のご友人なのであればできて当然なのだろうか。


「それよりエレインのところへと向かおうか」

「そうだな。あいつらがどこまで進んだのかわからねぇけど、走ったら追いつくだろ」

「付いて来れるかい?」

「はい。大丈夫です」


 それから私たちは足元にうっすらと霧がかかった夜道を進んでいくことにした。

 周囲には魔族がいないようで、非常に静かだ。


「薄気味悪いな」


 そう呟いたのはレイだった。

 私は特に何も感じないのだけど、アレクも彼と同じように何かを感じ取っているようだ。


「どうかしましたか?」

「いや、誰かに見られてるっていうか……。気味が悪いんだ」

「僕もだよ。誰かに誘き出されているって感じかな」


 アレクがそういうとレイは少し考えてから口を開いた。


「まぁどうでもいいか」

「そうだね」


 二人はそう結論付けるが、より不安が強まったのは私だけだろうか。

 どちらにしろ、彼らが何かの気配を感じ取ったのは間違いないわけだ。私も警戒しながら夜道を進むことにする。

 灯りを持っていないため視界は数歩先ほどしか見えていない。こんな状態で夜の森へと足を踏み入れるのは得策ではないが、彼らは構いなく進んでいく。

 方向がわかっているのだろうか。全く迷いのない足取りでどんどん奥へと入っていく。

 私も逸れないように必死に彼らに付いていくと、急にアレクが立ち止まった。


「……レイ、ここからは気をつけないとだね」

「そうだな」


 そう言って二人は剣を引き抜いた。私はまだ理解できていないが剣を抜いたということは戦闘態勢に入るということだろう。


「リーリアさん、僕たちから離れないで」

「はいっ」


 彼らには何かが感じているのだろうか。


「ヒョア!」

「ふっ」


 そう考えていると、私の上方から人が斬りかかってきた。

 しかし、その刃は私に届くことはなくアレクの剣に阻まれていた。


「悪いけど、僕たちにその攻撃は届かないよ」

「ちっ」


 大きく舌打ちをした敵はすぐに私たちから距離をとった。

 真っ暗な視界の上、うっすらと霧も漂っている。条件としては最悪といった状況だろう。


「ヒャア!」


 また声が聞こえた瞬間、レイの方へと剣先が走る。


「オラァ!」


 それでも彼は冷静に対応できたようで、うまく防ぐことができた。

 この条件下で敵は正確に攻撃できている。

 もしかすると、この霧が何か関係しているのだろうか。


「相手も僕たちと同じ聖剣使い、何か能力を使ってきているのかもしれないね」

「ああ、この霧が関係しているのかもなっ」


 そう言ってレイが剣を振り回して霧を吹き飛ばす。

 それでもすぐに霧は足元を覆い隠してくる。


「またこれかよ。鬱陶しいな」

「だけど、姿を消す能力ではないみたいだからね。しっかりと対処できれば問題ないよ」

「まぁな」


 そう話していると、また剣先が霧の中を走る。

 今度はアレクの方だ。


「ショウアッ!」

「せいっ!」


 アレクが振り返った瞬間、強烈な金属音が鳴り響く。

 カランッと金属の乾いた音が私の足元から聞こえた。視線を落としてみるとそこには刃先が転がっていた。


「なぜだっ」

「悪いけど、僕たちは弱くはないからね」

「相手が悪かったな」


 アレクとレイがそう言っている。

 アレクはどうやら敵の剣を完全に破壊していたようだ。

 そして、レイが相手の首に剣を添えている。

 もちろん、相手は完全に動きを封じ込められている状態だ。


「僕たちに敵意を向けたのはどうしてかな?」

「殺す……殺してやるっ」

「あ? こんな状況でよくそんなことが言えるな?」


 首に剣を添えられた状態でいうような言葉ではない。


「グッ、魔族に、忠誠をっ!」


 そう言って男は腕を犠牲にしてレイの剣を払うと、アレクの方へと噛み付こうとした。


「はっ」


 私が双剣でその男の動きを防ぐと、レイが剣を大きく振りかぶって男を半分にした。


「……リーリアさん、助かったよ」

「いいえ、これでおあいこです」

「それにしても、こいつ人間かよ」


 レイがそういうとアレクが近づいてその半分になった男を確認する。


「人間、だね。でもこれはなんだろう」


 そう言って拾ったのは小さな石のようなものであった。

 黒い半透明なその石は何か異様なものであることはすぐにわかった。


「まぁ俺たちを敵に回した時点で運が悪かったってことだな」

「……そうだね。先を進もうか」


 アレクは少し考え込んでからそう返事をした。


「歩けるかい?」

「はい。大丈夫です」


 それから私たちはエレイン様がいるであろう聖騎士団の前哨基地へと向かうことにしたのであった。

こんにちは、結坂有です。


レイとアレクは敵に回したくないですね。

連携が非常に良い彼らには弱点があるのでしょうか。これからの活躍が気になりますね。

そして、敵が持っていた半透明の黒い石は一体なんなのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。



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