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学院防衛戦〜後半〜

 エレインとリーリアはエントランスの方へと向かって行った。

 私、セシルは他の生徒たちと攻撃してくるであろう集団のために防衛陣を構築していた。他の教室の人たちもどうやら私たちと同じように防衛のために準備を始めていたようだ。

 しかし、私は知っている。エレインが言っていた奇襲の可能性があると言うことだ。

 もちろん、その事は他の生徒たちには知られないようにしなければいけない。

 アレイもリンネもその事はよく理解している。


「案外私たちの役割って重要なのかもね」


 そうリンネは私にそう話しかけてくる。

 確かにその通りなのかもしれない。

 私たちがもし気づかれているかのような動きをすれば、相手は作戦を変えてくるのかもしれない。


「ええ、私たちが妙な動きをすればすぐに敵は作戦を変えてくるでしょうね」

「でも、混乱を最小限にって難しいこと言うわよね?」

「そうかしら」


 彼女は少し難しそうな表情でそのようなことを呟いた。


「そうでしょ? 最小限に抑えるって言ってもわかっててできることじゃないし」

「私たちが先に脅威を対処すればいいだけじゃないかしら」

「……それ、本気で言っている?」

「そうよ」


 私はそう返事すると、リンネは少し呆れたように肩を落とした。


「学院一位の人たちはやっぱり考えが違うよね。実力があるって本当に羨ましいわ」

「とりあえず、私たちはミーナたちの支援をするわ。リンネたちは他の生徒たちを頼めるかしら」

「わかったわ。私はあの人たちのところへ向かうから」


 そう言って彼女たちは階段で奇襲をかけようとしている生徒のところへと向かっていた。

 最後にアレイがこちらに向かって小さく頭を下げて行った。

 リンネと違い、アレイは少し可愛らしさがある。妹気質と言うのだろうか、少し幼さを感じる仕草があるのだ。

 それから私たちは廊下へと向かったミーナたちのところへと向かった。


 廊下にはいくつか休憩スペースが設けられていたりと色々と戦うにはちょうどいい場所でだ。

 とは言っても奇襲をかけるには少し物足りないのは確かだ。


「ミーナ、そっちの方はどうなのかしら」

「セシル……どうしてここに?」

「エレインと別々に行動しているのよ。私たちなら二手に分かれた方が効率がいいかもしれないってことでね」


 私がそう言うとミーナは納得したようにうなずいた。

 周りにいた生徒たちも彼女と同じ反応であった。


「そうなのね。私たちのところはここで相手の進軍を足止めすることよ」

「見たところ隠れられる場所もないわけだし、奇襲は難しいと思うのだけど」

「その点は大丈夫よ。この机の中なら隠れられると思うの」


 そう言ってミーナは机を指差した。

 そこには大きな布で覆われた机が置かれていた。

 普段はこのようなテーブルクロスはない。

 私たち生徒たちからすれば違和感があるのだが、初めてここに来たのなら不思議だとは思わないだろう。


「なるほど、そこに隠れると言うことね」

「ええ、他の机も合わせたら六人ぐらいなら入れるわ」


 机はそれなりに大きく剣を持った生徒が三人は中に入れるだろう。

 ここに隠れてタイミングを見計らえば確かに足止めぐらいはできるかもしれない。


「いい考えね。じゃ準備を始めましょうか」

「おい!」


 机を一人で担いで運んでいたフィンが大声をあげた。

 周囲の生徒はその声に驚いていたが、すぐに事態を把握した。


「あれは……」


 窓の外を指差した生徒たちの視線の先、そこには一つの閃光弾が飛んでいた。

 何かの合図を知らせるのに使うものなのだ。


「校庭から放たれているわ。もう学院内に侵入しているのかしら?」

「ふざけんな。あいつらまだ動いてねぇだろ!」


 すると、教室の中から生徒が飛び出してきた。


「校門を斬り倒してこっちに走ってきた!」


 どうやら集団を監視していた生徒のようで、すぐにこちらへと連絡してきたようだ。

 エレインの言っていたことが本当だったと言うことだ。


「あ? じゃどうすんだよ!」

「……まずい状況ね。とりあえず、校庭にっ」


 パリンっとガラスが割れる音とともに一人の男が廊下に侵入してきた。


「ふざっ!」


 一番近くのフィンが持っていた大机を投げ飛ばした。

 男はそれを高速な剣撃で半分に切断し、その攻撃を防いだ。


「くっ!」


 フィンが聖剣を引き抜いて、戦闘態勢に入った。


「はっ! そんな構えで勝てるとでも?」

「だったら、俺を倒してみろよ!」

「ま、いっか。どうせみんな殺すんだし」


 侵入してきた男は凄まじい殺気を漂わせながら、そう呟いた。

 すると、もう一人女性が侵入してきた。


「ねぇ、ちょっと大胆過ぎるでしょ?」

「別にいいだろ。今だけなんだからよ」


 その途端、周囲の生徒たちは全員聖剣を引き抜いた。

 これが混乱が始まる直前ということだろうか。


「ミーナはフィンの援護をお願いするわ。私は女性の方を狙う」

「わかった」

「他の生徒は手を出さないで、持ち場を離れず冷静にね」


 私はそれだけ周囲の生徒に伝えて、女性の方へと走り出した。

 ミーナも私が言ったようにフィンの援護に回ったようだ。


「なんだ、こいつ」

「グレイス流剣術継承者のミーナよ」

「あぁ、あの落ちぶれ剣士の娘か」

「え?」


 その言葉にミーナはひどく動揺していた。

 どうやらあの男は彼女の父親のことを知っているのだろうか。

 それにしても妙な剣捌きだ。


「うちの相手はあなたかしら」


 その様子を見ていると、目の前の女性が私にそう声をかけてきた。


「ええ、そうよ」


 そう言って私は聖剣を引き抜いた。


「へぇ、双剣使いなのね。やりごたえありそう」


 私は構えて戦闘態勢へと移行した。

 ミーナの方も聖剣を取り出して戦闘を開始しようとしている。


「グレイス流だかなんだかしらねぇが雑魚には変わりないだろ。だったら殺してやるだけだっ」


 そう言って先手を出したのは男の方だ。

 その攻撃をミーナはうまく防ぐと間髪入れずにフィンが素早い動きでその攻撃の隙を狙った攻撃をした。

 しかし、その攻撃は寸前で避けられてしまったようだ。


「連携はできているようだけどよ。なんかものたんねぇな?」

「あ? なんだその言い方はよ!」


 フィンが素早い攻撃で男に斬りかかっているが、その全てを防がれてしまっている。

 やはりあの男は相当な実力者なのだろう。


「戦闘に集中してはどうかしら」

「っ!」


 足音を消して女性が歩み寄ってきていた。

 ほんの一瞬視線を動かしただけなのに一体どうやってここまで歩いてきたというのだろうか。

 私は彼女のナイフをうまく双剣で弾くとすぐに距離を取った。

 あの一瞬の移動は以前エレインと戦ったときに感じた感覚に似ている。


「反応はいいのね。だけど、それだけでは私に勝てないわよ」

「そうかしら」


 はっきり言って私は相当焦っている。

 対策ができていない攻撃を彼女は繰り出してきた。一度負けた技を私はまだ克服できていなかったのだから。


「あらそう。だけど、次は本気よ」


 そう言って走り出す。

 足音はない。

 一体どうやって足音を消しているのだろうか。だが、足元を見るのは視線を下げることと同義、ここは真っ直ぐに視線を構える方がいいだろう。


「ふふっ」


 そう言った不気味な笑みで彼女が笑うと寸前で彼女の姿が消えた。

 一体どこに……上か!


「はっ!」


 重力で勢いをつけた彼女は私に向かってナイフを突き立てていた。


「くっ」


 私は完全に間合いに入り込まれたせいで、ナイフの攻撃を少しだけ受けてしまう。


「うまく避けたのね」

「私のパートナーよりかは遅いからね」


 それにしても手強い相手だ。

 今の攻撃で左肩を斬られてしまったのだ。

 傷はそこまで深くはないが、剣を構えるとずきずきと痛む。

 それに何よりも相手の攻撃は殺意を込めているために一つ一つが重たい。


「へぇ、うちよりも強い相手ね。まぁ私には関係ないけど」

「そう言っていられるかしらっ」


 私は走り出した。

 先に攻撃を受けてしまった以上、持久戦に持ち込まれると厄介なことになってしまう。

 こうなったら速攻で相手を叩くだけ。

 私は左手の剣を上段に構え防御し、そして右手の剣で攻撃を開始した。


「よく見る構えね」

「ふっ!」


 確かに基本的な構えではある。しかし、私のには少し工夫が仕掛けられているのだ。

 これはエレインと訓練していくうちに自分で磨き上げた技術だ。とは言っても彼には通用しなかったけれどそれでも手応えがあった攻撃なのだ。


「そう言った攻撃にはこうやって……なっ!」

「気付くのが遅いわ」


 彼女が私の左側に動こうとした瞬間、私は剣を落とした。

 剣を落としたおかげで剣を通す空間ができたため、その一瞬できた隙間を私は軽いこの剣で斬り開いた。


「がっ!」


 剣は深く相手の腹部へと斬り込んでいた。

 少し手加減をしたおかげで致命傷ではないだろうが、すぐには立ち上がれないはずだ。

 女性はそのまま地面に倒れて膝を突いた。

 ナイフを落としていることからすでに戦闘不能のようだ。

 そして、私はミーナの方を向いた。


「ふざけた剣の持ち方の癖に強力だなっ」

「これが俺の剣術だからよ」


 フィンの剣撃は軽いように見えてかなり重たいものだ。

 それを相手の男は剣を交えていることでよくわかったようだ。

 しかし、依然として全てを防がれているのは変わりない。

 すると、一瞬だけ隙が見えた。


「ミーナ!」


 刹那の判断、フィンは非常に良い目をしている。私の剣先を目で捉えることはできなくとも反応はできていたのだ。


「はっ!」


「くそがっ!」


 男は剣を振り上げようとするが、それをフィンが剣で押さえ込み動きを封じる。


「っ!」


 そして、ミーナの重たい大剣が振り下ろされ男の後頭部へと打ち付けられた。


「ぶぁはっ!」


 そう言って男は(くずお)れた。


 なんとか奇襲を仕掛けてきた人たちを無力化することに成功した。

 私がいなければ、ここは混乱状態に陥っていただろう。あれほどの実力者が二人もいればミーナとフィンだけでは対処できなかったかもしれないからだ。


「セシル! 大丈夫?」


 すると、ミーナが話しかけてきた。


「ええ、これぐらい問題ないわ。この人たちを治療して拘束しましょう」

「そうね」


 それから侵入してきた男性と女性を聖剣の能力で治療し、拘束したのであった。

こんにちは、結坂有です。


なんとか学院内に侵入してきた敵は確保したようですが、まだ集団の方が残っていますのね。

果たしてエレインは彼らを阻止することができるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。



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