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学院生として…

 それから俺たちは夕食を食べることにした。

 アレイシアから魔族について詳しい内容を聞くことにしたが、先ほどミリシアから聞いたこととほとんど同じであった。


「まぁエレインには関係のないことだけどね」

「確かに聖騎士団ではないな。だが、それでも知っておかなければいけないことだ」

「……エレインが危険なことをする必要はないわよ」


 そうアレイシアは言うが、俺とて二度と帝国と同じことを起こしたくない。

 ただ逃げているだけでは解決できないのだからな。


「アレイシア様、危険を避けているだけでは意味がないような気がします」


 ユレイナが食器を片付けながらそう呟くように言った。


「エレインは強いわ。それは認めるけれど、また危険なことをしなくてもいいはずよ」

「ですが、本人の意思も尊重した方がいいと思います」

「……それは、そうだけど」


 アレイシアがここまで消極的になっているのもうなずける。

 彼女が俺に対して好意を抱いていることは知っているからだ。大切な人が危険なところ行かせたくないと思うのは普通のことだろう。


「俺も魔族を倒すために役立ちたいと思っている」

「いくら強いからって不死身じゃないのよ」


 人間である以上、死は避けられない。

 魔剣による治癒があったとしても、致命傷を受ければ即死することだってあるからだ。


「危険なことはしない、それでもだめか?」

「本当に危険なことはしないって約束できるなら」

「ああ」


 俺は深く頷いてみせる。

 すると、アレイシアは小さくため息を吐いて俺の方を向いた。


「私もエレイン様を必ずお守りします」


 リーリアもそうアレイシアに向かって言った。


「わかったわ」


 どうやら許してくれるそうだ。

 まぁこの話をするのも何回目になるだろうか。似たような話を何回もした記憶がある。


「それよりもエレイン様が学院を卒業したときのことを考えているのですか?」


 すると、ユレイナが彼女に話し始めた。

 俺が卒業すれば聖騎士団に入団する予定だ。もちろん危険な任務に就くことだったるだろう。


「……正直あまり考えたくないわ」

「そうですか。ですけど、絶対に考えてください。エレイン様のためにも、アレイシア様自身のためにも」

「ええ、まだ二年あるわけだし、ゆっくり考えるわ」


 そういって彼女は背もたれにもたれかかった。




 翌日、俺とリーリアは学院に向かった。

 ミリシアたちは起きていたが、朝食を食べるだけですぐに地下部屋へと向かった。

 下の部屋で何をしているかは知らないが、自分たちだけで部隊を立ち上げようとしているのは確かだろう。

 それよりも俺が気になっているのは聖騎士団の動向だ。

 千体以上の魔族となれば当然、聖騎士団は本気で立ち向かうことになるのは間違いないだろう。


「エレイン様、聖騎士団のことを考えているのですか?」

「ああ、少し気になるところがあってな」

「聖騎士団は議会軍の実力者を二〇人ほど迎え入れたと言っていました。その分戦力も上がっていると思います」

「確かに戦力は上がっているかもしれないな。とは言っても相手は魔族だ。数で言えば向こうに軍配が上がるはずだ」


 聖騎士団の団員は四百人程度、そこに数十人加わったところで大した戦力の強化にはならない。

 聖剣のおかげで強力な力を持っていたとしても数の暴力には負けてしまうからだ。


「数が増えたとしてもそこまでの強化にはなっていないということですか?」

「そうだな。相手は千体を超えている」

「……団長の”分身”でも難しいですか?」


 分身は所詮、分身でしかない。

 偽物の聖剣で魔族を倒すことはできないのだ。ただ、リスクなしで何百人もの人間を展開できるのは強力だ。

 倒すことはできないが、使い方次第では有効な打撃を与えることができるかもしれない。


「分身だけでは魔族を倒せないから。難しいかもしれないな」

「そう、ですか」

「まぁ悲観する必要もない。ミリシアが何か作戦を考えていることだし、彼女らに任せておいてもいいかもな」

「エレイン様が言うのならそうなのでしょうね」


 そういってリーリアは先ほどまでの不安そうな表情を緩めた。


 そして、商店街に差し掛かったところでセシルが話しかけてきた。


「エレイン、奇遇ね」


 この声も今となっては久しく思う。

 それほどに昨日は長い一日だったからな。


「奇遇、何か運命的なものを感じるな」


 俺がそういうとセシルの表情が次第に赤くなっていく。


「セシルさん、どうかしましたか?」

「……さ、さっきの言葉ってプ、プロポーズ!?」

「何を勘違いしているのでしょうか」

「え? あっ……」


 どうやらセシルは気が付いたようだ。俺が言った運命というのが皮肉を込めたものだと。


「悪いな。からかって」

「もう、妙な言い方しないでよっ」


 ふんっ、と顔を背けた彼女はそのまま歩き始めた。

 それからまだ活動をしていない商店街を抜けて、学院へと向かう。


 学院に入るとみんなは普通に過ごしているようで、席について談笑している人たちが多かった。


「あ、エレイン」


 教室に入るとすぐにリンネが話しかけてきた。


「どうかしたか?」

「決まってるでしょ、あれから何かあったの?」

「特にはな。学院が休みで少し退屈だったぐらいだ」


 正直なところ退屈ではなかったが、あまり深く言及して欲しくはないため嘘をついた。


「そうなんだ。私はアレイとずっと訓練をしてたよ?」

「なるほどな」


 以前の襲撃で自分たちができていないことがより明確になったということだろう。

 どういったところが問題だったのかを反省するためにお互い訓練したと言ったところか。


「エレインが相手してくれたらよかったのになって」

「悪いが、何も誘いがなかったからな」

「誘いがあったら来てくれるの?」

「時間が空いていればな」


 すると、リンネは小さくガッツポーズを取った。

 そんな様子を少し遠目で見ていたミーナがゆっくりと歩いてきた。


「何の話をしているのかしら」

「えっとね。次にエレインと一緒に訓練をしようって話よ」


 リンネがそういうと、ミーナは鋭い目を俺の方に向けてきた。

 しかし、すぐにリンネの方へと向き直った。


「まぁエレインが訓練に参加したとしてもそこまで喜ぶことでもないと思うけれどね」

「え? どうして?」

「この学院にいる以上、敵に塩を送るのは意味ないからね」


 そう、この学院では生徒同士で戦いそれが成績として残る。

 そんな学院だからこそ、敵に塩を送るのはよくないということだろう。


「でも、エレインは特別よ?」

「私も特別だとは思うわ。それでも人間には変わりないの。わかってるでしょ?」

「……そうだけどっ」


 このままでは話に終わりが見えない。

 彼女らの様子を見ているとセシルが口を出してきた。


「ま、あなたたちがどれほど強くなろうとも、私には勝てないわよ」


 セシルがそういうと、二人は彼女を強く睨むのであった。

 確かに怒りを買うような発言だったとは思うが、会話を終わらせてくれたのはありがたい。


「じゃ、授業が始まるわよ」


 そういってセシルは自分の席についた。


「そう、ね」


 ミーナも自分の席に着いた。

 緊迫した雰囲気があったが、俺も授業を受けるために席につくことにした。

こんにちは、結坂有です。


これから学院生としてまたエレインが活動していくようです。

魔族の件もありますが、それはミリシア達に任せるみたいですね。


それでは次回もお楽しみに。



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