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強過ぎる助っ人たち

 私、フィレスはこの前哨基地での防衛で左翼を担当している。

 ヴェイスや他の聖騎士団の人たちの善戦のおかげで最初の方は優位に立てていたのだが、それでも魔族の圧力は変わらない。

 圧倒的に頭数が違うというのが大きな理由の一つで、それに加えて魔族は体力の回復がとても早い。

 とてもじゃないが人間の私たちでは歯が立たないのが現状だ。


「ヴェイスさん、これ以上はっ……」

「くっ、一旦後退だ」


 そういった彼は苦渋の決断といった表情をしていた。

 少し前に出ていた左翼が交代するということは、自然と右翼にまで影響が及んでしまうことになる。

 私たちが前に出ていたおかげで右翼は着実に魔族を削ることができていたが、後退することでそのバランスが崩壊してしまうことだろう。


「後退しなくてもいい」


 そう私の後ろから話しかけてきたのは男の人と女の人だ。

 年齢的にはレイと同じぐらいの人たちだろうか。


「相手にはゴーレム型、さらにはゴースト型の魔族が何体もいるんだぞ」


 ヴェイスがそう反論する。

 確かに先ほどから押し込んできているゴーレム型は強大な力で押し込んできている。そしてゴースト型も見えないところから攻撃を仕掛けている。

 もちろん、戦略的に見ればここの後退は最善ではない。現状維持が最善と言えるだろう。

 だが、長期的にこの戦いを見れば一旦退いて態勢を整える方が良い気がする。

 不利になるのは目に見えているが、私たちが無駄死にするよりかは良い選択だ。


「ゴーレム型だろうとゴースト型だろうと相手は魔族だ。聖剣があれば倒せる」


 そう言って男の人が剣を引き抜いた。

 その東洋の美しく湾曲した刀身は非常に魅力的だ。そして(しのぎ)筋あたりが大きく肉抜きされており、とても特徴的な刀だ。


「まさか、一人で戦うというのかっ!」


 ゴーレム型はパベリ自警団では最低でも一〇人で対応するようにと言われている。信じられない程の力で私たちを圧倒してくるゴーレム型は取り囲んで制圧するのが一般的だ。

 しかし、彼がやろうとしていることは一人であの巨体と戦うというのだろうか。


「ヴェイスさんの言う通りよ。いくらなんでも一人では無謀だわ」

「どうだろうな」


 そういうと彼は駆け出した。


「待って!」


 そう言って私は彼を引き止めようとすると女の人が私の腕を掴んだ。


「エレインを信じて、私はゴースト型を対処するわ。それに一分ほど魔族の動きを止めるからその間に負傷者を助けてあげて」


 そう言って女の人は彼を追うように走っていった。


「……ヴェイスさん、どうしますか?」

「彼女の言う通りにしよう。確かにここで退くわけにはいかないからな」

「わかりました」


 それから私とヴェイス、そしてその何人かで負傷者の救出へと向かった。


 何人か助けた後、最前線のところで金属の破断する音が聞こえた。


「ぐぁはっ!」


 聖騎士団の一人がゴーレム型の魔族に吹き飛ばされていた。


「フィレスっ! 最前線には行くなっ」

「できません。ここで一人でも多く助ける必要があるのですっ」


 そう言って私は走り出した。


「大丈夫ですか」


 なんとか倒れている人のところまで行くと、息苦しそうにしていた。どうやら鎧が内側に大きく凹んでおり胸部を圧迫しているようだ。


「た、助かった……」

「ええ、行きましょ」


 そう彼に肩を貸して立ち上がった瞬間、ゴーレム型が私の目の前に飛び込んできた。


「ガァバァアッ!」

「っ!」


 人を支えているため、私はすぐに攻撃を避けることも反撃することもできない。

 このままでは……。


「ふっ」


 すると、最前線の方から先程の男の人が滑り込んできた。ゴーレム型の股をすり抜けながら彼は両足を綺麗に切断する。

 そして、彼は飛び上がりゴーレム型の後頭部に聖剣を突き刺した。


「ブグォ……」


 力が抜けていくかのように魔族が倒れ込んでくる。

 あの強大なゴーレム型がいとも容易く倒すことができるなんて……。


「大丈夫か」


 そう言って魔族の肩から飛び降りた彼は私の方を見た。


「ええ、大丈夫よ」

「早く連れて行くといい、俺は他のゴーレム型を対処する」


 すると、彼は私の横を走り抜けてまた最前線へと向かった。


 あんな強力な剣士がいるなんて初めて知った。

 それに今まで見たことのない美しい剣捌きに体捌き。一体どれほどの鍛錬を積めばあのような実力を身につけることができるのだろうか。

 いや、今はそんなことを考えている場合ではない。一人でも多く負傷者を助け出すことに集中しよう。


 そう意気込んだ私は負傷した人を支えながら歩くことにした。


   ◆◆◆


 最前線で暴れていたゴーレム型十三体を倒した俺だが、まだゴーレム型が奥から流れ込んできている。

 どうやらこの左翼に向けて彼らが集中してきているようだ。


「エレインっ! 手が止まってるわよ」

「……気にするな。ゴースト型はどうなっている?」

「これで最後よ」


 そう言って彼女は背後からの攻撃を体を捻って躱しつつ、素早い剣撃で難なくゴースト型を倒した。


「それにしても魔族の勢いは止まらないな」

「そうね。でも一〇〇体ぐらい全滅できるでしょ?」


 俺たちがここに来た時点で一五八体を把握している。それから三割ほど倒してはいるものの、勢いが止まらないということは決死の覚悟で突撃してきているのだろう。


「ああ、少しペースを上げるが付いて来れそうか?」

「もちろん、エレインの隣にいるのは私なんだからっ」


 そう言って俺の横に彼女が立った。


「まずは面倒なゴーレム型だ」

「そうね。あの巨体はなかなか面倒そう……って、ちょっと!」


 彼女がそう喋っている間に俺は駆け出した。

 奥の方でゆっくりと歩いてきているゴーレム型二〇体を視認すると、俺はイレイラを引き抜いた。


「ちょっとは合わせようとしてよねっ!」


 後ろから全力で追いかけてきているミリシアは俺の背後にいた魔族を対処してくれている。

 彼女のおかげで俺はゴーレム型に集中できる。


「一五秒で片付ける」

「え? なんて?」


 そう聞き返してきたが、すでに俺はそこにはいない。

 彼女が振り返った時点で俺は一体目のゴーレム型の肩に乗っていたからだ。


「速すぎでしょ……」


 ミリシアが唖然としながらも魔族を足止めしてくれている。

 それから一体目の首を斬り落とし続けて二体目、三体目と飛び移りながら倒していく。


 魔剣の能力”加速”を使っているため、動きの遅いゴーレム型は俺に対応できず次々と倒れていく。

 そして、さらに奥へと進みゴーレム型十七体が横一列に並んで俺の方へと走り込んできた。

 俺を囲むように襲いかかってきている。咄嗟の判断としては知能の低い魔族の割によくできている。


 ただ、それでも俺を倒すことはできない。

 俺はイレイラを丁寧に縦に引き抜いて、横一閃に斬り裂いた。

 もちろん、剣撃の距離を聖剣の能力”追加”で引き伸ばして襲いかかってくる全てのゴーレム型を横半分に切断した。


「うそっ」


 驚愕したのは魔族でもなくミリシアの方であった。

 この技を見せたのは初めてだったな。


『流石は我が主よの』


 魔剣からアンドレイアがそう感心して呟いた。


『ご主人様、その”瞬裂閃”は強過ぎると思います』


 続けてクロノスも話しかけてくる。


『いいのじゃよ。我が主は最強にして頂点なんじゃからの』

『……私のご主人様ですっ』


 真っ赤な顔で対抗しているのがその言葉で予想がつく。

 しかし、全てのゴーレム型を倒したとは言え魔族がまだ残っている。


「ミリシア、面倒な敵は倒した。掃討するとしよう」

「ええ、そうね」


 少し驚きながらも彼女は周囲の魔族を斬り倒していった。

 俺も彼女に続いて掃討していく。


 それからわずか一〇分足らずで突撃してきた魔族は全滅したのであった。

こんにちは、結坂有です。


やはりエレインとミリシアのコンビで大体の戦いは片付きそうですね。

彼らが正式に聖騎士団として迎え入れられる頃には何が起きるのでしょうか。気になりますね。


ところで、エレインの技の一つ”瞬裂閃”は横方向に理論上避けることができません。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

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