20章 もしかして嫉妬?
ギルドで発行されたユキの奴隷証書は、渡されてすぐに破棄手続きを取った。形式だけとは言え面倒な事だ。
同時にユキの冒険者としての登録と、俺達パーティーの登録を済ませた。
これで、ユキは正式に俺達の仲間になった。
ユキと一緒に捕らえられていたエルフ二人の、奴隷証書破棄も行った。
「ジョー様、ありがとうございました。同族を代表して重ねて感謝致します」
「そんなに気にすんな。俺は奴隷とか持つようなキャラじゃないからな」
「キャラ…ですか?」
ドカン‼
と、突然ギルドの扉が激しく開いた。
「ちょっと、待ったぁーっ‼」
そこに立って居たのは、目元をベネチアンマスクで隠した、スクール水着の少女だった。
思わずズっこける俺。
ギルド内がドヨドヨとどよめく。
最初俺とユキが入った時のような、尊敬や恐れでは無く、突然露出度の高い、体のライン丸分かりのロリっ娘の登場に、ひたすら混乱しているようだ。
一応聞くけど、イリス。この星にスクール水着は無いよな?
『ノ、ノーコメントです』
だよな。でも、その反応で確信したわ。うん。
そして、そのロリっ娘はあろう事か、俺の名前を呼ぶ。
「おいっ‼ジョーとやら、綺麗処《きれいどころ》の女達を侍らせて調子に乗るなよ‼」
「おぃ。ヒルデ。ちょっとコッチ来ぉ‼」
俺はヒルデの首根っこを捕まえて、ギルドの外に出た。
ギルド内は更にざわついた。
「何、今のロリは?」
「あの新人の名前叫んでたな」
「あんなヤバい女とも知り合いなのか?」
「あのチビっ娘も、新人の女だとしたら、懐深すぎるぜ」
先程とは全く違う尊敬と恐れを集めていた事は、俺は気付かなかった。
ギルドを出て、人目の少ない路地にヒルデ連れて行く。その間、ユキは恐る恐る後を付いてきた。
「やめるのだー。何で人目の少ない所に連れて行くのだー。はっ‼もしかしてっ‼」
「もしかして、じゃねぇよ。何で地上に来たんだよ」
「地上ぉ?何の事なのだ?私はこの街の冒険者、ジェッター・リーなのだ。ヒルデなどと言う奴は知らん‼」
「おぃおぃ、その設定で押し通れると思ってねぇだろうな?」
「な、な、何言ってるのだ?設定とか意味不明なのだ」
「取って付けたような口調しやがって、その格好、ギルドの冒険者達がビビりまくってたぞ」
俺は深いため息をついた。
「まぁ、いい。で、用件は何だ?」
「用件…はっ‼そうだ。おい、ジョー。お前、次から次にイケてる女と見ると、優しい言葉掛けまくって、あれか?ハーレムエンド狙いか?あぁん?」
いやいや、ヒルデさん、謎キャラ設定がどんどん崩れてますよー。
「いや、別にハーレム狙いとかしてないし、勘違いしすぎだろ?」
「あのなー。ジョーとやら、お前忘れてないかい?初めて唇を重ねた、それはそれは可憐な少女の事を。その子に対する想いは…そんなモンだったのかなぁ?」
うわぁ。ヒルデさん。それ自分で言っちゃうんだ。ドン引きだわぁ。
とにかく、勘違いを解いて、宇宙にお帰り願おう。
「あのなー。ヒルデ。俺は別に女目当てで戦ったりしてないぞ。ヒーローなら当然の事をしただけだ」
「ヒーロー?」
ヒルデのベネチアンマスクの下の眼が、キラリと光る。
これだ。ヒーロー好きなヒルデをうまく利用しよう。
「そうさ、ヒーローは困った女性を放って置かないだろう?だから助けるのは当然さ。別にハーレムとか興味無いしな」
まぁ、ヒーローじゃなく、人として放って置けないんだけどな。
「う、うむ。た、確かにヒーローならやむを得ないな。なら、初志貫徹でファーストキスの少女を大事にするがよい」
と、ここで黙って後ろに控えていたユキがズイっと前に出てきた。
「ファーストキスの相手…ですか。興味深い話ですね」
な、何ユキまで、話に入って来るんだよ。
「そうじゃ、こやつには衛星軌道上に、可愛らしい彼女が居るんじゃあぁー」
いつからヒルデが彼女になったんだ?
ユキの鼻息がフンスフンスと荒くなる。
「ジョー様に彼女がぁー?」
あれ?ユキさん、さっきまでの誇り高きエルフの姿はドコに行ったの?
「えーぃ。ヒルデっ、話をややこしくすんなー」
ヒルデのベネチアンマスクを取り上げると、ヒルデは慌てて顔を隠した。いや、正体最初から分かってるし。
「不覚っ。私のマスクを奪うとは、やむを得ん。今回は撤退するが、あまり調子に乗って、タンポポみたいに種子を飛ばしまくるなよ。ではサラバじゃっ‼」
なんと下品な捨て台詞。ヒルデ…流石だな。
「何なんですか、あの子供…知り合いなんですか?随分と親しげでしたけど…」
ヒルデの捨て台詞を含め、ユキは引きまくりだ。
「あまり気にすんな。その内に詳しく話すよ」
納得してないユキを連れ、俺達は宿へ戻った。
…
……
同時刻。
衛星起動上に帰還したヒルデは、真っ赤な顔をして、はぁはぁと息を切らしていた。
「な、何でだ?ジョーの顔を見ただけで、こんなにドキドキするなんて、何か病気になったのか?」
ヒルデの初恋は、ここに始まった。




