7章 勇者ゼルギウス復活!
――★前回までのあらすじ★――
サンドバシリスクのボスを倒し、村の平和を
護った浄は、再びメーネ村の人々から喝采を浴びる。
その夜、村長の娘"ハル"から、石にされた勇者のいる祠へと案内された。
そこでハルの前世が魔王であると告白を受ける。
既に人として生きる決意をしたハルの言葉を信じ、
浄は石となった勇者の解呪を試みた。はたして…
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ゆ、勇者だ…
まばゆい光の中から現れたのは…
甲冑を身に付けた戦士だった。
顔は兜で見えない。
しかし、分厚く屈強そうな体躯は、戦士の鍛えられた肉体を感じさせた。
「まさに戦士。まさに勇者って感じだな」
俺がそう呟いた瞬間、勇者の甲冑がサラサラと錆びて砂になり崩れ落ちた。
中味は全裸。
甲冑は完全に砂となり、兜と剣もボロボロと崩れ落ちた。
筋骨逞しい体が輝いた。
ブラーン、ブラーン。
おいぃぃぃ。○○○がブラブラしてるぞ。
「キャアァァァ!」
ハルの絶叫。
ブーラブラ…
「ギャアアアアっ!!!」
ハルの絶叫に嫌悪感が上乗せされていく。
とりあえず、ハルは放っておこう…
勇者の顔は逞しい肉体とは違い、長年の闘いを刻み付けたように年老いて見える。
60代ぐらいか?
髪は白髪交じり、髭も白い。
しかし眼は鋭く精悍な顔つきだ。
…ジロリ…
ぁ…眼が合った。
全裸で立ち尽くし、コチラを見ている。
「これで隠して下さいぃぃ!」
ハルは、真っ赤になりながら、勇者にストールを手渡した。
俺の肩を暖めてくれたストールが…今、勇者の股間に…
…もう使えないな。
「ぁあ…ゲフン。これはこれは、レディに大変失礼致しました」
低いが優しげな声。これが勇者の声か。
勇者はストールを腰に巻き付けた。
「見たところ、お二人が魔王の呪いを、解呪いて下さったようですね。心より感謝致します」
勇者というより、紳士といった感じだ。物腰が柔らかい。
マッチョな執事と言われたら納得してしまうかもしれない。裸執事だが…。
勇者は続けた。
「私、ゼルギウスと申します。魔王に不覚を取り、岩となっておりました」
俺も応える。
「はじめまして。勇者ゼルギウス。私は旅人ジョーと申します。縁あって貴方を解呪致したました。以後お見知りおきを…」
「おぉぉ。ジョー様。解呪のご恩、決して忘れません」
続いてハルが口を開いた。
「勇者様。お久しぶりで御座います」
お久しぶりって…
おいおいおい。ハル何を言うつもりだ?
「あなた様を岩にした、魔王の生まれ代わり、ハルと申します。お怒りを鎮める為に、今すぐ私を斬り捨てて下さいませ」
…一瞬の間。
ゼルギウスの眉がピクリと動く。
「あなたの様な人間の女性が、魔王の生まれ変わりですと?信じられませんな。事情が有りそうだ。訳を話して貰えませんか?」
おお?
ゼルギウス、随分と話が分かるじゃないか。
下を向き、完全に黙ってしまったハルの代わりに、俺が事情を説明した。
その時、魔属語で書かれた壁画が、説明の役立った事は言うまでもない。
…
……
ゼル様の登場です。
最初の登場はギャグっぽいですが、凄く紳士なイケメン爺さんなんです。
ハルは魔王時代の魔力の殆どを失っていますが、人間として生まれ変わってから得た魔力は健在です。
なので、この世界の『平均的村人レベル』の魔法は使えます。
対してゼルは、魔力枯渇状態で、魔力充填も出来ないので、ただのオッサンと化してます。
しかし、戦士としての攻撃力は健在していると推測されます。
強いぞ。このオッサン。
ちなみに、現実世界では、病院を退院してバイト先の面接に行った日の夜にこの話を書きました。
今見ると、短い章でビックリでやんス。面接は超緊張してました。