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幕間:二人の意志

 私、ミーナは襲撃の後すぐに寮へと戻っていた。

 フィンは少し離れたお店に用があると言って自主練などはしなかったからだ。とは言っても襲撃があった後だからどちらにしろ訓練はできなかったということだ。

 寮に戻るとある手紙が届いていた。


 私はその手紙を手に取って中身を確認することにした。

 どうやら母親からの手紙のようだ。


『入学してから連絡がないけれど、お体は大丈夫? お父さんのためにも無理はしないでね』


 最初の一文はそのように綴られていた。


 そう、私の父は議会軍で優秀な兵士だったと聞いている。しかし剣術評価で最下位となってしまったことがきっかけで色々と迫害を受けてることとなった。

 父はそのことについては当然の結果だと割り切っていた様子だった。


 そして、遠征の時の話であった。

 父は遠征で最前線で戦うことになったのだ。議会軍は聖騎士団と協力して、脅威となる魔族の基地などを攻撃することがある。そこで父は聖騎士団とともに最前線に立つこととなった。

 聖騎士団は剣術の評価など関係なく、実力を評価する組織だ。そのため父のことを認めていたのだ。

 それが同じ議会軍の人たちの反感を買うことになってしまい、最前線で孤立してしまうこととなってしまった。

 聖騎士団は彼を助けようとしてくれていたようだけど、それでも間に合わず父は戦死してしまうことになってしまった。

 そのことを知らされたのは私が十歳の誕生日の頃だった。


「あれからもう五年、私は強くなれたのかしら……」


 母の手紙を読みながら、ふとそのようなことを考えてしまう。


 今持っている聖剣は父の聖剣ではない。私が幼い頃に本家継承者試練として手に入れたものだ。

 父からまだ教わっていない技などが多くある中、グレイス流剣術正統後継者として私は高度剣術学院に入学してしまった。

 もちろん資格があるから入学したわけなのだが、本当の強さを私は手に入れることができるのだろうか。

 それだけが私の唯一の不安だ。


 確かに学院二位の人に一回でも勝てた。それはエレインの存在が大きいのだけど、それでも自分で勝ち取った実績だ。彼に勝ってから私を見る周囲の目は少し変わったように思える。

 中には最弱の剣術だと思っている人がいるかもしれない。


 ただ、一つ言えることは私は父の名誉を少しでも誇れたことだろう。

 これから私がするべきことは父の意志を継ぎ、さらに進化させていくことだ。

 いつか私も父のように優秀な軍人となり、新たな剣術へと発展させていくと誓っているのだから。


 そのためにも私は強くならなければいけない。学院一位のセシルに勝ち、そして最後にエレインにも勝ってみせる。

 できるかはわからない。けれど、何も目標がないよりかはいいだろう。

 目標に大き過ぎることはないのだから。


   ◆◆◆


 私、セシルはエレインのメイドと店で買い物を済ませて寮に戻っていた。

 買い物かごの中には大量の食料が入っている。数日以内に商店街が再開すればいいのだけど、この調子ではまだまだ時間はかかりそうだと思ったからだ。

 そのため少し離れた店で食材だけでも多く買っておくことにしたのだ。


 部屋に戻るとそこにはぬいぐるみが置いてある。

 ベッドに置かれたそのぬいぐるむは私が幼い頃に父が買ってくれたものだ。どこにでも売っているようなクマのぬいぐるみだが、それでも私は大切にしている。




 八年ほど前の話。

 私が生まれた直後ぐらいに母を亡くしてしまい、当時は父と二人暮らしをしていた。

 父との暮らしは朝に訓練、昼に食事、夕にまた訓練の日々だったことを覚えている。それでも楽しかったのは父が教え上手だったのもあるだろう。


 そしてある日、父が聖騎士団の活動で外国に行くとなった時の夜だ。

 私は駄々を()ねてその活動を反対した。

 訓練を楽しいと感じ始めていた当時の私は父がいなくなることに不満だったからだ。

 拗ねて寝込んでいた私にクマのぬいぐるみを父が買ってきてくれた。

 それが父の代わりになるわけでもないのだが、私は父の活動を許した覚えがあった。


 結局、遠征期間の一ヶ月を過ぎても父は帰ってくることはなかった。


 それからの私は必死に訓練をした。

 腕がもげそうになっても剣を振り続け、間違っているかもしれない型を身に覚えさせた。

 そして、父の知り合いを訪ねて稽古を受けたりした。

 

 そんなことを続けて四年が経った頃、聖騎士団の人が私の家に父の愛剣であり形見でもある二本の聖剣を持ってきてくれた。

 一人、家に住んでいた私にその二本と死んでしまった経緯を私に話し終えた聖騎士団の人たちは私に深く頭を下げて帰っていった。

 ただ、そこに残っていたのは今私が持っている二本の聖剣だけだった。


 最初は聖剣を引き抜くことすらできなかった。毎日その聖剣を引き抜くことだけを考えていた。

 力が足りないのか、意志が足りないのか。何もわからなかった。

 それから一年も集中していると、すっと引き抜くことができた。


 その時の感覚は今でも私の手のひらに残っている。



 私はエレインとパートナーになって一体どれほど強くなれるのだろうか。

 副団長であった父と同じぐらいには……いや、それ以上の実力が欲しい。

 私はもっと力が欲しいのだ。

こんにちは、結坂有です。


少し遅れましたが幕間となります。


ミーナとセシルには共通の意志があるようです。

二人は果たして強くなれるのでしょうか。今後の展開が気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



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