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戦いは繋がっていく

【お知らせ】


タイトル変更いたしました。

詳細は後書きに書いています。

 夜の街は肌寒く、ひんやりとした空気が漂っている。

 俺はレイとリーリアとで進んでいくとやはり妙な気配が強まっていく。

 幸いにもここには住民が住んでいない場所で、普段は交易などの馬車が通るぐらいだ。

 当然、今は夜のため馬車は通っていない上に、通行人も全くいない。


「それにしてもよ。こんなところにいんのか?」

「……気配が強まっているのは確かだ」

「そうですね。魔の気配は私も感じますよ」


 俺の感覚は間違っていないようで魔族と戦い慣れている彼女も気付いているようだ。

 ただ、こんな場所を攻め込んだところで魔族にとって何の利益もないはずだ。


「気配? っんなものしらねぇけどよ。こんなだだっ広い場所にいんのかよ」


 確かにレイの言う通りでこの辺りには建物のようなものはなく、人も住んでいない。

 ただ広い平原が広がっているだけで視界には誰も映っていない。


「この辺りで魔族が隠れられる場所はあるのか?」

「あまり大きな建物はないですけど……。外から来たのであればまだ関所に隠れているのかもしれないですね」


 そう彼女は分析する。

 この辺りには関所があるため、まだそこに隠れているというのは十分にあり得る話だろう。


「その関所は大きいのか?」

「はい。かなり大きい関所です。近くには朝だけ開く市場があったりしますよ」


 彼女が言うように大きい場所ならまだそこに隠れている可能性は高いか。


「だったら話は早ぇ。さっさと行くぞ」


 そう言ってレイは先陣を切って歩いていく。


 それからしばらく歩いていき、関所近くまで進んでいく。

 そこで見たのは今までの静かな雰囲気から大きく変わったものであった。


「これはひでぇな」

「一瞬でやられたみたいですね」


 関所には普通、衛兵がいるものだ。衛兵は議会軍に所属していた人たちが引き続き行っているようで、それなりに経験があり実力もある人が選ばれている。

 しかし、関所の中に入ってみると関所を守っていた衛兵八人が剣を抜かずに死んでしまっていた。


「何が起こったんだよ」


 俺は殺された兵士の一人を調べてみる。

 まだ血は固まっておらず、死後硬直などもまだ始まっていないようだ。


「殺されてから一時間も経っていないな」

「剣を抜くことすらできない速度で殺されたのでしょうか」

「見たところそうだろうな。奥にいる二人は柄を握っていることから目で追えない速度ではないようだ」


 多人数で同時に攻撃を受けた、ということではないようだ。

 それにしても一人でやったとしても無理があるのは確かだ。

 いくら魔族だとはいえ、彼らが反応できないほどの俊足を持っているわけではない。

 これは明らかに聖剣などの能力を使っているはずだ。


「確実に人間の急所を捉えてやがる。ここまで正確なのは俺たち以外で見たことがねぇな」


 レイの言う通り、彼らは首や胸など急所となる部位を的確に斬り裂かれている。

 これほどに正確で高速な剣撃を聖剣なしで行うにはアレクほどの実力が必要になってくる。

 もちろん、魔族に剣術という概念がないのであればこれは明らかに人間の所業であることは確かだろう。


「魔の気配は感じるが、これをやったのは人間だろうな」

「どういうことですか?」

「この攻撃は明らかに戦術的な意図を持った攻撃だ。魔族の気配は感じるものの人間も少なからず関わっていることだろうな」

「俺もそう思うぜ。魔族にこんな緻密な攻撃ができるようには思えないからな」


 すると、心拍の音が聞こえ始めた。


「……エレイン様?」

「ちっ、来やがったな」


 リーリアは気付いていないが、レイは感じ取ったようだ。

 この殺気は尋常なものではない。

 普通の人間が放てるような生易しいものではない。

 とはいえ、音が一定の方向から聞こえているわけではない。心音が右へ左へと瞬間的に移動しているように聞こえる。

 一人なのは間違いないようだが、もしかすると瞬間移動などが使える魔剣か何かだろうか。


「リーリア、俺から離れるな」

「はいっ」


 リーリアが俺に近寄ってくると、剣を引き抜く音が聞こえた。


「エレインっ、上だ!」


 そうレイが忠告すると同時に天井から一瞬で何者かが姿を現した。

 俺は突き立てられたナイフを寸前で避けると、男はまた姿を消した。


「ほぁ!」


 そして、横から姿を現した男はリーリアを狙って攻撃してきた。

 それも俺は彼女を引き寄せることで躱した。


「オラァ!」


 攻撃を外した男にレイの強力な一撃が降りかかるが、それも姿を消すことによって外れる。

 とは言ってもすぐに追撃してくることはなく、一筋縄では倒せないと判断したのだろうな。


「おいっ、逃げんのか?」

「……」


 まだ心音が聞こえるため、このレイの言葉が届いているのは確かだ。

 だが、相手は冷静のようで彼の挑発に軽く乗るようなことはしなかった。


「あの瞬間移動のような能力でやられたようだな」

「ああ、そうだな。にしても魔の気配がするってのはどういうことだ」

「もしかすると、門に細工を仕掛けて……っ!」


 リーリアがそう予想すると、門の方から爆発音が聞こえた。

 部屋の窓から外を見るとそこには五〇体以上の魔族が流れ込んできていた。

 これがもし街の方までたどり着いてしまうと混乱が生じることだろう。


「レイ、下に行ってあいつらを足止めしろ」

「おうよ。全滅させてやるぜっ」


 そう言ってレイは抜き身のまま階段を降りていった。

 すると、リーリアが俺の方を向いてきた。


「エレイン様、私もレイさんの援護に向かえばいいでしょうか」


 彼女は公正騎士としての肩書を持っている。当然、聖騎士団の延長線上にいる彼女は魔族を倒すことができる。

 しかし、あの程度の数ならレイだけでも問題はないだろう。それに俺たちを付けていた人たちも援護に入れば五〇体程度は余裕のはずだ。


「いや、俺と一緒に来てくれ」

「わかりました」


 それから俺たちは屋上に向かった。


 屋上に向かうとやはり先ほど俺たちを襲ってきた男が立っていた。


「門に細工を施したのはあんたか?」

「……」

「まぁ状況証拠からしてあんたなんだろうけどな」


 俺がそう言って一歩前に歩き出すと彼はまた姿を消した。


「悪いが、あんたの動きは把握済みだ」

「っ!」


 姿を表した瞬間、男の胸部にイレイラが突き刺さっていた。

 俺は男の動きを予想して攻撃した。もちろん、彼に悟られないように寸前まで剣を引き抜かずにいた。


「ば、馬鹿なっ」

「姿が完全に見えないのなら別に攻撃手段を使ったがな。あんた程度の実力ならこれで十分だ」


 すると、男はゆっくりと俺の方へと顔を上げて口を開いた。


「なぜ……わかったのだ?」


 彼の先程の攻撃から剣の振り方、戦い方などが見えてくる。さらには心臓の音、息遣い、筋肉の音などで彼の癖が聞こえてくる。

 気配から彼の考えていることが推測できる。

 全身の感覚を駆使すれば、相手がどう攻撃してくるかなど容易く理解できてしまう。


「自分で考えろ」


 しかし、それを口にはしない。なぜならまだ誰かがこの近くにいるからだ。

 まだ姿を現していないが、気配は感じ取れる。

 魔族とはまた違う何者かの気配だ。


「ぐっ、がはぁっ」


 イレイラを体から引き抜くと彼は力尽きていった。


「エレイン様、この男は一体……」

「問題は彼ではない。この霧だ」


 俺は屋上から下を見てみる。

 うっすらと地面が霧で覆われている。そして、門の内側ではレイ、ミリシア、アレクが魔族と戦っている。

 どうやらユウナは来ていないようだ。


「霧がどうしたのですか?」

「以前の霧とは少し違うようだからな。俺が降りたら第二の門を下ろしてくれ」


 俺はそういうと門の外側に降りる体勢をとる。


「エレイン様、それだと帰ってこれないです」


 第二の門は開閉式の門ではなく、完全に遮断するための門だ。


「だが、門を下ろさない限り魔族は断ち切れない」

「私もお供いたしますからっ」


 俺は門を引き止めているロープを指差して、彼女にに命令した。


「それを斬ってくれ。絶対にここに戻ってくると約束する」

「……わ、わかりました」


 そういうとリーリアはロープを斬った。

 それと同時に大きな歯車が回る音がなり、門が下がってくる。

 俺は門の外へと飛び降りて、霧の中を走って行くことにした。

 この先にいるのは明らかに聖騎士団だろう。


   ◆◆◆


 エレインとレイの後を付けていった結果、大量の魔族と戦うことになった。

 ざっと見回して五〇体以上はいるだろう。

 でも、私とアレク、そして魔族を挟んでレイが戦っており、魔族の勢いはすぐに弱まっていった。


「ミリシア、門がしまってるっ」


 そうアレクが言って、奥の門へと視線を向ける。

 確かに門が下がっている。これで魔族が流れ込んでくることはなさそうだ。


「っ! あれって」


 門が下がっているさらに奥へと視線を向けると、エレインのような人影が飛び降りていった。

 間違いない。あのような思い切った行動を取れるのは彼しかいない。

 私は奥にいるレイに向けて言葉を放った。


「レイ! あの門を止めてっ!」

「あ? いくらなんでも無理だぜっ」


 あの巨大な門を人間の彼が止められるはずがない。

 しかし、魔族を使えばなんとかなるのではないだろうか。


「じゃ、こいつらを使って少しでも止めてっ!」

「止めろって……おい!」


 私は彼に有無を言わせず魔族の群れを突っ切った。


「ふざっ、本気かよっ!」

「ええ、私はいつも本気よ」


 そう少し驚いたレイだが、魔族を二体両腕で引っ張り門の下へと放り投げる。


「おらよっ!」

「「ブグィィ!!」


 魔族が潰れそうな声をあげながらも自分を守るために門を支えている。


「レイっ! ありがと」


 私はそう言いながら、門の下を滑り込んで先へと進んでいく。

 そして、レイが後ろから声をかけてくる。


「絶対、帰ってこいよ!」


 その声が聞こえた瞬間、門の下にいた魔族が潰れて門が完全に閉まってしまった。

こんにちは、結坂有です。


タイトル変更ですが、題名が似ている作品が既にあるとのご指摘がありトラブル防止のため変更いたしました。

急な変更で申し訳ございません。

これからも『イレギュラーな俺は剣聖として世界を守る』を楽しみにしていただけると嬉しいです。


まとめに入ります。

霧の中を突っ切って行ったエレインはこの後、聖騎士団と合流することができるのでしょうか。

そして、彼を追いかけて行ったミリシアは無事に追いつくことができるのか、気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

優しい感想などもお待ちしています。

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Twitter→@YuisakaYu

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