1章 未知との遭遇?
――★前回までのあらすじ★――
外宇宙からの飛来物が地球に迫る。
迎え撃つジョー達。
数年前まで時間は巻き戻り、宇宙から一転"地球上"へ。
物語はスタートする。
―――――――――――――――
平日の早朝。オレンジの朝焼けに、澄み切った空気。
ジョギングで健康的な汗を流す人。
さわやかで、平穏な日常が始まっていた。
俺以外は…
さーて。旅に出るとするか。
俺は安アパートを解約し、僅かな荷物を持ち、トレーナーにジャンパー、Gパン姿のラフな格好で、原付バイクに跨がった。
俺の名前は橋越 浄。27歳。無職。
いやいや、無職と言ってもちょっと事情があるのだよ。
正確には、先週会社が倒産して、無職にジョブチェンジしたばかりだ。
本当に、人生何があるか分からないな。
つまらない日常ではあったが、少なくとも安定した生活を送れていたのに…無念だ。
思えば、昔から突然の災厄に振り回されていた。
高校生の時に、両親を事故で失った。平和な日常は突然消え、金策でバイトにあけくれる日々。
雀の涙程度の保険金が手に入ったが、それも日常生活で消えていった。
バイトで生活を賄い、なんとか高校卒業し、進学は諦めた。
高卒になった俺は、地元の小さな会社の営業職についた。
それからコツコツと働き続け、現在に至るのだが…
今度はまさか、会社が倒産するなんて…
当面の生活費は失業手当で賄うとして、何をしよう。
これからの事は、不安で一杯だが、まずは気持ちを切り替えなくては。
突然襲ってくる、不幸な運勢を断ち切らないと…きっと又、唐突な災難に見舞われてしまう。そんな気がした。
人生を変える…というか、生き方を変える…か…。
そうすれば、これからの人生が良くなるのかもしれない。
うん。新しい自分を見つけよう。ものすごいベタだが自分探しというやつだ。
そこで俺は、原付バイクで旅をしようと決めた。
どうせ、時間はたっぷりあるんだ。これをキッカケにして…そう。産まれ変わるんだ。
まずは無計画に旅をしてみよう。その方が絶対に面白い。色々なアクシデントもあるだろうし、沢山の経験をしてみよう。今まで見えてなかった物が見えるようになるかもしれない。
この時、旅の決断をした事が、俺の運命を劇的に変えたのだが、それはもう少し後の話になる。
…
……
旅行に行くと決めてからは、一気に行動を開始する。ヤル気が萎える前に旅立たねば。
そんな訳で俺は、黒い愛馬(50cc)に跨がり、旅を始めた。勿論、目的地など無い。一人旅だから、誰に迷惑を掛ける訳じゃない。
行き当たりバッタリでいい。楽しめば良いのだ。
俺は、バイクを走らせ北へ向かう。
心地よいバイクの振動を受け止め、タンク内のガソリンを揺らした。
ビュオオォォー。
半ヘルの風切音が気持ちいい。
都会の街並みが、段々と民家や大型店が中心の、都心近郊の景色に変わる。
…
……
だいぶ走ったかな。有料道路を使わないので、のんびりした旅だ。
周りに木々や森も見え始め、都会の喧騒から離れた事を実感する。
…と。そろそろ燃料を気にしないと。
ふむ。そろそろ給油しないとマズそうだ。
少し走ると、ガソリンスタンドはすぐに見つかった。
山道で燃料切れは敵わないからなぁ。
年季の入ったガソリンスタンドだ。看板も古い。味のある看板を眺めつつ、給油を開始する。
ガシャン。ゴポポ。
原付のタンクはすぐに満タンだ。
グゥゥ…
腹の虫が鳴いた。そう言えば、出発してから何も食ってない。俺も何かしら食わないとな。
リュックから携帯栄養食を取り出し食べる。チーズ味の大豆バーだ。結構ウマい。
夕食まではコレで我慢っと。
ミネラルウォーターで流し込み、さっさと食事を済ませた。
スタンドのトイレで用を足すと、近隣の観光案内のポスターに気が付く。茶色く色褪せた、時代を感じさせるポスターだ。
なになに…UFOの見える丘だとー。
近くに宣伝用のマップがあった。ふむ。裏面は観光案内になってるのか。面白そうなパンフレットを見つけたぞ。
どうやら、この先にUFOの目撃情報が多い場所があるらしい。観光にUFOを取り入れるとは、なんと大胆な。
よく見るとパンフの写真が古い。作り物のUFOの前で、ランニングシャツに半ズボンの少年がダブルピースしている。うーん。時代を感じるぜ。
写真の横には『君もミステリーサークルを見つけるかも?』とか書かれてる。何年前から始まってる観光企画なんだろう?
えーっと。近くに牧場があるのか。おっ、ログハウス風のコテージで宿泊も出来るだとぉ?
丁度良かった。もう昼過ぎだし、ここに泊まる事にしよう。
そして、翌日には近くのUFO公園とやらに行ってみよう。オラわくわくすっぞ。
寂れた観光イベント…かなり面白そうだ。
突発的な目的地決定。これだよ。これ。気ままな一人旅の醍醐味ってやつだな。
…
……
幸い牧場はバイクで20分程の場所にあった。
結構広い…こんな所に大規模な牧場があるなんて驚きだな。
全然知らなかった。さて…と。さっさと宿泊の予約をしなければ。
コテージ受付と書かれた、事務所兼フロントといった感じのログハウスに入る。
カランカラン…
カウベルのような呼び鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ」
カウンターには初老の男性が受付をしていた。
「すみません。本日コテージに泊まりたいのですが」
「はい。お泊りですね。ご予約はございますか?」
そうか…予約してないや。さっきスタンドから電話すべきだったな。
「いえ、さっきガソリンスタンドでパンフレットを拝見しまして。急ですみません」
男性はニッコリ微笑んだ。
「いえ、いいんですよ。今日は平日ですから、コテージは空いてます。何名様ですか?」
「一人です」
俺がそう答えると、男性は再び微笑んだ。
「いいですねぇ。バイクで一人旅ですか。私も若い頃は、さんざん旅を楽しみましたよ」
そんな話をしながら、男性は手早く宿泊手続きを済ます。
男性の優しそうな人懐っこい笑顔を見て、俺の営業時代の腐った笑顔と大違いな事に気付く。
俺、こんな嬉しそうな笑顔で人と接する事があったかな?
自然に浮かぶ柔らかな笑顔は…その人の生きてきた人生を表すものなのかもしれない。
俺も、こんな笑顔になりたいな。
「えーっと、お風呂はそこのドア開けた所にあります」
簡単に施設の説明を受けた後、受付に近い小さなコテージに案内された。
「後で夕食をお持ちしますね。あと、明日は朝、搾乳体験が出来ますが如何いたしますか?」
搾乳?牛の乳絞りか。体験した事ないな。チャレンジしてみるか。
「はい。ぜひ、お願いします」
「それじゃ、予約入れておきますね」
これは楽しみだ。手でモミモミとシュミレーションしてみた。うぅ。なんか卑猥な動きだ。
「あ、この近くにUFO公園とかいう観光スポットが有るって、パンフで見たんだけど」
「はい。御座います。昔のUFOブームで作られた公園で、昔を懐かしむ人達が良く来るそうです。お客様、UFOに興味がおありですか?」
「いえ、たまたまそんな公園が有ると知ったので、カメラで撮ってこようかなって思いまして」
「そうですか。あの公園の近くで、実際にUFOを見た人が結構居るんですよ。撮れるといいですね」
と、男性は何かを思い出したように喋り出した。
「あ、そうそう。ウチの牧場でも、目撃情報があるんです」
「目撃ってUFOの?」
「えぇ。UFOです。…そうだ。お客様、今の時間は牧場の夕焼けが綺麗ですよ。夕飯まで散歩でも如何でしょう?もしかしたら、UFOを目撃出来るかもしれませんね」
「それじゃ、行ってこようかな」
「幸運を祈ってますよ。夕飯近くなりましたら、放送でお呼びしますので、あまり遠くに行かないで下さいね」
「はい」
俺はスマホとカメラを持って、牧場内へ向かった。
…
……
かなり広い草原だ。PCの壁紙に出来そうだな。
「うわぁぁ。綺麗だなぁ」
夕日の中、牛が牧草を食んでいる。
「まだ牛舎に戻ってないんだな」
ヒュゥゥ…
風が通り抜けた。
「わぁ」
思わず声を漏らす。
夕焼けと草原と牛。全てがオレンジに染まっている。
綺麗だ。神々しさを感じる。
そういえば牛を神聖視する宗教もあるもんな。
俺は、カメラを構えシャッターを切る。
何か信じられないな。少し前まで、底辺サラリーマンだったのに、今は夕焼けの中、牧場でシャッターを切ってる。人生、何が起こるか判らないモンだなぁ。
…
ふと、受付の男性の笑顔が頭に浮かぶ。
俺も好きな事で働けば、あんな笑顔になれるのかな。
そんな勇気、俺にあるのかなぁ。
「なんか、疲れてるな。俺」
精神的に磨り減るような毎日を送ってきた。
気付けば30台手前。高校卒業と同時にがむしゃらに働いた。人付き合いは苦手で、友人と呼べる人も居ない。親も親戚も兄弟も居ない。それでも、薄給ながら仕事だけは有った。しかし、今は、その仕事すら無い。
今から資格を取ったり、就職を探す気力も、正直無かった。
「随分、無理してたからな」
愚痴が口から零れた瞬間…
カメラのファインダーが、突如暗くなる。
カラン♪コロン♪
ん?牛鈴?
目の前に牛が近づいていた。
「わ。ビックリしたなぁ」
群れから離れた牛が、何故か自分とダブって見える。
「なんだ、お前。一人ぼっちか?」
俺は目の前の牛にカメラを向けた。
「偶然だな。俺も一人ぼっちさ」
カシャリとシャッターを切る。
ん?んんん?
違和感。
牛の頭の、遥か後方の空に、何か浮かんでる?
あれってまさか?
咄嗟に、カメラを動画モードに切り替えた。
銀色で…皿型の物体。えぇー?
ぷっ!
あまりにも、円盤らしい形に思わず吹き出してしまう。
「もう少し、リアルな形の円盤なら、信じられるけど、あれじゃ、子供が描く円盤そのものじゃねーか。センス古い円盤だな…ってか本物だよな、アレ」
どう見ても回転しながら飛んでるようにしか見えない。ドローンでもなさそうだ。
しかし、スゲーな。本当にUFOを目撃出来るとは。
ゆっくりと円盤は飛行し、コチラに近づいて来る。
あれ?
え?ええぇっ?
ヤバい。思ったより大きいぞ。直径は25メートルはありそうだ。でかっ!
動揺してる内に円盤は頭上で停止していた。
ゴウンゴウン…
何かしらの大型機械が動く音。マジでデカいなぁ。
俺はシャッターを切るのも忘れ呆けていた。
ウィーン。
円盤の下部が丸く開く。
え。コレって。
フォォォォーン!
そして浮遊感。
「嘘だろ。おぃぃぃー!うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
俺は空中に浮かび、牛と一緒に円盤へ吸い込まれ…
ブツンっと意識が途切れた。
…
……
ゲーム制作チームMBFFILMsの栄華です。
まずは、本作を気にかけて下さり、目を通していただいた事に心からの感謝を致します。
感想・評価を頂けたらモチベーション上がりまくるので是非よろしくお願い致します。
私事なのですが…
目の病気に罹り、かなり大きな手術をしました。10日程の入院です。
眼痛いわ、寝れないわでベッドで苦しんでいたのですが、その間に浮かんだ、ダークヒーローファンタジーを、片目スマホでポチポチと書き溜めてみました。それが意外に面白くて是非公開してみようかなと思い立った次第です。
異世界チート物を匂わせておりますが、実際はかなり大風呂敷の別ジャンルへと進化していきます。
もちろん、物語は前半も後半も面白く作っていきますので、ご安心下さい。
ちなみに、入院中に勤めていた会社が倒産して、大パニックになりました。主人公が同じ境遇なのも、この経験からです。
現在は、眼も少しずつ回復しつつ、バイトで仕事しながら執筆活動再開出来ました。
しかし、いつまでもバイトする訳にもいきませんので、どなたか拾ってやってくだちゃい。いやマジで。
お仕事のお話を頂けたら下僕になって書きまくりますよぉー。