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脅威に再び立ち向かうために…

 俺たちは六人で閑散とした商店街を歩いていた。

 目的の場所は俺の家だ。


 ミリシアが言うには地下の部屋はかなり広かったようで、アレクやレイが来たとしても問題はないそうだ。

 あとはアレイシアに許可を取る必要があるが、それは全く問題はないだろう。

 あの帝国の惨状を目の当たりにした彼女だからこそ彼らの待遇は寛容なはずだ。


「それにしても、こうしてみんなで歩くのって地下施設のエレベータに乗った時以来だっけ?」

「ああ、エレインが試練に行くまでだな」


 確かにあの試練に向かう直前のエレベータはみんなで乗り込んだのを覚えている。


「あ、あの、私は含まれていませんよね?」


 ユウナが少し不満そうな表情でミリシアに言った。

 エレベータの時に彼女はいなかったからな。


「あ、そうだった」

「私の扱い、酷くないですか……」

「ごめんね。それじゃ、初めてってことで」

「今さら言われても変わりませんよ……」


 そんなやりとりをしているとリーリアがクスリと笑った。


「どうしたんだ?」

「いいえ、帝国ではこんなやりとりをしていたのかと思っただけです」


 言われてみればこうした会話は彼女の前ではしたことがない。

 こうした平和な会話はこれからもずっと続いて欲しいものだ。そのためにも魔族を滅ぼし、全てを解決する必要がある。


「そういえば魔族の襲撃とか言っていたが、それはどうなったんだ?」

「忘れてた……。エレインにも伝えることだったんだけど、近いうちに魔族の襲撃があるかもしれないの」


 みんなが揃ったことに高揚していたのか、俺に伝えるべきことを忘れてしまっていたらしい。

 近いうちに襲撃があるのはユウナから聞いていた。

 どういった経緯でその情報を手に入れたのかが気になる。


「それはどこからの情報だ?」

「えっと、聖騎士団の人たちだったよ? 家に来てたのを聞いたの」


 アレイシアは聖騎士団から魔族についての情報を受け取っている。

 聖騎士団を脱退したとはいえ、今も様々な面で支援しているからだ。

 それに、フラドレッド家は非常に大きな家系で聖騎士団の中にもその分家に当たる人たちが多くいるというのもあるだろう。


「なるほどな」

「エルラトラム北東部にある谷に潜んでいるんだって」

「数は?」


 先ほどから聞いていたレイがミリシアに質問した。


「千体以上は確認しているそうよ。でも本当にここを攻め落とそうとしているかはわかっていないの」

「ということは時間があるってことだね」

「まぁ悠長にしている場合ではないな」


 千体以上か。あの帝国の悲劇を繰り返すことになるのかもしれない。

 このエルラトラムには約七〇万人もの国民がいる。

 もし、完全に攻め落とされたとしたら帝国以上の地獄となるのは間違いない。


「聖騎士団もそれで少し焦っているって感じだったわ」

「確かに千体以上の魔族は聖騎士団だけでは捌き切れないかもしれない」

「あ? 俺たちがいてもか?」

「一言に魔族と言っても種類が多くいるからな。俺も戦って気付いていたんだが、一〇種類以上の異なる能力を持っている」


 ゴースト型と呼ばれる魔族やゴーレム型、ヒューマン型と大きく分かれている。

 そして、厄介なのが魔剣を持っている魔族がいるかもしれないということだ。

 俺の持っている魔剣は元々魔族が持っていたものだったからな。


「雑魚だけじゃねぇってことか」

「そうだね。僕は魔族とあまり戦ったことはないけれど、話だけは聞いてるよ」

「って、エレインが一番魔族を倒してるからね」


 そうミリシアが言うとアレクとレイは驚いた。


「どういうことかな」

「だって、エレインは帝国を攻めてきた軍団を全滅させたんだから」

「お! やると思ってたぜっ」


 レイはまるで自分のことのように嬉しそうにした。

 ただ、アレクは信じられないといった表情をしていた。確かに現実にあったとは思えないことだろうからな。


「事実、なのかな?」

「ああ、その通りだ。詳細な数はわからないがな」

「……僕も前線で戦ってたんだけど、やはり聖剣がなければ歯が立たなかったからね。エレインは運よく聖剣で戦えたようでよかったよ」


 信じられないといった表情を変えないまま、そう分析した。

 確かに俺も聖剣がなければ千体以上の魔族を倒すことなどできなかっただろう。

 三体を相手にするだけでもかなり神経を使ったからな。


「まぁ千体斬りを果たしたエレインがいるならこの襲撃も問題なく対処できるだろうね」


 ミリシアがそういうが、それだけでは解決できない。

 もちろん、俺一人であればなんとかなるのは事実だ。しかし、俺たちはまだ聖騎士団になっているわけではない。

 聖騎士団がもし、自分たちで挑むとなれば俺たちは何もできないからだ。

 援護はできるかもしれないが、前線で俺たちが活躍することはできないかもしれない。


「……結論付けるのは早過ぎると思うよ」


 俺が忠告する前にアレクが口を開いた。


「どうして?」

「僕たちだけで解決するわけじゃないからね。この国をなんとか守ることができたとしても聖騎士団が壊滅してしまっては意味がない」

「そうですね。その軍団を倒したとしても魔族はいっぱいいます。ここではなるべく被害を抑えなければいけないですね」


 ユウナも理解できたようだ。


「っんなの決まってんだろ。俺が前線に立ってよ」

「確かにレイはエルラトラムの国民ではないからね。そういったことができると思うけれど、僕たちはそうはいかないんだ」

「あ?」

「アレクの言うとおり、私たちはエルラトラム国民なの。この国には聖騎士団か議会軍でしか魔族を倒すことができないのよ」


 そう、この国には特定の人でしか魔族を倒せないということだ。

 特例がない限り、俺たちはただ逃げることしかできない。

 だから、俺は早く学院を卒業する必要があるのだ。


「ふざけた法律だなっ」

「そうだね。でもこの国の信頼を守るためには必要な法律だよ」


 アレクはどうしてこの法律があるのかをしっかりと理解している。さすがはブレインといったところか。


「なんでもいいけどよ。聖騎士団だけで対処するってなら俺たちは何もできねぇってことか?」

「うん。そういうことだね」


 結局のところ、団長がどう判断するかが問題だ。

 それによっては以前のように助っ人的な感じで呼ばれることだってあるかもしれない。


「うまくいかねぇな」

「そう、ですね」


 レイとユウナはそう深く落ち込むが、ミリシアは何か策を考えている様子だ。

 しかし、彼女はこれ以上話すことはなかった。




 それからしばらく歩いて家へと戻る。

 俺たち全員が家に入ると、アレイシアは驚いたがすぐに地下部屋を使う許可が下りた。

 全員が生活できる空間があるのであれば問題はないだろう。

 彼らは狭い空間での生活は慣れているからな。


「まさか、帝国の生存者が四人もいたなんてね」

「ああ、確かにそうだな」


 地下部屋に向かっている彼らを見ながら横に立っているアレイシアがそういった。

 それは俺も同感だ。

 地獄だったにも関わらず、彼らは生存できていた。正直、それには俺も驚いている。


「さすがはエレインの仲間ってことね」


 そういって彼女は踵を返してリビングの方へと向かった。


「エレイン様、少しよろしいでしょうか」


 すると、斜め後方に立っていたリーリアが話しかけてきた。


「なんだ?」

「あのアレクという方は義肢なのでしょうか」

「以前も見たことがあるんだが、そのようだな」

「義肢であのように滑らかな動きができるのですね」


 言われてみれば確かに滑らかだ。

 それに細かい動きもできるようだ。そのおかげで違和感を感じさせない自然な動きを可能にしているのだろう。

 実際、俺もあまり意識していなかったからな。

 あの義肢がどんなものなのかは彼の戦いを見ていれば今後わかってくることだろう。

こんにちは、結坂有です。


帝国の地下施設出身者の人たちが揃ってしまいましたね。

それも魔族を倒せる武器もしっかりと持っています。果たして彼らの実力はどれほどのものなのでしょうか。気になりますね。


ここで少し紹介なのですが、地下施設の訓練プログラムは『祖の発現計画』と言います。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

Twitterではここでは紹介しない情報やたまに呟きも発信していますので、フォローしてくれると助かります。

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