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運命の鎖  作者: 桔梗
表裏の桔梗色
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京介・勘違い女

 女子に突然呼び出される時は、大抵、お約束の言葉が待っている。毎回同じでつまらない。千翔がラブレターを破り捨てる気持ちも、分かる気がする。


 それに、彼女たちは⋯⋯


真坂まさかくん、あのね」


「うん」


「あの⋯⋯今日の真坂くん、いつもと雰囲気違うね」


 これもいつも言われることだ。彼女たちは、いったい自分の何を見て好きになったのだろう、と京介はいつも考えてしまう。


「そう?それより、何か用があったんじゃない?」


「うん、あのね、私真坂くんが好きなの。付き合ってくれないかな?」


 目の前の彼女は、赤く頬を染めて上目遣いで見てくる。きっと普通に見たら、可愛いと思ったのだろう。


 告白が嫌なわけではない。自分を好いてくれるのは、京介も嬉しいと思うはずだ。普通なら。


「ごめんね、俺は誰とも付き合う気はないから」


 気持ちは嬉しいよ、なんて、漫画のイケメンが言うようなセリフは絶対に言わない。普通ではないこの場合では、そんなことは微塵も思っていないのだから。


 大抵の女の子は、笑顔がない不機嫌な京介を見て、同情してくれただのと言う。笑顔の時は優しいと言う。京介からしたら、どれも見当違いはなはだしかった。


 そんな表面しか見ていないような女たちと、付き合う気がおきるわけない。京介は、普通の好意など受けたことがなかった。


「分かってたよ、そう言われるの。真坂くんは優しいもんね」


「え?」


 何を言い出すのだろう、と一瞬期待する。


「真坂くんのファンは沢山いるから、みんなを悲しませたくなくて、特定の人を選ばないんだよね。分かってるよ。だからさ、こっそり付き合うのはどう?」


 呆気にとられた。今までにない言葉だった。真っ直ぐに自信に満ちた顔でこちらを見る彼女は、自分が断られるとは、はなから思っていなかったらしい。


 しかし、やっといつもと違う展開がきた。いい、と思う。ここで笑ってしまっては、また誤解されて厄介かもしれないと思い、笑いは抑えようとする。


「ごめんね、俺は誰も好きになれないんだ」


 しかし、やはり笑みは隠しきれなかった。でもきっと、彼女は優しいと捉えるのだろうからいいだろう。


 けれど、彼女はまた予想を裏切ってくれた。青い顔で、泣き出しそうに京介を見る。


「な、なんで笑ってるの?真坂くんは女の子の心(もてあそ)んで楽しいの?」


「ええ?弄んでるつもりはないけど、俺は楽しくない時に笑えるほど器用じゃないよ」


「なっ⋯⋯、最低っ!」


 彼女は顔を真っ赤にし、捨て台詞を吐いて走って行ってしまった。


 いい、いい。いつもと全然違う。これまた見当違いのことを言ってきたが、真坂くんは優しいね、で終わるいつもと全然違う。


「あはは、あははは」


 笑いが止まらなかった。でも、もう人もいないからいいか、と思った。

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