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暴れ馬になる

 マリセル共和国との連絡通路の方へと向かうとそこには魔族の気配が強まっていた。

 流石に近くに来たわけだから、俺でもその気配がわかるようになっていた。

 とは言ってもどれほどの数がいるのかはまだわからない。


「奥で魔族が誰かと戦っているようね」


 フィレスが双眼鏡を持ってそう言っている。

 俺も目を凝らして見てみるが、確かに戦っているように見える。

 銀色の服装でデザインも自警団のものと全く違う。自警団の奴らが戦っているわけではなさそうだ。


「いったい誰が戦っているんだろうな」

「ここからだと魔族が邪魔でよくわからないわ」

「まぁとりあえず、行くとするか」


 魔族だとわかったのなら戦うだけだ。

 俺は剣を引き抜いて魔族の方へと歩いていく。それに合わせるようにしてフィレスも俺に付いてくる。


 連絡通路には一目見ただけで魔族が数十体以上いることがわかる。

 そして奥で戦っているのはどうやら聖騎士団らしい。フィレスは彼らの服装を見てそう教えてくれた。

 聖騎士団ということもあってかなり制圧できているように見える。

 しかし、残りの六十体ほどはまだ倒せずにいた。それも当然で、残りの魔族は非常に巨大な体をしており、さらには力も強そうな奴ばかりであった。

 その強大な力に聖騎士団は押し返されていたのだ。


「あのままでは押し返されてしまうわ」

「ああ、わかってるよっ」


 俺は魔剣を握りしめて六十体もの魔族に突撃する。


「レイ!」


 背後でフィレスが追いかけようと走ってくる。

 別に追いかけて来なくてもいいのだが、一人よりも二人の方が安全だろう。


「オラァ!」


 全身の力を込めた一撃は魔族を砕き斬ったのだ。

 その衝撃で即死した魔族はそのまま蒸気を放ち、すぐに骨だけになった。


「ブルルアァ!」


 魔族がすぐに俺の方へと攻撃を開始し始める。

 それとほぼ同時に聖騎士団の方も俺たちに気付き始め、魔族は完全な挟み撃ち状態となっていた。

 通常なら圧倒的不利である魔族側だが、その圧倒的な力でほとんど互角となっている。


 俺の魔剣は俺自身の能力を引き上げるものだ。

 能力は”超過”というもので、自分の限界以上の力を発揮させることができるそうだ。

 つまりは人間以上の力を簡単に発揮することができるということだ。


「せいっ!」


 俺が剣を斬り上げると同時に魔族も上空へと飛ばされていく。

 斬り上げられた魔族は宙で高速に回転し、血飛沫を周囲に撒き散らしている。


「レイ! 暴れ過ぎよ!」


 俺の背後でそうムッとした表情でフィレスが声をかけてくる。

 確かに魔族の血の雨は俺も望んでいたものではない。


「悪いな。だが、もっと飛ばすぜ!」

「ちょっと!」


 俺はさらにペースを上げて魔剣を振り回していく。

 力の暴走のような感覚を覚えながらも、俺はそれを制御していく。

 限界を超えたとはいえ、あくまで俺の力であることには変わりない。この程度の暴走も止められないのであれば、俺はこの魔剣を持つ資格などないのだからな。


 それにしても魔族はこんなにも弱いものだっただろうか。

 洞窟で戦ったときはもっと強かったように思えるが……それもこれも全てこの魔剣の力なのかもしれない。

 完全に魔族が俺に力負けしているのだ。


「なんて、馬鹿力なんだ」


 俺が暴れているとすぐに聖騎士団の人たちのところへと道ができる。


「てめぇら聖騎士団ならもっと戦えよ!」


 俺一人で戦うよりも集団で戦う方がもっと強力なものになる。

 すると、一人の男が走り込んできた。


「っ!」

「ふっ」


 俺の背後を斬り裂いたその男は一瞬だけ俺の目を見た。


「君、自警団の人かい?」

「ちげぇよ」

「そうなんだね。魔族は目に見えているものだけではないよ。こう言ったゴーストタイプと言った魔族もいるんだ」

「あ?」


 その男の剣を見てみると、小さい魔族が突き刺さっていた。

 俺の背後を追いかけてきた魔族だということだろうか。


「レイ!」

「っんだよ!」

「先に行き過ぎなのよ」

「レイ、と言うんだね。後ろには気を付けるといいよ」


 そう言ってその男は残りの魔族を倒しに前に出たのであった。


「ちっ、んだよあいつ」

「あの人はアドレス隊長、聖騎士団外国支援部隊の人ね」

「あいつが隊長?」

「そうよ」


 確かにあの動きはアレクを連想させるような素早く綺麗な一撃であった。

 油断していたとはいえ、あの攻撃を防ぐのはそれなりに難しいのかもしれないな。

 だが、あの人のことを称賛している場合ではない。

 まだ魔族が全体の半分近く残っているわけだからな。いくら魔剣の能力があるからと慢心していてはいけない。

 さっきのようなゴーストタイプと呼ばれる魔族がいるのなら、不意打ちを食らう可能性だってある。

 俺はアドリスに付いていくことにした。


「どうかしたの?」

「俺だって戦えるんだからよ。あいつの援護に向かうぜ」

「……わかったわ。私たちはこっちの残党を倒していくからね」


 そう言ってフィレスは後ろの聖騎士団の人たちと行動を始める。

 俺は先行したアドリスを追いかける形で魔族に突撃した。

 彼は堅実な戦い方で、魔族の攻撃をうまく躱しながら戦っている。

 対する俺は魔族の武器もろとも破壊する大胆な戦い方だ。

 技術は全くないが、圧倒的な力で押し切る俺とは真逆なのだ。

 どちらかといえば、アレクと似たようなものだろう。


「ふっ」


 アドリスが小さく息を吐くと同時に鋭い剣閃が走る。

 それと同時に魔族の両腕は切断、がらりと開いた胴体を斬り裂くという非常に素早い攻撃で次々と魔族をなぎ倒していく。

 俺はというと彼の左右から突撃してくる魔族に対して叩き斬るようにして剣撃を繰り出していく。

 それだけでも相手の武器を完全に破壊してから倒す。

 その俺の戦い方を見て、アドリスは唖然としているが、まぁ普通の戦い方ではないということは俺でも自覚している。

 ここまで力だけで押し切って戦うのは俺でもやらなかったことだからな。


「君っ!」

「あ? なんだよ!」


 一歩手前にいるアドリスが後ろにいる俺の方へ顔だけ振り向かせてそう聞いてくる。


「さっきから体を酷使しているようだけど、大丈夫なのかい?」

「気にすんな! 前の敵に集中しろよ!」

「その元気があるのなら大丈夫そうだね」


 そう言って彼は前に向き直るとさらにペースを上げて魔族を斬り倒していく。

 どうやら彼の全力ではなかったということらしい。

 まぁこれぐらいの速さならエレインに程遠いがな。

 それから俺とアドリスは魔族を蹴散らしていくのであった。

こんにちは、結坂有です。


力を発揮したレイは暴れ馬のように魔族の列を崩すことができましたね。

ただ単に振り回しているだけで魔族を巻き上げるという馬鹿げた身体能力にさらに魔剣の能力がプラスしてもはや誰もそれを止めることはできないようですね。


それでは次回もお楽しみに。



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